acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

八ヶ岳 赤岳西壁 主稜

2019年01月02日 16時04分54秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2018/12/16(日) 天気:晴れ

メンバー:szt(CL),きくりん

装備:登攀具&冬装具各一式,ロープ(8.1mm×50m)×2本.

5:37行者小屋BC→6:40主稜取付き→8:33 7P目(上部岩壁?)登攀開始→9:55南峰頂上→10:37地蔵尾根分岐→11:30 BC着→14:05赤岳山荘P

 

 さて,ようやく赤岳主稜だ.

前日の阿弥陀北稜は危なげなく終了し,素早い行動のおかげで主稜の取付きからそれぞれのピッチのイメージを掴むことができた.前夜のテントでは日出時刻からBC出発と起床時刻を逆算し,4:00起床の5:30出発として,結果的には12時間近く睡眠をとることに.2人ともぐっすり眠り仕事と前日の疲れを吹き飛ばす.あ~よく寝た.

予定通りの時間に起きだし,準備も済ませてほぼ予定通りの時刻に出発する.BCを出発すると,後続で4人パーティが直後からやってくる.「やっぱり赤岳主稜かなぁ,,」と思いつつも,大汗をかきたくもなかったので,文三郎尾根への登山道をのんびりと歩いてゆく. 前日目印に着けたテープを見つけ,登山道から取付きに向けてトラバース.目印のテープがなければ周囲は暗いし見逃していたかもしれず,内心「よかったぁ~」と思いつつ,消えかけたトレースを追いつつ取付きへ.

登山道へ目を向ければ後続の4人パーティはどうやら主稜ではないみたい.これなら自分たちの登りに集中できそうだ.それぞれのロープを結びあって,夜明けとともに登り始める.

1P目のリードはわたくし.昨日はきくりんに先攻を譲ったのも核心といわれるこのピッチに触りたかったから.いざ登ってみるが,スリングの付いているフェイスの方へ登ってしまうとどうにもその後が手を出せない.「う~ん,人工はちょっとやだな~」とスリングにつかまって取付きへ戻る(この下降ですでに人工?).「ごめん,もうちょっと粘らせて~」と内心できくりんに謝りつつ,仕切り直してCSを直上する感じでスタンスを拾っていくと無事突破.やれやれ,これでは一撃とは言えないな~.

取付きより.出だし間違えちゃいました.

出だしを抜けると凹角状を登って右へ曲がり,歩きやすいところを進めば2P目のしっかりした支点に行き当たる.

2P目の支点からは昨日登った阿弥陀岳や北アルプスなんかがよーく見える.ロープを上げている間に次のパーティが主稜の取付きにトラバースしてくるのが確認できる.「とっとと登って,抜かれないようにしたいところだな~」とロープをたくり相方に登っていーよのコールを送る.

2P目の支点より.テキパキと作業を進めましょう.

2P目の支点より.夜明けの阿弥陀岳.昨日登った北稜がよく見える.

2P目リードきくりん.どういうピッチか正直あんまりよく覚えていない.きくりんは岩角でビレイしていたかな?昨日の登山道で主稜に取付いていた人たちを見たけど,多分ここに立っているのを見たんだと思う.

3P目の支点辺りより.隣に見えるのは南峰リッジ?

3P目リードわたくし.確か寝た岩&雪稜帯を登っていったと思う.途中に3P目の支点と思われるハンガーボルトあり.事前の情報では各ピッチでしっかりした支点があるらしいので,そのつもりでロープを伸ばしていくとありましたありました,4P目の支点が.

3P目の支点より先のルート(のはず).

4P目の支点.

4P目の支点より下部(のはず). 

4P目リードきくりん.ここも特に危ないところはなかったはず.きくりん,また岩角で肩がらみのビレイ.いい感じですよ~.この調子でサクサク進んじゃいましょう.

5P目の支点から先.深く考えず簡単なところを進んだと思います.

こちらが5P目の支点.サクサク進みましょうね~.

5P目リードわたくし.焦っているわけではないけれど,登山特に冬場はスピードが大切.斜面の岩や雪に導かれるままに高度を上げる.先ではボルトないかな~と思いこの日初めて岩角でビレイ.実はもうちょっと上にボルトの支点があったけど,長いスリング,それもナイロンのやつをいい感じで使うもんだな~なんて思ってました.リズムはいい感じ.振り返るとだいぶ高くなってきましたよ~.

6P目の支点より.行者小屋をバックにしたきくりん.爽快だ~~.

6P目の支点.落ちる感じもしなかったから肩がらみだった気がする.

6P目リードきくりん.左側に岩壁を見つつ基部を右へ進む.ところどころハーケンが打ってありスリングも垂れ下がっている.ここら辺は登れるところをみんな登るのだろうか.こちらは事前の情報を参考に立派な支点の所まで移動する.

7P目の支点.ここからはいろいろなルート取りがあるのかなぁ?

7P目リードわたくし.会の人からは「1P目だけが難しい」と聞いていた.その言葉,参考にはしていたけど鵜呑みにはしていなかった.「侮っていると痛い目にあうぞ~」と身構えていた.それがここのピッチで活きる.

前日までにおさらいしたルートの全体像からすると,ここが意外に侮れないのでは?と思っていた.だからと言って細かなところはその場に来てみないとわからない.ボルトのあるところから見ると右に回り込むほうがなんとなく登りやすそう.ただ,ここら辺りは風の通り道なのか,風の強さが急上昇.

7P目の支点より上部.なんとなく登りやすそうなところをなんとなく登る.

ということでとりあえず寒さに耐えつつ登っていくと,そこそこ傾斜が立ってきてノーピンではちょっと怖さを覚えてくる.手袋で岩は掴みづらい上に強風で指先が冷え,アイゼンでスタンスを探さなければならないからイヤだな~と思っていると,ちょうどいいところに半分腐ったハーケンを発見.こいつでランナーを取りじりじりと登るとその上はリッジ状.さすがに立てそうもないところはリッジにまたがって嫌なパートを通過する.このパートはフォローも登りづらかろうと,しっかりした支点の取れそうなところを探すと,やっぱりここにもしっかりしたボルトが打ってあり,そこでビレイ.

このピッチなかなか怖かったっすよ.アイゼントレの重要さを実感.それにしても,大まかなルートのイメージトレーニングってのも大切だね.きくりん,1P目といいこのピッチといい,このルートのアクセントのあるパートを登らしてもらってありがとー.

8P目の支点より下部.フォローで登ったきくりんも怖かったそうな. 

8P目の支点もしっかりボルトでした.支点より上部はこんな感じ.あ~寒い.けど,もうちょっと.

8P目リードきくりん.風が強くて寒いので,焦らずにちゃっちゃと登ってゆく.それにしても高度が上がってきたからか,攀じ登ってゆくのに息が上がる.あー苦しい.

9P目の支点.もうちょっとだよう.がんばろー.

9P目リードわたくし.最後のピッチは危ないところはないけれど,歩いて上がるのがあ~つらい.でも,稜線はすぐそこだ.登山道の手前でピッチを区切ってフォローをビレイ.

実質的な終了点より.お疲れさまー.上がったもんだね~.

終了点から見上げれば,そこはもう登山道.ハイカーがほらそこに..

登山道のすぐ脇でロープをたたみ,小屋を通り過ぎれば,そこはもう赤岳山頂.山頂はごった返しているわけではないけれど,自分が今まで登った冬山に比べればたくさんの人がいる.赤岳って人気あるんだな~.

昨日にはなかった雲海も拝めて,富士山の眺めが前日とは一味違う?

今回のツアーのメインの目標を達成し,山頂で風を避けて小休止.栄養補給や記念撮影を済ませたら,後は下るだけ.分岐の目印であるお地蔵さんを確認して地蔵尾根を下る.途中のちょっとした斜面で,諸先輩方に倣って尻セードもどきでの下降を交えつつ,登山道を下りBCへ移動する.

下りは地蔵尾根から.お地蔵さんにお別れのご挨拶.

任務を完了すれば後はケガや事故なく家に帰るだけ.途中,アイス愛好家の顔が浮かび,相方の意欲を高めるのも狙って南沢大滝を偵察し,家路につく.

 

何年か前に目標を立ててそれを目指して過ごしてきてけれど,段々とその目標が遠ざかって行くのを感じてもいたここ最近.目標が遠ざかれば,また別の目標に修正すればいいだけのことなんだけど,パートナーと天候に恵まれて通過点の一つに考えていた目標を,考えていたよりもちょっと時間がかかってクリアできた.


 「アルパインの経験がない人を,バリエーションルートに連れていけるようになればチャンスはあるんじゃないですか?」

半月ほど前の山行の記憶をたどって思い出すのは,なぜだか何年か前にとある人から言われたそんな言葉..

ってことは,まだチャンスがあるのかねぇ..??

szt

 


八ヶ岳 阿弥陀岳北稜

2019年01月02日 13時40分50秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2018/12/15(土) 天気:晴れ

メンバー:szt(CL),きくりん

装備:登攀具&冬装具各一式,ロープ(8.1mm×50m)×2本.

12/14 19:10自宅(つくば)発→23:00頃 道の駅小淵沢(泊)

12/15 4:30起床→6:00赤岳山荘P→9:33行者小屋BC発→11:37第一岩峰取付き→12:23阿弥陀岳山頂→13:38文三郎道分岐→15:00頃行者小屋BC着

 

 「アルパインの経験がない人を,バリエーションルートに連れていけるようになればチャンスはあるんじゃないですか?」

半月ほど前の山行の記憶をたどって思い出すのは,なぜだか何年か前にとある人から言われたそんな言葉..

 

3年位前から雪に囲まれた環境でロープを出す山行をしてみたいと思っていたが,いろいろな条件が重なってなかなか経験を積むことができなかった.今シーズンの冬はどうやら念願の?チャンスがやってきたみたい.パートナーはきくりん.こちらは冬山歩きや短いアイスクライミングの経験はあるけれど,何ピッチもあるバリエーションルートとなるとそうは数をこなしていない.おまけにこの時期は陽が一番短く行動時間も限られる..そんなわけでルート選択に頭を悩ませたが,まずは簡単といわれるルートでもいいから数をこなしていこう!ということで,阿弥陀北稜と赤岳主稜をチョイス.

前夜つくばを出発し,珍しくも長い区間高速を使い,当日早朝に美濃戸まで車で上がってしまう.予報では土日好天の予想.計画通り初日に行者小屋でベースを張って,阿弥陀北稜にアタックすることを確認する.

美濃戸の駐車場にて.この日はこれくらい雪あったんですよ~ 

南沢の登山道をのろのろ歩き,8:30前には行者小屋に到着.さっさとテントを張り,そそくさと登攀具を身に着ける.見上げれば阿弥陀の北稜と思われる稜線がよく見えるではないか.

南沢の登山道より.うっすらと陽が当たり赤岳山頂付近の眺めの美しさにちょっと見惚れてしまう.

8:27行者小屋に到着.

阿弥陀北稜と北西稜.行き先がわかって少しだけホッとする.

こちらが今回のBC.

1時間ほどで準備を済ませ,文三郎尾根への登山道から阿弥陀岳への夏道へ入ってゆく.ネットの記録などでは12/10までは八ヶ岳にほとんど雪がなかったようだが,12/11に通過した南岸低気圧の影響かこの日は阿弥陀北稜の取付きまでトレースはなし.天気は良く,樹林の間から時折見える北稜を目指して雪の中を進んでゆく.あまりにも多い雪では疲れ果ててしまうが,このくらいの量であれば一番最初に足跡をつけることが気持ちいい.振り返れば,これもこの日の山行のいいアクセントになったのだろう.

踏み跡なのか,夏道なのかよくわからないが取付き目指して登ってゆく.

確か夏道から撮ったところ.ここから取付きめがけて明瞭な尾根を登っていった.

第一岩峰取付きまでは,ところどころ急な登りとなるもののラッセルにめちゃくちゃ苦労することなく雪の中を進んでゆく.ああだこうだ2人して確認しながら第一岩峰取付きに到着.夏道から分かれた登りの最中にちらりと何人かの人が見えたが,取付きで単独の女性の方に抜かれる.「北稜を単独か~.かっこいいなー」と思いつつ,「うちらは冬山初心者パーティなんだから,マイペース,マイペース」とお互いに準備したロープを出し合う.

第一岩峰.左に回り込んだところに支点あり.

ご覧の通り立派なボルトがありました.

1P目のリードはきくりん.目の前で単独のお姉さんが登っていった後を追うように,スルスルと登っていく.コールの後,フォローで登るわたくし.前に登った二人は簡単そうに登っていたが,手袋&アイゼンで登ってみると意外に岩を掴めないしバランスは悪いしで,なんだかおっかない.2人ともスゲーなぁ..

1P目,登りやすいところを適当に.

2P目はわたくしめ.きくりんが岩角で取ったビレイポイントからもう少し上がると,立派なボルトの支点がある.そのすぐ上が少し立った岩場.前のお姉さんが登った跡らしきものがあったから概ねルートはわかったが,取付いてみるとなんだか岩がうまいこと掴めない.それでも足を上げたり指でこらえたりして岩場を抜ける.やれやれ,なんだかおっかないな~.

2P目支点より.この少し先に立派なボルトの支点あり.

岩稜帯を抜ければ事前に写真で見たことのある,リッジ状を通過.リッジ手前にスリングもぶら下がっていてこの日はそれほど緊張感はなし.それでも振り返ってみれば画になるところではないか.

チョットした雪のリッジ状.この日は風もなく,心地よい緊張感でした.

リッジ状を抜けた後はロープを伸ばし,横たわっていた灌木でビレイ.ここから先,きくりんに少しロープを伸ばしてもらうが実質的には2Pでロープ出しは終了だった.確かにここは1回来てしまって,天気が落ち着いていれば1人でも来られるかなぁという印象.それでもわたしにはここに2人で来られていい経験を積むことができた.

途中明らかにロープはいらなそうな雰囲気となったので,ロープをしまい少し歩けばそこは阿弥陀岳山頂だ.降雪から数日経って,柔らかい感じの山の景色が素晴らしい.

山頂より富士山.

こちらは北岳ほか南アルプス方面.

赤岳.翌日登る予定の主稜を追う.

こちらは横岳方面.

硫黄岳,東天狗,西天狗だって見えるのだ.

山頂でぱっと周りの景色を眺めたら,あと気になるのは明日登る予定の赤岳主稜のことだけ.取付きの確認をするべく,そそくさと下山を開始.中岳を乗越して文三郎道に合流.振り返れば,「そうか阿弥陀は初めて登るんだったな」と思い出し,もう一度阿弥陀岳を眺めてみる.よーく見れば北稜に数パーティ取付いてるではないか.

文三郎道に合流.これだけの天気だから赤岳に登る人は多かったっす.

阿弥陀岳ときくりん.まずは一本完登だね.

文三郎尾根の登山道を下ってゆけば南方リッジの取付きを通り過ぎ,やがて赤岳主稜の取付きに向かうトラバースポイントへ.案の定,主稜には数パーティ入っていて取付きまで踏まれている.目印をつけてBCに降りてゆき,翌日の山行に思いを馳せるのだった.

szt