またブログ更新が滞ってしまいました。ここでその言い訳を少しさせてもらうと、最近の安倍政権の無茶ぶりにブログ更新の気力が萎えてしまっていたのもありますが、それ以上に、更新ネタの調べ物に思いの他時間がかかってしまった事もあったからです。
今回の更新は、先週の「しんぶん赤旗日曜版」に載った志位・共産党委員長の訪韓記事がきっかけでした。志位委員長も日韓議連の一員として訪韓し、あちらの韓日議連との合同総会や高麗大学で、「過去に日本が行った侵略戦争や慰安婦連行の過ちを真摯に認め、二度と同じ過ちを繰り返さないようにしなければならない」「安倍政権による河野・村山談話の見直しには断固反対する」と講演し、議連総会の共同声明もその線に沿った形でまとめる事が出来たというのが、くだんの赤旗記事の要旨です。
この共同声明の内容については私も特に異論はありません。むしろ遅きに失したぐらいだと思っています。しかし、超党派の日韓議連には、共産党だけでなく安倍政権与党の自民党からも少なくない議員が加わっています。それらの議員がすんなりと、この共同声明に賛同したとはとても思えません。
そもそも、昔の韓国は朴正煕(パクチョンヒ)の反共軍事独裁政権でした。それを支持する日韓議連も、昔はどちらかというと統一協会系の右翼の溜まり場だったような気がします。今の自民党や民主党の議員の中には、むしろその右翼的な流れを受け継いで日韓議連に加わっている者も大勢いるはずです。実は、その議員たちの本音を探ろうと、今まで河村建夫や額賀福志郎などの自民党大物議員のHPをずっと調べていました。
でも、私が調べた限りでは、これらの自民党大物議員は、今回の共同声明については自分のHPで取り上げる事すらしていませんでした。
その代わりに、「次世代の党」の山田宏が日韓議連の共同声明を盛んに攻撃していました。ツイッターやフェイスブックで、共同声明に賛同した議員を「売国奴」呼ばわりしています。「次世代の党」の前身は「立ち上がれ日本」で、元をたどれば自民党のタカ派です。そのタカ派の右翼議員が、自民党より更に右の立場から、自民党が表立っては言えない本音を、自民党に成り代わって代弁している形です。
しかし、その「次世代の党」の山田も、河村や額賀は批判しても、安倍晋三や麻生太郎には何も言えないでいます。日韓議連には安倍晋三や麻生太郎も加盟しているにも関わらず。
私はそれを見て次のように感じました。―何だ、彼らは所詮は「井の中の蛙」か。いくら「かつての戦争は侵略戦争なんかじゃない、正義の戦いだった」「慰安婦の強制連行なぞもなかった、彼女らはただの売春婦に過ぎなかった」と日本国内で言っていても、外国に出たら何も言えないのか。これではただの二枚舌の卑劣漢じゃないか。正に志位委員長の言う通り、「河野談話の否定派は、自らの狭い世界でしか通用しない話をしているだけだ。彼らに未来はない」(くだんの赤旗日曜版記事より)と。
ところが、実際の現実はそれ以上に複雑怪奇でした。
例えば現総理の安倍晋三ですが、靖国参拝や北朝鮮・中国への強硬姿勢で右翼タカ派の象徴のように思われている表の顔とは裏腹に、地元の山口県下関市では朝鮮総連や韓国民団などの在日団体とも太い繋がりを持ち、在日のパチンコ業者から長年に渡って多額の政治献金まで受け取っていたのです。下記記事によると、下関から北九州一帯にかけて手広くパチンコ事業を展開している東洋エンタープライズという企業が、長年に渡って安倍一族を応援して来たのだそうです。東洋エンタープライズの親会社・七洋物産の吉本章治社長(故人)は元在日韓国人一世で、父の晋太郎の代から安倍一族とは昵懇(じっこん)の間柄でした。地元では安倍晋三の自宅は「パチンコ御殿」と呼ばれています。JR下関駅前の一等地にある安倍の選挙事務所も、東洋エンタープライズから安く借り受けて入手した物でした・・・。
小渕優子よりひどい!? 安倍首相が世襲したパチンコ御殿と暴力団人脈
http://lite-ra.com/2014/10/post-594.html
よくネトウヨ(ネット右翼)などが、在日やを一律に「反日左翼」とレッテル張りし、それと闘う安倍や麻生を救国の英雄みたいに称賛する投稿をネットに書き込んだりしていますが、実際はそんな単純な物ではありません。政治的には左右に対立しているはずの両者が、下の方では仲良く共存し、持ちつ持たれつの関係を保持して、共に地方行政を牛耳ってきたというのも、現実にはよくある話です。
それは何も珍しい話でも何でもありません。例えば、日韓議連の一員として今回の訪韓にも参加した「維新の会」衆院議員の谷畑孝も、元は解同(解放同盟)大阪府連の副委員長で、土井ブームの時に社会党から参院議員に初当選しました。その後、社会党から自民党に鞍替えすると共に、公約もそれまでの左寄りから右寄りの内容に大幅に変更し、今や「維新の会」の一員として、憲法改正や集団的自衛権の行使にも賛成するまでになっています。正に「政界渡り鳥」の見本のような人物です。
このように、一口に「在日」や「」と言っても、全てが「反日左翼」ではありません。左翼もいれば右翼もいます。在日やに対する差別に怒って左に行く人間もおれば、差別から逃れるために逆に権力にすり寄る人間もいるという、言ってみれば至極当たり前の話です。最も多いのはやはり、そのどちらでもない一般市民でしょう。
大阪市長の橋下徹なども、どちらかといえば「権力にすり寄る」タイプでしょう。彼が、地区出身でありながら、その逆境をバネに一流大学に進み弁護士にまで昇りつめた事については、私も偉いと思います。しかし、それが逆に仇となり、「努力しないのは本人が悪い」と、弱肉強食の新自由主義・拝金主義の考え方に次第に染まり、サラ金の顧問弁護士として社会的弱者を散々追いつめた挙句に、大阪府知事や大阪市長になってからも、WTCやカジノなどの大型開発だけを重視し、高校・病院統廃合などの福祉切り捨てに邁進してきた事については、全く称賛できないし、むしろ怒りすら覚えます。
後者の「弱者でありながら逆に権力にすり寄る」人間の事を、俗に「アンクルトム」と呼びます。確かに、行政と癒着して、在日やの解放運動を単なる利権漁りや物取り主義の運動に貶めてしまった彼らの罪は大きいです。それは今までの解放運動の持つ「弱さ」でもあります。しかし、最も糾弾されるべきなのは、むしろその「弱さ」につけ入り、差別を温存・逆利用してきた安倍や麻生のような輩ではないでしょうか。
そして解放運動の側も、その「弱さ」を克服できない限り、結局は権力に利用され飴玉しゃぶらされた挙句に、「豚が自分を殺そうとする肉屋を逆に称賛する」愚を犯す事にしかならないでしょう。そして共産党の志位委員長も、かつての「反共の牙城」であのような共同声明を出せた成果については称賛できるものの、そこに安住するだけでなく、日韓議連所属の自民党議員の本音や彼らとの力関係についても、もう少し冷徹に分析する必要があるのではないかと思いました。