acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

谷川岳 一ノ倉沢烏帽子沢奥壁 凹状岩壁

2016年09月13日 22時05分36秒 | 山行速報(アルパイン)

2016/9/10(土) 天気:晴れ

メンバー:W辺,szt

 

 前週に続き谷川岳.今回のパートナーは5月に中央稜を一緒に登ったW辺さん.私のリクエストは変チ,中央カンテ,凹状のどれかでお願いしたら,凹状に行きましょうということで今回の山行が実現した.

 3:30起床で4:00ベースプラザ駐車場を出発.5:00に出合に到達しハーネスを装着.ここまでは一番乗り.他のパーティがいないのが不思議であった.

取り付きに向けて出発するが,先週に比べ岩の湿り気が増していて靴が止まらない.テールリッジを登って行っても気が休まらないし,疲労度は先週の比ではない.週の半ばは台風が来ていたし,晴れたのだって昨日くらいだからそういうことなのだろう.

6:58中央稜の取り付きに到着.だいぶ気を使って登ったのでとても疲れた.ここで一休みしていると,2パーティ登ってきた.ダイレクトカンテ,中央稜に行くみたいなので我々のルートにはあまり関係なさそうで一安心.

たっぷり休んで重い腰を上げ,凹状岩壁の取り付きに向かい7:45いよいよ凹状岩壁の登攀開始である.

1P目,リードW辺さん.右へバンドをトラバースし左上していく.トラバースではハーケンがあるが,左上していくラインではハーケンなど全くなし.私はセカンドで登ったが,恐ろしことこの上ない.W辺さんよく登るよな~と思っていた.

2P目,リードszt.登りやすそうなところを上がっていくと,中央カンテに分かれるペツルの支点がよく見える.それにしても事前の情報通り浮石が多い.下に落とさないよう気を付けないとな~

3P目,リードW辺さん.凹角上の立った壁の基部まで.ここら辺の記憶はあまりなし.特に厳しくも感じなかった.セカンドだから当たり前か?

4P目,リードszt.もともと今日の岩のコンディションは微妙に湿気っているのであったが,凹角だけあって岩の濡れかたもひどい.おまけにプロテクションは見当たらないし,上に行けばどんどん立ってきそうだし,登る前から嫌な感じ満点である.

とはいえ,まぁ行くかという感じで登る.予想通り岩は濡れているし,ランナウトしているし,そのうえ岩は動くし,とにかくおっかない.ここで足を滑らせれば大けがは間違いなさそうだし下手したら...とにかく集中して登っていくと途中リングボルトが見つかってようやくヌンチャクをかけられた.

一息つけたといいたいが,リングボルトなんて埋まっているのはごくわずかなことを思い出す.とにかく集中して丁寧に足を探しながら登り,ハーケンを見つけて2本目のヌンチャクをかける.ふぃ~,支点まで集中集中と心の中でつぶやいて,何とか立った壁を抜けられた.

5P目,リードW辺さん.ここだって岩はグズグズな感じである.おまけにハング越えはどうやって登るんだ?W辺さんは直上してハング手前を右にトラバースしていたが,トラバースに使ったフットホールドなんて信じられるシロモノとは言えないぞ?

リードで抜けたW辺さんを尊敬するとともに,全く気の抜けないルートである.

6P目,リードszt.事前に考えていたポイントはここかと思っていたピッチ.

見上げれば崩壊跡がありのっぺりとしていてどこがルートかちっともわからない.カンテ沿いに行くとⅢ級だがランナウトするらしいが,そのカンテがどこなのかよくわからない.

ひとまず支点から右へトラバースし,トポに書いてある通りリッジを超えて凹状を登るつもりで行ったのだが,ここでルーファイミス.よくよく考えれば藪だらけなのだからわかるはずだが,トポの文章を気にしすぎておそらくカンテを超えてしまい,ルートを外れてしまう.5P目までのクライミングで気力を持っていかれたのもあるかもしれない.

岩壁登攀でなく,傾斜の急な藪山登りとなってロープがいっぱいになったところで灌木ビレイ.

それにしたって足元は全然安定しない.

7P目,リードW辺さん.ひとまず正規ルートは左の方にあるはずだから,目印となる灌木めがけて藪を左上しながら突っ込んでいく.W辺さんごめんなさい.

目指した灌木は正規ルートの支点にする木であったようで,本来のルートに戻った雰囲気に少しホッとする.上を見ればクラックがあり,ハーケンも何本か目視できる.今までのことを思えば天国にいる気分.

8P目,リードszt.事前の情報通り岩は今までに比べしっかりしていてとっても安心できる.でもここまでのタフな登りでココロはよれ気味なため,出だしのスラブは体が思うように上げられない.気持ちを落ち着けて左の灌木にスリングをかけ,クラックに取り付いていくがここも微妙な感じでかぶっている.ハーケンが連打されているからそれほど恐怖感はないが,ココロがよれているから体もヨレヨレの呈である.

ムーブ的にはどうってことないが,最後の最後でけっこうしんどかった.詰めていけば凹状岩壁の終了点に到着したのであった.

結局終了点にたどり着いたのは12:30.ルートを外れた割にはまずまずなのか?

ここで水分補給&栄養補給をして谷川岳方面を眺める.今年はここら辺に5回も来てるんだな~

ひとまず終了点まで来たら,最近抱えていたちょっと悲観的な考えやココロのわだかまりやモヤモヤしていた気持ちがストンと抜け落ちて,やけに前向きになっている自分がいた.

何だこれ?大げさかもしれないが,必死の思いで登ってきてケガなく無事でいられることを喜んでいる自分に気がついたとでも言うか...

とはいえ安全圏にいるわけではなく,下降が残っている.下降は中央稜で行くか北陵で行くか迷ったのでひとまず中央稜の終了点まで移動することに.中央稜の終了点の移動までだっておっかないのだ.

下降路は相談して13:00頃より中央稜を降りることに.下降の途中で凹状岩壁のルート取りを振り返る.明らかに右へ回り込みすぎだよな~,,,

中央稜の下降は順調に進み,14:00には中央稜の取り付きに到着.

ふと横を見れば,ダイレクトカンテを登っている.

テールリッジの下りは朝に比べれば,幸せなフリクションにあふれている.なんてステキなんでしょ.

出合までは先週と同様にヒョングリの滝を下って行ったのであった.

順調に下って出合には16:30に到達した.

場合によっては死ぬかもしれないことをしているのにこの清々しさは何だろう?やっぱり今の自分は谷川岳に呼ばれているのだろうか?いずれにしても自分の頭のネジは何本か外れているようだ.外れていたってそれがどうした.今の自分には,一ノ倉の壁のいくつかのルートに挑戦しないと生きている心地がしないようなのだ.

szt


谷川岳 一ノ倉沢烏帽子沢奥壁 南稜

2016年09月11日 21時38分20秒 | 山行速報(アルパイン)

2016/9/3(土) 天気:曇り時々晴れ

メンバー:sak,K崎,S田,S藤,szt,他1名

 

 直前まではその土日で何をしようか考えていたところだった.そんな時に急きょsakさんから山のお誘いが...どこに行くかはさておきひとまず話に乗ってみれば,去年5月以来の南稜&4人パーティ!攻めますねsakさん.

 当日は4:00駐車場出発の予定が,みんなの気合のあらわれか3:40駐車場出発.5:00前に一ノ倉の出合に着くがさすがにまだ暗い.ハーネスやらガチャ類を身に着け,5:00に出合を出発しまずはテールリッジを目指して夏道を歩いていく.ヒョングリの滝を高巻いて懸垂下降しいよいよテールリッジ.去年初めてテールリッジを歩いたときはとても緊張したけれど,今回初めての二人はどう思ったのだろう?

6:46ひとまず中央稜の取り付きに到着.S藤さんたちはダイレクトカンテの予定だったけど,視界の悪さに我々の南稜に合流.総勢6人3パーティの会山行!なんだかこれはこれで楽しい.

でも中央稜の取り付きから南稜テラスが嫌なんだよね~.去年の9月の3ルンゼ以来だけど,今回のフリクションもそこそこ濡れていて緊張するよ~

7:15頃に南稜テラスに到着.上はガスっている.先行のパーティも南稜に入っていた.後続の一組も南稜で,今日一ノ倉に入っているのは全員南稜!人気抜群だ.

ぼけっとしていても始まらないので,身支度を整えてさあどんどん登りましょう!

今回はszt-S田,sak-K崎,S藤-mさんのパーティの順に登ることに.総隊のトップの栄誉にあずかって7:30頃登攀開始.

1P目はチムニー下で一旦ピッチを区切る.

2P目チムニー登り.去年は偶数ピッチをリードしている.そうそう出だしのホールドが遠かったんだよんね~.それにしても濡れていて足が滑る.

3P目,本来の2P目?ハーケンが全然見当たらず.こここんなにおっかなかったけ~??結構必死で高度を上げる.途中にハーケンを一つ見つけてほっとする.下山後トポを見ると凹状を右上とあるがよくわからなかった.ほぼ直登していた気がする.

4P目草付き.まあここは特に問題なし.

5P目短いフェイス.ここも階段状で問題なし.ただ,ピッチの区切り方に問題があったかも.本当はもう少し上まで登って馬の背リッジ直前で切るべきだったよう.

6P目,ここで馬の背リッジに行くために右に回り込むべきだったのに,左から登ろうとしてルーファイミス.登られていないことと岩のコンディションの悪さからか,とにかく足が滑って怖かった.sakさんがいないとまだまだだめだなぁ,と反省.

一旦右に回り込めば高度感満点のリッジ登り.そうそうこんな感じだったと思い出す.S田さんなかなかの高度感ですよ~

7P目,最終ピッチ直前のテラスの手前で区切ったのでいったんテラスまで短く登る.ここで隊列を変更し,sakパーティに先行を譲る.

8P目,ここのリードはK崎さん.ここまですべてリードできたし,去年この最終ピッチをリードで抜けているので初めて来た二人にお譲りすることに.二人ともやる気満々である.

K崎-sakパーティが抜けた後は,S田さんリードで我々が続く.はいS田さん頑張って~

そんなこんなで,10:40にはひとまず南稜の登攀は終了となりました.少し上まで上がって一休み.

谷川岳方面はガスっているが,白毛門の方は晴れている.やっぱりいい眺めだな~

今日の自分の課題は,よく覚えていない南稜の復習と6ルンゼ下降の復習.6人なのでテラスまで時間はかかったけどポイントを復習できた気がする.

南稜テラスに13:40には到着し記念撮影.こんなに多い登攀は初めてだったけどこういうのもいいかも.

ただここから出合まで気が抜けない.集中して中央稜の取り付きまでのトラバースをこなし,テールリッジを降り,テールリッジの基部からはヒョングリの滝を懸垂を交えながら下っていく.

確実に下降をこなしていき,一ノ倉出合に到着したのは16:30頃.これで安全圏まで降りてきた.

駐車場に到着したのは17:30過ぎ.国道歩きではすでにあくびを連発していた気がする.あ~疲れた.

 

szt


谷川岳 一ノ倉沢衝立岩 中央稜

2016年05月17日 18時48分58秒 | 山行速報(アルパイン)

2016/5/15(日) 天気:曇り→晴れ

メンバー:W辺,szt

11.12日に行ったジャンダルムは敗退だった.悔しくないかと言われば悔しいけれど,巡りあわせもあるし今の自分にはバリエーションを経験することがとにかく必要な気がした.もともとこの日は別の予定があったけれど,W辺さんが5月に都合がつくのはここだけというので,調整しなおして中央稜に向かった.

前日の夜に駐車場に到着して就寝.15日は相談して3:00起床,3:30出発.駐車場を出発したのは我々が一番早そうだった.

4:30に一ノ倉出合に到着.ここでハーネス,ガチャ類を装着して取り付きに向かう.去年の今頃来たときは出合に雪渓があった気がしたけどよく思い出せない.でもとにかく去年より雪は少ない気がする.

二の沢の雪渓も去年より少ないと思うけど・・・

途中でイワウチワ?こんな花も見なかった気がする.今シーズンは雪が少なかったけど,芽吹き,花の季節も早いのか?

そんなことを考えているうちに6時過ぎに取り付きに到着.テールリッジで追いつかれたおじ様も中央稜ということだったが我々に先を譲ってくれた.上はガスがかかっているがとにかく行かなきゃはじまらない.

ということで6:20頃登攀開始.1P目はW辺さん.下から2P目の支点が見える.秋以来の谷川で緊張もあったけどそれをほぐすにはちょうど良かったかな.

2P目,szt.支点から左に回りルンゼ状を登る.事前のsakさんのアドバイス通り浮石が多い.ちょっとドキドキ.途中で右にハーケンが連打された直前に支点がありそこで区切る.ここで区切るのが正解みたいで我ながらナイス読み??

3P目,W辺さん.ビレイしていて右のトラバースは気持ち悪そう.でもハーケンが多いから何とかなるか.フォローで登るときヌンチャク回収に手間取る.

4P目,szt.フェースを登る.途中15m程?登ると支点があったがテラスらしきものが見え,そこで区切れると思いそのまま登る.ハーケンが打ってあるのでルートはわかりやすい.

テラスに近づくにつれだんだん立ってくる.テラスに抜ける直前は傾斜がきつい上に高度感満点でおっかない.それでもA0することなく支点に到着.ハラハラドキドキだ.

5P目,W辺さん.ここら辺からは一見して登りやすいところをどんどん登る.

このころになると周りを観察する余裕も出てくる.やっぱり花が咲くの早いよな~

南陵,南陵フランケ?,凹状岩壁にも取り付いている.中央稜の取り付きにも1パーティいた.土日に初めて谷川に来たけどやっぱり人は多い.いままで人があまりいないタイミングで山に入っていたから,胃が締め付けられるようなイヤな感じは今のところない.

6P目,szt.下に比べると岩はだいぶしっかりしてくるけど,途中に触る岩の音はだいぶ軽い.やっぱりいつ崩れてもおかしくないんだろうな~

ここらへんで9時前.上の方がだんだん晴れてくる.7年間のブランクがあった人と登るにしては上出来か?

7P目,W辺さん.

8P目,szt.ここら辺は特に問題なく上に詰めていく.

9P目,W辺さん.ここでルートを間違えてしまう.

支点から右方向に踏み跡らしきものがあったが,W辺さんも自分も直上するのだろうとおもっていたが上はだいぶ悪いようで支点までクライムダウン.

右に回り込めば階段状でなるほどなるほど.まぁここはご愛嬌ということで.

10時頃終了点に到着.少し移動して安定したところで大休止.記念撮影して栄養&水分補給.白毛門,笠ヶ岳がよく見える.この日はK崎さんも白毛門にいっているので見えるはずないけど思わず手を振る.だって気持ちがいいんだもの.

ひとまず半分が終了.北稜の下降は手強そうな気がするけど個人的にはW辺さんがいるなら北稜下降を経験しておきたい.結局相談して時間に余裕があるので北稜を下降することになり11時頃から下降を開始する.

1P目2P目は特に問題なく下降.

3P目の途中でロープが団子になってしまったようで時間がかかる.でも時間に余裕があるって素晴らしい.3P目で笹薮に降り立ち少し歩いて移動.

4P目は途中の貧弱な支点まで下降.ここで1回ロープを引くが枝に引っかかってしまい登り返してこぶを外す羽目に.後で記録をみたらここはロープ1本で降りることが多いみたい.確かにロープ1本の方が引っ掛かりにくいし藪の中だから支点はいっぱいだ.刻んで降りたほうがいいだろう.

5P目は下部のバンドの端まで下降.空中懸垂は岩に足がつくがヌメヌメでなんかイヤな感じ.バンドに降りても次の支点まではできればロープをつないでおきたいが,ロープの長さはギリギリ.

ここは初めてトップで降りたが次の支点がどこにあるかわからずここで左脚を強打してしまう.普通に下降すればそんなことにはならないのでご心配なく.振り返れば何も考えず信じて下降すればよかったのだ.

6P目,ピナクルを目指して下降.下降してからピナクルまでが嫌らしくてあまり好きになれない.ロープを付けたままピナクルまで慎重に移動.

ピナクルで小休止.ここで14:30くらい.いろんなことがあって今日は中央稜登攀というより北稜下降という感じ.

ここからは踏み跡を尾根伝いに歩いて雪渓まで.

雪渓からは軽アイゼン,ハンマーを装備してロープを付けてトラバース.正直むちゃくちゃ怖い.脚を強打したから左足で蹴り込むのに一苦労.ここをトップでトラバースしたW辺さんを本当に尊敬する.

略奪点に到着したらロープはしまって衝立前沢を下っていく.下降のトポには途中懸垂20mとあったが支点はわからなかった.本谷に入る直前の滝らしきところはクライムダウン.トポでは左岸にトラバースとなっているが踏み跡などはちっとも分らなかった.W辺さんの話では昔来たときには岩に支点があったとのことだけどそんなものもわからずクライムダウン.脚も痛いし結構緊張した.雨なんかで濡れてるととっても嫌なところだ.

最後は何とか雪渓に乗り本谷に出たのが16:08だった.一ノ倉の出合まで降りて一安心.17:30には無事駐車場に到着.

登りは快調だったのに,下降に時間がかって脚とおしりをぶつけて痛みもありドタバタ感があるけれど,なんだかとても充実していた.

いつもはsakさんにおんぶにだっこだから違う人とパートナーを組んで新鮮だったのか?それにしても7年ぶりのマルチピッチ復帰戦が谷川って凄いっす.W辺さん尊敬します.

まだまだ谷川で登っていないところはたくさんある.

ちょっとずつ経験していこう.谷川でいろんな人と登ってみよう.そう思った一日だった.

szt


八ヶ岳・ショルダ-リッジ左

2016年04月04日 23時05分04秒 | 山行速報(アルパイン)

2016/4/1 八ヶ岳・ショルダ-リッジ左

「いよいよだな」と彼は言った。
それは、いよいよ登っていない八ヶ岳のバリエ-ションがなくなってきた、ということだ。
「安心してください」とsakは言う。
それは、まだ1本残っているではないですか、ということだ。

まだ1本ある。
まだ終わっちゃいないのだ。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

昨日の心地いい疲労感は残しつつ、天気も上々。気分も上々。
パ-トナ-のsztさんのモチベ-ションは高い。

「行け。振り返るな」

文三郎尾根をボトボト歩く。
最初の急登が一段落したあたり、主稜取付きの一段下から赤岳沢に下降、トラバ-ス。
アタリをつけておいた尾根に乗る。

下部は急な雪斜面をノ-ザイルで。
最後、木登りを交えた小岩の登りはチョット緊張。
初心者がある場合はロ-プを出した方がいいかもしれない。

大岩壁下でロ-プを出す。
隣に主稜パ-ティ-が見える。

1P sak
大岩壁は左右どちらも登られている。

ここは岩壁基部を右へ。ミックス帯を行く。
雪もうっすらで脆いので慎重に。
小リッジを乗り越え、ルンゼ状を詰める。
脆い。そして中間支点は見当たらない。
心理的にタフなピッチ。
ルンゼ状を詰めあがった所にある残置ハ-ケンでピッチ切り。

2P szt
露岩~ハイマツ~雪壁
リッジに乗る。

3P sak
切れたリッジだが、傾斜はない。
スタンス、ホ-ルドは豊富。
リッジが立ってくるが、その基部にハ-ケンがありそこで区切る。

4P szt
立ったリッジ。
スタンス、ホ-ルドは豊富。
一ケ所、スラブっぽいところに支点がある。
スタンスが少ないが、リスにアイゼンの前爪をひっかけて立ち込んだ。
リッジを抜けるところまで。

6P sak
草付、ハイマツ、露岩のミックスをザクザク登る。

7P szt
緩傾斜の雪壁をザクザク登る。
登れば登るほど傾斜は増す。

8P sak
続けて雪壁をザクザク登る。
左右に岩尾根が見える。
登りやすそうな右に見える尾根に乗ってひと登りで登山道に出た。

下山は赤岳を越えて、文三郎尾根。

ショルダ-リッジ左は八ヶ岳にあってル-トファインディングを楽しめる貴重な一本。
マイナ-なだけに、集中して向き合えて手頃なグレ-ド。
手頃、とはいえ支点の少なさはリスクも少なくない、ということ。
そういう登攀がここにはある。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

目の前の壁を乗り越える。
そう想えたのは、幻ではない。
まだ終わっちゃいないのだ。

「行っちまったのかい」

「安心してください」

それは夢に終わりはない、ということだ。
「次の一本、付き合いますから」
遠く、西の空に語りかける。

 

sak


八ヶ岳・日ノ岳稜

2016年04月03日 23時00分04秒 | 山行速報(アルパイン)

2016/3/31 八ヶ岳・日ノ岳稜

 

目の前の壁を乗り越える。
それは自然な感情なのではないのか?

夢を見させたのは誰だ?
誰でもない。他ならぬ、自分だ。

正解などない。
答えは他人が導き出したひとつのスト-リ-でしかない。
人のことをアテにするな。
自分で探し出せ。

 

寒さもゆるむ3月末。
下界では早々、桜の開花がすすむ。
八ヶ岳にしても、あの寒さは、もうない。

前夜。
幸い、雪も凍結もなくスンナリと美濃戸まで。
朝は5:30出立。

今回のパ-トナ-はsztさん。
アイゼン登攀はこの冬から本格始動。
とはいえ、体力、バランスの身体能力は充分。
むしろ、仕事にかまけた半年を過ごしたsakの方に不安はあるのだ。

行者小屋前に天幕装備をデポして、向かう先は日ノ岳稜。

数年前に残置と記録の少なさに惹かれてご執心だった時期があって、宿題課題となっていた。
現在はガイドル-トとして整備されたらしく、ネットでの記録も多くなった。


中山乗越から中山尾根を詰める。
樹林帯が終わり、中山尾根下部岩壁が見えるところから、左隣に日ノ岳稜。
日ノ岳ルンゼ大滝(とはいえ、大滝というほどではない)が良い目印となる。

取付にアタリをつけて日ノ岳ルンゼに下降。
雪も締まっており、ロ-プを出さずトラバ-ス。稜に乗る。
取付に残置支点。

1P sak
1mほどの岩棚に乗るのが核心か?
丁度いい所に残置スリング。
ボロボロの岩棚を右にトラバ-スしてリッジを回り込んだら草付のミックス。

2P szt
雪の着いた草付を右上。
その先に見える、リッジを左上する。

3P sak
雪の斜面を直上。
ロ-プはなくてもいいけど、しまうのも面倒なのでツルベで行く。

4P(コンテ)
中間の雪稜帯
気持ちのいい雪稜を行く。
途中、小岩壁を登って上部岩壁下まで。

岩壁下で小休止。
岩壁基部を二人で右に回り込む。
二本目の凹角にペツルとハ-ケンがあり、ここを登る。

5P szt
下部は凹角を行く。
凹角を登りきった所のバルジを左から回り込んでハイステップで上がる。
sztさんナイスリ-ド。
ここが、ル-トの核心だろう。

6P sak
正面のアバタ岩フェ-スを行く。
ル-ト中で一番立ってはいるものの、ガバ続き。
浮石に注意すれば、問題ない。
その上は雪原、ハイマツ、草付をザクザク登ると日ノ岳にポンと出る。

ここで、大休止。
天気もいいし、宿題をやっつけて、最高な気分だ。
おそらくは、sztさんも本格的なアイゼン登攀を感じ取っていただけたであろう。
来年は中山尾根、リ-ダ-としてトライしてみてね。

あとは地蔵尾根を下って、飯食って寝るだけ。
ゆとりと充実感で、行者の夜は更けていく。

sak

 


谷川岳 一ノ倉沢3ルンゼ

2015年09月18日 17時07分58秒 | 山行速報(アルパイン)

その先はどうなっているのか。
この風景のその先を。
この目で。この体で。


2015/9/14-15 谷川岳 一ノ倉沢3ルンゼ


一ノ倉の奥壁を縫うように国境稜線へ。
先達が自然と追い求めたように、眺める谷の一番奥に抜けるライン。
それが、3ルンゼ。

過去に二度の悪天敗退。
いずれにせよ「タイミング」というものはある。
過去の経験は今日のタクティクスに生きてくる。
途中のビバ-クも意識した計画。
パ-トナ-はsztmさん。

駐車場を4:20発
日の出5:30に一ノ倉出合を出立。
下部はともかく、上部はガス。おそらく霧雨の様相だろう。
太陽が出れば、ガスは取れるか?
ともかく、これより悪化の天候はないはずだ。

秋道を行き、懸垂。
テ-ルリッジを行く。前後に2パ-ティ-。
中央稜取付き付近は霧雨。

7:00
南稜テラスあたりで何とか雨は上がる。
本谷バンドをロ-プを出して行く。
雨に濡れた笹薮で全身が濡れる。

1ピッチ:sak
本谷F滝は中央よりを行くが、支点状態悪く一度戻り、定石通り左から行く。

2ピッチ:sztm
F滝上から本谷左のリッジよりさらに左の草付ルンゼを行く。上部は草をつかんでいく。
リッジ上部の岩コブ基部に支点あり。

3ピッチ:sak
リッジを右、本谷側に回り込んでトラバ-ス、本谷F1上。
左から入る水流が3ルンゼのF1。ここを右から登る。草付で少し悪い一手があった。
滝上のスラブに支点を見いだせず、水流近くに降り支点構築。

4ピッチ:sztm
スラブを適当に。右のほうが楽。

5ピッチ:sak
下部核心のF2。いろいろ登れるようだが、下部は水流を行く。支点は疎らなのでカムを3カ所ほどセット。
上部に行くと支点も増えるが、腐っているものも多く、要注意。
最上部は水流際にも支点はあるが、左のフェ-スへ乗り移る。最初外傾の甘いホ-ルドが多かったが、数歩登るとガバカチ続き。

振り向くと一ノ倉出合。
南稜に1パ-ティ-。

6ピッチ:sztm
スラブを行く。ピッチ切りの支点が見つからず、安定したところで切る。

7ピッチ:sak
F3は相方の見せ場。なのでほんの数m、F3滝下まで。

 

8ピッチ:sztm
F3の下チムニ-はビッショリ。とても行く気にはなれず、右にトラバ-スして岩の切れ目から右フェ-ス。
トラバ-スがヌメヌメでとても気が抜けなかった。ナイスリ-ドだ。
ロ-プの流れが悪いので、ピッチを切る。

9ピッチ:sztm
F3上部。右のフェイスは支点が見当たらず、中央突破でチムニ-を行く。
こちらも濡れてはいるが支点も多い。

これで、大方の核心は終了。
ロ-プをつないだまま、スラブというか岩ゴロの草付を直上。
途中、一時晴れたものの、上部ではガスがひどく、視界は良くない。
風も冷たく動いていないと寒い。

次第にスラブは正面と左に別れる。
このあたりが判然としなかったが、左目に行く。

右に上部岩壁が威圧感でもって高さを増す。
その基部、笹と草付に乗ってみるが、ここが非常に悪い。岩が浮き、妙に滑る。
予定外に時間がかかった。

このころ、谷にヘリの音がしばらく留まっていた。
ガスに巻かれて、その姿は見えなかったが、何かあったのだろうか?

スラブへ回帰すると安定。こちらが本道だろう。
しかし、次第に立ってくるので、油断は禁物。
上部にはいくつか支点も見いだせた。

最後に左トラバ-ス気味に中央奥壁との境界尾根。
笹薮を風よけにしながらロ-プを解く。
チョット上に安定したテラスがある。

ここで16:00。
時間はかかったが、国境稜線までは今日中に何とか届く。
そういった安心感があった。

しかし、、、しかしだ。
『日本の岩場』にある「しっかりした踏み跡」はもはや薮に埋もれている。
途中のフェイスでロ-プをだしての登攀(Ⅲ+)。
以降の薮、草付、灌木も傾斜がありロ-プを出して行く。
腕力に陰りが出てくる頃、ようやく国境稜線に届いた。

時間は18:30
もう、闇があたりを飲み込んでいた。

ヘッデンを出して今日の下山を考えたが、視界も悪く安全担保を考慮し肩の小屋に泊まることにする。
消灯間際の19:45、小屋着。
とても暖かく迎えてくれたのは、かの馬場さん。
臨時で小屋に入られていたとのことだった。
大変、お世話になりました。

明けて、トマの耳まで登って大休止。
マチガ沢東南稜でも、、、と考えたが、体の方はそうそう言う事を聞いてくれそうもなく眺めを堪能したらのんびり下山。
良きパ-トナ-、出逢いに恵まれて充実した山行となった。

この風景のその先を。
この目で。この体で。

初登攀の時の苦労やテクニックに到底敵うものではないが、奥底にあるものはそういう事なのではないかな、と。
秋風に吹かれながら、山を振り返る。


sak


八ヶ岳・小同心クラック

2015年07月01日 22時43分40秒 | 山行速報(アルパイン)

2015/6/10 八ヶ岳・小同心クラック

前日は早々に晩メシ食って寝ました。

昼寝したにもかかわらず、7時には寝袋の人となり。
そうして今6時です。

11時間寝ると、あれ?昨日の晩メシなんだったっけ?
てな具合です。(※効果には個人差があります)

しかしながら、今日の計画は忘れていませんよ。
忘れじの小同心クラック。

夏が谷川、一ノ倉南稜なら冬は小同心クラック。
あれ?何度登ったんだっけ?
てな具合です。

またも大同心稜を行き、小同心方面へ。
小同心基部で装備を付けてクライムオン。
全ピッチ、suztさんリ-ドで。

1ピッチ
浮いたアバタ岩をよ---く、確認しながら。
上部は立ってくるが、ガバはたくさんあるので問題なし。

2ピッチ
クラックというかチムニ-に入り込んで両足ツッパリがココの醍醐味。

3ピッチ
正面の突き出た岩を回り込み頭まで。

あとは横岳基部までトコトコ歩いて、直下から1Pで山頂。
山頂が終了点というのは、やはり気分がいい。

天気もいいので、ゆっくり休んで大同心稜を下る。
ルンゼ状はクライムダウン。
むしろ大同心基部へのガレ場が怖い。

あとはボトボトくだって赤岳鉱泉。
幕を畳んで、1時間ちょっとで美濃戸の駐車場。

いやぁ、このスピ-ド感。
サクサク行き過ぎて、あれ?今日は何曜日だっけ?
てな具合です。

夏の八ヶ岳、いいなあ。

sak


八ヶ岳・大同心北西稜

2015年06月30日 22時35分34秒 | 山行速報(アルパイン)

今日のラッキ-カラ-は・・・。

朝の出がけに、今日のナントカ占い。

これね、結構バカにできなくってさ。
残るんだよ。
今日一日さ。

あ-----。
そう言えば、朝の占いで言ってたっけなぁ、、、って。

いや、信じてるとかそういうんじゃないけど。
残るんだよ、一日限定で。

そう言えば・・・ってね。


2015/6/9 八ヶ岳・大同心北西稜

前夜、美濃戸まで入って車中泊。
五時半には美濃戸をスタ-ト。
suztさんと北沢の道を鉱泉目指す。

途中、岩を連ねた横岳の門番、大同心と小同心を仰ぎ見る。
いつもながら素晴らしい景観。
しかし、なんだなあ。
なんかちょっと新鮮な感覚。

そう言えば。
無雪期の八ヶ岳、初めてでした。

赤岳鉱泉で幕を張ったなら、向かう先は大同心北西稜。
本来なら冬の課題であろうこのル-ト。
数年前の冬、頓挫した計画を思い出し、ハ-トに火が付いた。
無雪期に登っている記録も散見。
これは行くしかないでしょ。

大同心稜をボトボト歩いて、大同心基部。
基部を裏同心ルンゼ方面へ下る。
あれ---。かなり下ったよね。と思う頃ありました。
目印のピナクル。
といいますか、それより目立つ、ピンクテ-プ。

1P・リ-ド
バンドを少し行って、小ルンゼを行く。
6月とはいえ岩が相当に冷えていて、たちまち指先がしびれる。
第一関節から先の感覚が鈍い。
指先が持てているのか不安になるくらい。
脆さもあるので慎重に。

2P・フォロ-
正面リッジを左から回り込む。
緩い草付でトコトコ歩く。
日向に出て、ホッコリする。

3P・リ-ド
緩い岩壁、階段状を右上してリッジ目指す。
50mだと足りず、いったんビレイ体制をとって少し上がってもらう。
75mくらいあったと思う。
リッジに乗る直前はいくらか立ってくる。

4P・フォロ-
下部の核心。正面のルンゼを行く。
角度も然ることながら、岩の脆さも相まって緊張させられる。
2つのルンゼを右目につないでいく。

5P・リ-ド
凹角状を抜けると草付、灌木帯に入る。
そこを抜けて這松でビレイ。

6P・フォロ-
這松をワサワサかき分け簡単な岩稜を行くと、正面のド-ム状に八ヶ岳的なクラック。
手前まで。

7P・リ-ド
上部の核心。正面の下部クラックに不安を覚え、右に回り込む。
いにしえのハ-ケンに導かれ大同心正面壁の最上部を2mほどトラバ-ス。
くぅ----。この高度感。

凹核をひと登りして上部クラックは、左のカンテ状を行く。
あとは一投足で大同心の頭。

ゆったり休んで小同心への継続も考えたが、それはそれで明日にとっておくことにした。
時間もあるので、下山は硫黄経由で北西稜をじっくり観察しながら。

いやぁ-。
あそこ登ったんかいな。などと思いつつ。

北西ってなんかいい響き。
みやこのぉ~西北ぅ~ってこれは西北だった。

あれ?でも北西と西北って違うのかな?
などとも思いつつ。

困ったときは、ぐ-ぐる先輩に聞いてみよう!


<教えて!ぐ-ぐる先輩っ!!>

方位において、南北を先にする表し方は西洋からの習慣であり、東西を先にする表し方は中国からの習慣である。

風水において、北西は天空を表す方位。
この方位がプラスに働くと、責任感、リーダーシップ、信頼感などを得られやすくなり、マイナスに働くと、傲慢、独善的、権威主義といった感じが強くなってしまいます。

また別名:主人の方位と呼ばれ、家族や組織を代表するものの方位です。
この方位が乱れると組織内に不和が起こったり崩壊したりします。
ラッキ-カラ-はクリーム色やベージュ、淡いピンク。

あ!
そういえば。どこかで見たな。ピンク色の何か。


sak


谷川岳・一ノ倉沢二の沢本谷

2015年06月05日 08時00分00秒 | 山行速報(アルパイン)

-余韻-

いまでも残っている。
心奮わす、まるで鐘音のよう。
一振りごとに岩に食い込んでいくあの響きが、だ。

1930年。
5月に一ノ沢にトレ-スが刻まれ、次いで7月に二ノ沢左俣。
1934年、8月に二ノ沢本谷はトレ-スされた。

「二ノ沢本谷は古典的名ル-トである。明るいスラブ、美しいゴルジュ、そして急峻な滝からなっており、登攀者に深い充実感を与えないではおかないだろう。」
と日本登山大系にある。

1930年~1934年。
一ノ倉登攀の幕開けともいえる時代。
世の中では、第1回FIFAワールドカップ開催、リンドバーグ夫妻が日本に着陸、ナチス・ヒトラー独裁時代の始まりなど。
現代の礎となった時期でもあり、混乱の予兆を感じさせる。そんな時であったように見える。

 


2015/5/28 谷川岳・一ノ倉沢二の沢本谷


二ノ沢本谷の山行は前日、南稜の下山時に決めた。
そもそも、その準備はしていた。
最終的には現地確認、テ-ルリッジからみる二ノ沢へのアプロ-チ、水量などを視認してからと考えていた。
雪渓は繋がっているし水量は多くはない。源頭部の雪渓も多くないであろうと考えた。

また二ノ沢本谷の記録を紐解いてみると、上下の滝がⅣからⅣ+というグレ-ドでありながら、ネットの記録では時にビバ-クを強いられている場面も散見。
つまり、グレ-ド以上の何かがある。
アルパイン魂が昂るのは、そういうことだ。

一方で気持ちの奥底に臆病な自分が現れるのもそういう時だ。
その彼が何か伝えようとしている。
決して油断ならない。
「上手く行った場合」は想定しない。最悪にならない手段と準備を想定する。

3:00起床。3:40頃、谷川岳慰霊碑園地を出発。
一ノ倉出合4:45

雪渓通しを進んで二ノ沢のスラブ右岸に着床。5:40

しばらくはフリ-。スラブを行く。
本来は水線通しがいいのだろうが、雪渓も残っており右岸側のスラブに引き寄せられてしまう。
上部でロ-プを3ピッチ出し、トラバ-ス気味に三俣下大滝の下に出る。7:24

出だしから時間を擁してしまったが、午後四時、最悪でも日没までにオキノ耳まで出られれば、というのが今回のスト-リ-。
さて、グレ-ドでいうなら二ノ沢本来の核心は本谷大滝(Ⅳ+)なのだが、最も油断ならないのは三俣下大滝(Ⅳ)と考えていた。
ル-ト読み。これがポイント。
ガイドでは右、左、中央と3つのル-トがあるというが、果たして。

俯瞰すると、確かに右が傾斜もねて見えるが上部で手がかりが極端にプア。
左は手がかりは多いが、立っていて脆そう。
水線突破はブロックもあるし、何しろあのスラブ滝にル-トは見いだせない。

不確定要素はあるものの、左壁に取りつく。

1ピッチ、リ-ド。
左壁を一段上がってトラバ-ス。
意外としっかりした岩も多く、充分ではないものの残置もある。
とはいえ、時に脆い。
岩棚があり、ピッチを切る。

2ピッチ、リ-ド。
岩棚からチムニ-を挟んだ向こう側の壁に移る。
足下が切れ落ちているので高度感が最高潮。
そこからカンテを回り込んでフェ-スをトラバ-ス。
そこそこ手がかりはあるが、支点がない。
小さ目のカムが使えるが、ここで落ちるとだいぶ振られるのでとにかく慎重に。
足元の安定した場所があり、ハ-ケンで支点構築。

3ピッチ、フォロ-。
後は滝へ15m位のトラバ-スと水線左を5mほど登る。
トラバ-スから最後の登りは手がかりが極端に少なくなる。
支点も腐っていて、プア。
suztさん、見事なリ-ドで突破。

落ち口上の岩場で一休み。
これはなかなかのものだ。10:34

ここで一旦ロ-プを解いて、開けたスラブを思い思いに登っていく。
やがて水線が右に回り込む。ナメ滝の様相。
濡れるのを嫌い、正面スラブに吸い込まれ登っていくが、上部が草付も交えてひどく悪い。
眼下の沢床を見下ろして、これはさすがにル-トミスを痛感。

ハ-ケン打って懸垂下降と思ったものの、岩は逆層で脆い。
力点を考えると、クラックが理想的な方向に向いていない。
しばらくクラック捜索に要し、何とか軟鋼ハ-ケンを打ち込む。

まるで鐘音のよう。
一振りごとに岩に食い込んでいくあの響き。

懸垂下降で沢床復帰。
ナメナメの水線を越えると細かいが階段状。
とはいえ、落ちると止まらなさそうなのでロ-プを出したまま。

12:16。そろそろ時間も気になる。
お互い、安定した場所で支点構築せずに肩がらみ。
4ピッチほどで本谷大滝直下に至る。

本谷大滝のル-トはこれしかないといった感じ。
岩登りというよりは沢登の範疇だ。
水線左を落ち口に向かって行く。

1ピッチ、リ-ド
下部は階段状。支点も豊富。
上部で飛沫を浴びるころから手がかりがヌメヌメで、ヌメをゴシゴシしながら行く。
ここからが奮闘。
水線左目をと考えたものの、手がかりなく水流に入る。
さすがに滝の上部真中は立っているし、ヌメっている。しかも全身びしょ濡れ。
「メガネ、外しておいてよかったなぁ。」
と軽口をついてチョット余裕を見せてみるが、実は結構イッパイイッパイ。
このあたりは支点も見いだせず、いわんや支点構築の余裕はないので、ヌメをゴシゴシしながら慎重にいく。
落ち口を乗り越すとまだまだ続くスラブ滝。
とはいえ、傾斜は落ちて階段状。

ピッチ切りでハ-ケン打ちながら思ったこと。
「あー寒っ。下山したら、ラ-メン食べてぇ-。」
時計は14:15。
なんとかビバ-クという事態は無いなと安堵。

とはいえ、時に拳ほどの自然落石が谷を落ちていく。あれにやられたらひとたまりもない。

そこからはロ-プを出したままではあったが難はない。
時に同時行動。

源頭の雪渓はその下部は薄くて乗れそうもないので、右岸スラブを行く。
上部に入って、軽アイゼンを履いて乗ってみるが、グズグズの急斜面。なかなか怖い。

結局は奥の二俣を前に右岸薮尾根に乗り、薮を漕いで東尾根に至る。
東尾根は踏み跡もあり、山頂直下も雪に乗ることなく、17:08、オキノ耳に至った。
終了点が山頂、というのは実にいい。

あとはボトボト登山道を行く。
西黒尾根の樹林帯に入ったころからヘッドライトを灯す。
七時過ぎまで歩行できるという、陽の長さに感謝。
湯檜曽川の流音が聞こえてきたら車道まであとわずか。

「やっぱ、ラ-メンだな。」
山から下りるとき、下りたら何食べようか、いつも考えてしまう。
下りることの叶わなかった御霊は何を想っているのだろう。

一ノ倉。
いつだって山行前はナ-バスになる。
そして余韻。
それはどうあっても揺るがない。

あの奮戦があったから。
これがホントの山だ、と思えるから。
あの苦闘があったから。
だから頑張れる。
そういう時もある。

sak

 


 


谷川岳・一ノ倉沢奥壁南稜

2015年06月04日 12時28分22秒 | 山行速報(アルパイン)

その昔。
深夜の一ノ倉出合駐車場。

「あれ?さっきトイレに入った人、出てこないね」
えっ・・・?

「だってほら、ヘッデンつけて歩いてたじゃない。」
ええっ?ここに着いた時から二人だけだよ。他に誰も見てないよ。

「ええっ?そんな筈ないよ。確かにいたんだから。」
だって車もテントもないじゃん。こんな深夜に。

「でもいたんだよ。確かに。」
そうだろうね。きっと何かいたんだろうね。確かに。
でも、もう気にしないで寝ることにしよう。

見える人にしか見えない、あの日の出来事。

おしまい。


【-ichinokura Blue-】

ここは特殊な場所。
いつだって山行前はナ-バスになる。

気持ちの奥底に臆病な自分がいる。
その彼が何か伝えようとしている。
そんな気がしてならないのだ。

 


2015/5/27 谷川岳・一ノ倉沢奥壁南稜

 

南稜は一ノ倉にあって人気ル-トのひとつ。
快適なリッジやフェ-スの続くオススメル-ト。
自身も勿論、大好きなル-トの一つ

パ-トナ-は一ノ倉デビュ-のsuztさん。
南稜は、一ノ倉を知る意味でとてもいい場所にある。


今日のチョイスはそういう理由が大きい。
出合から雪渓を行き、テ-ルリッジ。
衝立中央稜や中央カンテ、変チの取りつきを経由して南稜テラスで一息入れる。

天気は上々。岩の乾きもスバラシく、これ以上ないコンディション。
美味しいところは相方にリ-ドしてもらう手筈で、スタ-トはsakから。

1P、リ-ド。チムニ-手前まで。


2P、フォロ-。suztさん、順調、順調。
3P、リ-ド。フェ-スを草付まで。
4P、フォロ-。草付歩き。
5P、リ-ド。大岩を回り込む。
6P、フォロ-。先行のソロ氏に譲っていただき、馬の背リッジ途中まで。
7P、リ-ド。カンテからクラック。


8P、フォロ-。核心の最終ピッチ、suztさんフリ-で。

快適快適。
南稜には幾度となく来ているが、今日ほど快適なコンディションはない。
いやはや、何方様のお蔭でございましょう?

終了点でゆったりしていると、ヘリが近づいてきてホバリング。
ん?遭難?
と思ったら、警察ヘリの操縦訓練だったらしい。
というのは後に知ることになったのだが。

6ルンゼの懸垂下降も順調にこなし、南稜テラス着。
何と順調なことか。

ボトボト下れば早々に一ノ倉出合。
ココから振り返る一ノ倉の岩壁はいつだって、登る前より少しだけカッコ良く見える。

そして来たるべき明日。
おそらく今日のようには行くまい。

ロ-プウェイ駐車場のぼんやりした灯りの下。
念入りに幾つかの記録を頭に叩き込む。


つづく


sak