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おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

いつかどこかで(29)吉野の君に逢いたくて〈二〉

2012年04月17日 00時50分28秒 | いつかどこかで(雑記)

ねがはくは 花のもとにて 春死なむ
そのきさらぎの 望月の頃 
(西行法師)

私は毎年この時期になると、何かにかこつけては何処かしらでこの歌を書いているような気がします。
「願うことなら、桜の花のもとで春に死にたいものだ。あの(釈迦が涅槃に入ったという)如月の満月の頃に。」
如月とは二月を言いますが、この場合は今の新暦でいうと四月あたり。ちょうど今頃ですね。

西行というと、月や花を愛でる歌がやたら多いのですが、何故か私はこの歌が特に好きなんですよね。
西行は裕福な武家に生まれ育ったそうですが、わずか23歳で出家して俗世界を捨て旅に出てしまいます。
その長い旅の中で、一時は吉野の山に暮していました。
今回の旅行で吉野の山を訪れたところ、「西行庵」と呼ばれるそこはかなり山の上のほうでした。
私たちは時間の都合で残念ながら中千本からひき返すことになりましたが、それでも西行法師が愛でた吉野の桜が見られて本当に良かったです。

それはそうと、西行って美男子だったんですってね。
それで、どうして将来有望でハンサムだった彼が、そのように若くして出家したのかというと、一説には「友人の死に人生の無常を感じた」とかも言われていますが、「年上のさる高貴な女性に許されぬ恋をしたため」という説もあります。
なので、「西行は花(桜)に恋しい人を重ねていた」という解釈の仕方もあるくらいで、改めてそう思いながら西行の歌を味わってみると、西行の詠む花の歌は思いのほかに切なくて、なかなかに断ち切りがたい恋の歌とも捉えらることもできます。
文学は原作者の手から離れた瞬間に、受け取り手の数だけ無限にパラレルワールドが生まれるものだなぁと、最近そんなふうに思ったりもして。

な~んて話はともかくとして(笑)

私らはこの時期の吉野の山を甘くみていました!
旅行ガイドブックを見て、吉野は奈良と近いとばかり思っていたんですよ。だいたい電車で一時間くらいかな?とか。
ところが、まるで朝の通勤ラッシュほどに混雑した車内で立ちっぱなしの二時間!
吉野の駅に着いたころには既に足が痛くなりました。
もうちょっと早くにホテルを出れば良かったんですよね。途中でトイレ行列に並んだりしちゃったせいもあって、吉野駅到着が昼過ぎになってしまいました。

そして吉野の山は人、人、人。
う~ん、花見の季節だけに、さすがに行楽客でいっぱいでした。
山道に人がいっぱいというのは、東京でも高尾山もそんな感じですが、吉野山の道はもっとずっと広く、お土産屋さんもたくさんあって賑やかです。
なので、そのお土産の品を見たり買ったりする人達がぞろぞろとゆっくり歩くものですから、なかなか先に登れません。
友達とついうっかり離れてしまうと迷子になってしまいそう。
山の写真を撮りたいときにも、互いに声を掛け合い、離れ離れにならないように気を使いました。
日本人って、ほんとうに花見が好きよね~! なんて思っていたら、外国の人も結構いたし。
ある程度予想していたこととはいえ、予想以上に人が多くかったので、帰りの電車の混雑を心配して予定よりも早めに下山したくらいです。

なので、上千本まで行けずに中千本あたりで帰ってきちゃったんですけどね、でもちょうどそのあたりが一番の見ごろだったかもしれません。
その「千本」というのは、「ひと目で桜が千本は見える」という意味からきています。
一面が桜の花に覆われた山は、その淡い色合いにまるで煙るようにも見えました。
その淡さゆえにか、華やかというよりは、むしろ大人しやかな美しさ。
夢に見た、いにしえの景色が今に広がり、「とうとうここまで来たんだわ!」という感慨もひとしおです。

けれども、いかんせんこのもの凄い人の数!
それにやっぱり葛餅や柿の葉寿司、奈良漬とかじゃこの佃煮とか桜の塩漬けとかの土産品も見たいしで、なかなか情緒だの風情だのに浸っている暇もありませんでしたが、この桜の風景は胸にしっかりと焼きつきました。
たぶんきっと、この先何度も思い出すうち、この桜の景色に付け足される何がしかが心に生まれるのだろうという気もします。

綺麗な景色を見て、美味しいものもいっぱい食べたし、仲良しの友達と行ったこの旅は本当に楽しかったです!!




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