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希望と絶望が混ざり合った選挙結果

2014年12月17日 08時18分26秒 | 貧乏人搾取の上に胡坐をかくな


 今度の選挙。「自民党の圧勝」と言われているが本当にそうか?
 実際の議席数を、上記参考資料の表の赤枠で示した部分に沿って見て行きましょう。以下、公示前→選挙後の議席数とその増減です。

 自民党 295→291で▲4
 公明党 31→35で+4 
 これで与党は±0。何の事はない。単に現状を維持しただけではないですか。「自公で衆院の3分の2(317議席)以上制した」と言うのも、公示前から既にその状態にあった訳で、別に目新しい事でも何でもない。逆に自民党は議席を減らしている。公明党の増加分でどうにか収支トントンに収まっただけです。これでは単なる「横ばい」であって「圧勝」とまでは言えないのでは。

 対する野党はどうか?
 民主党  63→73で+10
 維新の党 42→41で▲1
 共産党   8→21で+13
 次世代の党19→2で▲17
 生活の党  5→2で▲ 3
 社民党   2→2で± 0
 無所属  17→8で▲ 9

 民主党は党首の海江田が落選してボロ負けしたように言われていますが、議席数ではむしろ巻き返しています。
 維新の党は、マスコミで「議席半減」と書かれた割には結構持ちこたえました。公示前からわずか1しか減らしていない。これは「予想外の健闘、善戦」と言って良いでしょう。
 共産党は8から21と13も増やしている。沖縄1区では選挙区でも自民党候補に競り勝ちました。これはマスコミの言う通り「躍進」です。

 後はもうボロボロですね。
 次世代の党は、平沼赳夫(ひらぬま・たけお)や石原慎太郎が中心になって作った党ですが、元々、自民党の中でもより右翼的な立場にいた人たちが、一旦「維新の党」に合流した後また分かれて出来た党です。その間に党名も何度か変わったりしています。それが今回17議席も減少。はっきり言って「惨敗」です。
 生活の党以下については、もう元から数が少ないのでここではコメントを省略します。

 実際はこれらの党以外にも、公示前に解党してしまったのでここには出て来ませんが、「みんなの党」というのがありました。渡辺喜美(わたなべ・よしみ)が最初の代表を務め、後に浅尾慶一郎に代わりました。前回の衆院選では18議席取っています。しかし、その後は他の党と引っ付いたり離れたりした末に、今回の選挙を待たずに解散してしまいました。その他にも、「太陽の党」「結いの党」「新党きづな」など、色んな新党があぶくの様に生まれてはまた直ぐ消えて行きましたね。

 「維新の党」「次世代の党」「みんなの党」などは、自民党でも民主党でもない「第三極」の政党として、「民主党には愛想が尽きたが、でも昔の自民党の政治も嫌だ」という人の受け皿として、一時マスコミから散々持ち上げられました。
 でも結局はどの党も、元をたどれば自民党から分かれた人たちが中心になって作った党で、基本的な主張も自民党と全く同じ。寧ろ自民党より更に右翼的で過激だったりする。自民党を批判する場合でも、「憲法改正もっと早くやれ」「消費税10%先送りなんかするな」「公務員もっと減らせ」「福祉ももっと減らせ」という「批判」しかしない。そんな「野党」がいくら伸びた所で、自民党にとっては痛くもかゆくもない。
 今回の選挙は、そんな「自民党にとっては痛くもかゆくもない」「隠れ自民」みたいな野党が激減して、代わりに共産党の様な「野党らしい野党」が伸びました。おまけに沖縄では自民党が全員落選。

 これでは決して「自民党圧勝」とは言えないでしょう。
 実際、自民党は得票率で見ても比例区で約33%、選挙区でも約48%しか取れていません(前述の表の青枠で示した部分参照)。しかも、投票率自体が約52%と戦後最低でしたから、有権者全体で見るともっと比率は下がります。比例区ではわずか17%、選挙区でも24%。最大でも4人に1人しか自民党を支持していないのです。
 では、そんな「4人に1人からしか支持されていない」党がなぜ「衆議院で291も議席を取れる」のか。それは選挙制度が元々不公平だからです。衆議院定数475議席のうち、その62%の295もの議席が小選挙区(選挙区)で選ばれます。小選挙区では基本的に1選挙区に1人しか当選できませんから、同じ選挙区に4人や5人も候補者が乱立したら、わずか2割や3割の得票でも当選できてしまいます。これでは、組織に支えられ知名度も資金もある大政党の候補者や世襲候補がどうしても有利となる。たとえ候補者が少々ボンクラであっても。だから、小渕優子や松島みどりみたいな問題のある候補者でも大した苦労もせずに次々当選できるし、政党の得票率では48%しかなくても75%もの議席を得る事が出来るのです。投票率が年々低下しているのも、それに嫌気が差してみんな投票に行かなくなるからです。

 そういう、元々、政権与党に圧倒的に有利に作られた選挙制度の中で、「自民党だけで衆議院の3分の2以上を制する」と言われていたのが、蓋を開ければ、自民党はわずかではあるが逆に議席減。野党も自民党と似たり寄ったりの野党が大幅に議席を減らし、逆に反自民色の鮮明な野党が躍進。「まだ前の選挙から2年しか経っていないのに、この忙しい年末になぜ解散するのか?」という疑問の声を押し切って、党利党略で「勝てる」と踏んで解散したら、逆にこのような結果になってしまったのですから。決して悲観すべき内容ではないと思いますけどね。

 もちろん楽観は禁物です。自民党単独では衆議院の3分の2は取れなかったものの、公明党と併せれば326議席と、3分の2の317議席を今でも優に超えています。おまけに、自民党より更に右寄りの「維新の党」が、議席半減の予想を裏切り、しぶとく生き残りました。だから、安倍はアベノミクスの宣伝で「給料上がる」と有権者を煙に巻きながら、裏ではかつてない強引さで、秘密保護法や集団的自衛権、原発再稼働をゴリ押しし、「公正中立な報道をしろ」とマスコミを露骨に恫喝(どうかつ)したり、もうやりたい放題できるのです。「公正中立」と言うのも単なる建前で、実際は街頭インタビューの仕方にまで政権与党がいちいち注文付けて来るのですから、日本も、もはや民主化運動が弾圧された中国の香港ともそう変わらないのではないでしょうか。

 そして油断も禁物です。このまま「自・共対決」に共産党が勝利できるほど、日本の政治は甘くはありません。共産党は、今の選挙制度に変わってからも、1996年に一度26議席まで躍進した事がありました。でも、その後は、小泉郵政解散や、自民党から民主党への政権交代劇に、すっかりお株を奪われ、長期低迷を余儀なくされました。
 1996年(橋本内閣)26→2000年(森内閣)20→2003年(第1次小泉内閣)9→2005年(郵政解散)9→2009年(民主党政権に交代)9→2012年(自民党が政権復帰)8議席、という具合に。
 この様に、共産党はこの18年間、民主党などのどっちつかずの政党や、「第三極」などの自民党補完勢力の陰に隠れ、今まで冷や飯食わされてきた訳ですが、また同じ事が繰り返されるとも限りません。何度自民党に痛めつけられても、また自民党に政権をゆだねるような国民がまだまだ多いのですから。

 しかし、国民もずっとやられっ放しではありません。沖縄では自民党が野党統一候補に全敗した事は既に書きましたが、同じような動きは実は本土でも広がっているのです。まず大阪がそうじゃないですか。最初は自民・公明推薦で大阪府知事に就任した橋下徹が、大阪市長に鞍替えして余りにも好き勝手な事ばかりやる為に、今では自民・公明も含め、すっかり橋下に愛想を尽かしてしまいました。橋下が鳴り物入りで宣伝していた大阪都構想も、区役所が遠くなり住民サービスも削減される事が次第に明らかになり、今や維新以外の全政党が反対に回るようになってしまいました。
 たとえ自民党と言えども、地元の市議や府議は、次の選挙の事を考えれば、地域住民を完全に敵に回す事は出来ません。東京で戦争ごっこにふけっていられる安倍首相や、大企業からいくらでも政治献金がもらえる国会議員とは、そこが決定的に違います。このままいけば、次の大阪市長選挙・府知事選挙でも、大阪でも沖縄の様な反維新の統一候補を擁立する事が出来るかも知れません。



 既にその兆しはこの選挙でも見られました。例えばこの大阪3区では、与党候補の佐藤茂樹(公明党を自民党が応援)8万4千票余に対して、共産党候補の渡部結(わたなべ・ゆい)が6万3千票余にまで詰め寄りました(得票率約42%、Wikipedia資料・左上のポスター写真参照)。今度の選挙では、他にも大阪5区や兵庫8区など、そんな選挙区が大都市部を中心にいくつか生まれました。私が前回記事の中で注目選挙区として上げた福岡8区も、元生協職員の共産党女性候補が、自民党副総理の麻生太郎にダブルスコアで負けたとはいえ、ここでも5万票余も取っています。
 他の野党が候補者擁立を見送る中で、自(公)・共対決となった選挙区では、共産票だけでなく無効票もかなり出たそうですが、その無効票も、「共産党には入れなかったが自民党にも入れなかった」という意味では、「少なくともアベノミクスの嘘には騙されなかった」とも言える訳で、共産党の働きかけ如何(いかん)によっては、充分支持票になり得るのではないでしょうか。但し、前述したように一過性のブームで終わらせてはなりませんが。いずれにしても、小選挙区でも決して勝てない数字ではないと思います。

 安倍の悪政はアベノミクスや消費税だけではありません。秘密保護法や集団的自衛権、原発再稼働だけでもありません。もちろん、それらも重大な問題ですが、他にも国民生活に密着した分野で、様々な悪法が通されようとしています。衆院解散で一旦廃案になった派遣法の改悪や残業代ゼロ法案などもその一つです。
 派遣法改悪と言うのは、今までは派遣も3年経てば正社員への道が開かれていたのが、改悪後は派遣社員は3年で雇止め、企業だけが人を入れ替えればいつまでも派遣で使い回しできるようにするという内容です。これでは、潤うのは企業だけで、労働者は正に踏んだり蹴ったりです(右上の説明図参照)。
 残業代ゼロ法案も、実際は今でもサービス残業が蔓延したりしていますが、一応建前上は労働時間に比例して支払われていた残業代が、今後は企業が「成果を出した」と認めた分にしか支払われなくなるという内容です。いくら働いても成果が認められなければタダ働きとなります。成果を認定するのはあくまで企業側です。今はまだ年収1千万以上の労働者が対象ですが、それ以外の労働者もやがて対象とされるようになるでしょう。

 それでも「選挙で投票しても変わらない」と言う人は、自分が強盗に襲われ殺されそうになっても「抵抗しても無駄だから」と言って、黙って殺されるのでしょうか?変わらないかどうか、無駄かどうかは、やってみないと分かりません。でも、抵抗しないと確実に殺される事だけはハッキリしています。それでもまだ「投票しても無駄」と言い張るのでしょうか?
 そういう意味では、今回の衆院選は、今度は単独でも議席の3分の2以上を占めると言われていた自民党の議席を現状維持に押しとどめ、逆に反自民色の強い野党の議席を増やす事が出来ました。党利党略で解散を強行した安倍の思惑通りには必ずしも行きませんでした。安倍の悪政に少しは歯止めをかける事が出来た。少なくとも、憲法改悪を阻止する為の、一定の時間稼ぎが出来たと言えるのではないでしょうか。希望と絶望が混ざり合った選挙結果に終わったと言えると思います。まだまだ希望を捨てる訳にはいきません。

(追記)
コメント (3)
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