今宵も劇場でお会いしましょう!

おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

スガシカオ LIVE TOUR「やるしかねーだろ!?2013」Zepp DiverCity TOKYO 9/28

2013年09月29日 16時06分40秒 | ライブ/コンサート

2013/09/28 @Zepp DiverCity TOKYO
SUGA SHIKAO LIVE TOUR「やるしかねーだろ!?2013」
【出演】 スガシカオ(ヴォーカル、ギター)
坂本竜太(バンドマスター、ベース)/岸田容男(ドラムス)/林田 "pochi" 裕一(キーボード)/大滝裕子(コーラス)
ゲスト:JUON(ギター)/Fire Horns (サックス、トランペット、トロンボーン)


ファンクの宇宙へ ぶっ飛びましたーー

踊り狂って、叫び狂って、一緒に歌いながら、笑いながら、はじけ狂った、Tokyo二日目の夜

スニーカーを履いていったのは正解だったわ!
前日のプレミアムアダルト席は仕事帰りにはちょうど良かったものの、や~っぱ、みんなして、とんでもなく喚声を上げながら踊り狂える、乱痴気騒ぎの一階フロアのほうが断然に燃えるものっ!

やばい!
まじ、やばかったです!

スガシカオも、オーディエンスのみんなも!
とにかく凄かった!

う、わ~っ、
いったい何から書けばいいんでしょう・・・

…って、昨日の夜中に途中まで書いたんですけどね、それもお酒を飲まずに。
なのに、朝に読み返したら、しょーもないテンションで、何時にもましてとっ散らかした文だったので、さくっと削除しましたが

…え~と、途中で確か、私は涙が溢れたんですけど。
ガンガンに踊りながら、笑いながら、気づいたら涙で頬が濡れている
あれは・・・そうだ! 
「Loveless」と「Happy Birthday」ね。 凄く好きな歌、というか、きゅん!とツボに入る歌なので。
勝手に「私のためにありがとう」とか言いたくなりました。 ぜんぜん誕生日じゃないのに(笑)

そんなふうに、泣きながら踊っていようが、笑いながら飛び跳ねていようが、歌いながら絶叫していようが、もう、何してたって、スガシカオの歌がオーディエンスの全員をまるごとひっくるめて音楽と一体にしてくれたような、そういうライブでした。

なんといっても、ファンクにどっぷり入り込んだ、「したくてたまらない」辺りからの盛り上がりは、本当にやばかったです。
この歌は、お馬鹿すぎて笑える~!

「これはライブでやったら、きっと盛り上がるだろうな~」と期待していたら、想像以上に盛り上がりました!
この曲は「俺たち★ファンクファイヤー」と共に、シカオ・ファンクの定番になりそうです。
すごく盛り上がるもの。

ああ、そうそう、この歌のときにはFire Hornsのラッパ隊が登場していて、ステージが一層に熱く、面白いことになっていました。
二日目は下手(しもて)の前あたりを陣取ったのは、前日に見たラッパ隊の三人がとてもチャーミングだったので
「91時91分」とか、三人の手振りの真似をしながら踊ると楽しかったですよ~  
前にいると、ブラスの演奏が生で直撃してくれるのも嬉しいです。

楽器演奏といえば、二本のギターがエキサイティング!
ゲストのJUONさん、カッコよかった~!
シカオちゃんのギターも、凄くカッコいい!
岸田さんのドラム“祭り“では私も興奮して、昨日もらったプレミアム・グッズのタオルをぐるぐると振り回して、本当に楽しかったし、これも会場が湧きあがりました!
あ、もちろん、「いつものメンバー」の三人のコーナーも聴かせてくれたし…

と、そんなこんなを一曲ごとに書くのって、もう記憶がぐちゃぐちゃで難しいんですけど

この日のライブは、11月17日(日)にWOWOWで放送されるそうで、見られる環境の人はぜひ見てほしい!
なにせ、カメラがなんと!16台も入っていたとか! 16台ですよ!16台!! 
演劇のゲキ×シネが18台だっつーのに、歌のライブに、16台も!(←しつこい)
(ん?あとでブログをみたら18台と書いてある。ステージでは16台って言ってたけど・・・?)
なので、シカオちゃんは、「(放送があるので)いつもの三割り増しで」盛り上がりをお願いして笑わせてくれましたが、お願いされなくても自然に盛り上がっていた場内が、どんな風に映像になるのか・・・?
このライブに残念ながら行けなかった人、一階席でステージ中央だけに集中していた人には見てほしいです。
前回にも書いたけど、なにせこのライブ、照明もカッコよくて、二階から見た時に素敵だったし。

特に、新曲の「赤い実」は、配信された手作りの音も良いけれど、バックバンドを背にしたライブ用のアレンジで聞くと、ものすごくエキサイティングでした!
飛び交う赤い照明も妖しくて、ドラマチック!
ドラマチックといえば、「アイタイ」も奥行きが増して、気が遠くなるほど凄かったし。
ファンクにがっつり入ってからこの辺りは、もうほとんど狂気。

ピンクのギターが登場したら、「これからエッチな歌を歌います!」という、ファン人気の、あの歌!
そう、私が密かに「集団公開エッチソング」と呼んでいる(って、おい!)「イジメテミタイ」では、かき鳴らしたギターを客席に降ろしたり。
みんなも、踊って歌って叫んで、超ハイテンション!!

とか、一曲ごとの感想はとても全部書ききれないので、この日のMCについて記憶に残っていたのを書き留めておきますが・・・・
2011年から独立してインディーズになったスガシカオですが、インディーズでまだ「やりたい事が残っている」そうで、もう少しだけこのままで。そして、来年にはまたメジャーになって、デビュー20周年には私たちの「まだ知らない世界」へ連れて行ってくれるんだとか! 
すっごく楽しみ! わくわくしちゃいますねっ!
それから、「歌の旨い奴はたくさんいるけど」、自分が目指すのはそういうんじゃなくて、確か、「スガシカオだ!」と叫んでいたような・・・?(←記憶があやふや)つまり、「自分の道を行くぜ!」という意味の雄叫(おたけ)びもあり、「20周年に向けてメジャーで頂点目指す」とも言ってました。
(追記:正確には「20周年に向けて、みたこともない景色をみんなと観たいとおもっている。」とか、「俺は俺になりたいんだ。」だったみたい ちゃんとしたレポはこちらでどうぞ→http://natalie.mu/music/news/100334

シカオちゃんが「俺の名前を呼んでくれ!」というシーンもあり、私も初めてシカオ・コールを叫んでみましたが、自分の叫び声なんかぜんぜん聞こえなかったくらい、ずっと大歓声が飛び交いつづけた凄いライブでした!

【セットリスト】

Opening Track  
ぼくは浮かない       
ドキドキしちゃう)       
はじまりの日
Happy Birth Day
コノユビトマレ
傷口
LOVELESS
Festival
ひとりごと
sofa
そろそろいかなくちゃ
フォノスコープ
Re:you
したくてたまらない
赤い実
イジメテミタイ
91時91分
アイタイ
19才

午後のパレード
Party People
Progress

  


スガシカオ LIVE TOUR「やるしかねーだろ!?2013」Zepp DiverCity TOKYO 9/27

2013年09月28日 02時28分37秒 | ライブ/コンサート

2013/09/27 @Zepp DiverCity(Tokyo)
行ってきました、スガシカオ2013年ライブ!「やるしかねーだろ!?」



このライブは、やばい!
まじ、やばかったです!

ラッキーにも二夜連続で参加できることになったので、詳しい話は次にしますが、今宵はプレミアムアダルト席だったので、そのご報告だけ。



プレミアム席専用のグッズは、写真のうち白のマフラータオルと紅茶(アールグレイ)です。
場内と通販で販売している公式グッズのタオルは黒のみなので、白はプレミアム席に座った人だけの特別なものです。
プレミアム席はいち早く会場入りができるので、ドリンクや会場販売のグッズもらくらく買えて、私はグレーのツアーTシャツと赤いリストバンドを買いました。

Tシャツの女性用はSとMがあって、私はMでちょうど良かったです。
Sが7号から9号の人、Mが9号から11号までの人用ってところかしら。
(レディースでなく、男性用のはMとLがあります。女性でもゆったりしたのが好きな方はこちらで。)

二階席はトイレも空いているし、何よりも開演前の一時間を座って待っていられるので、仕事帰りで疲れていても楽ちんでした。
椅子があるから荷物が下に置けてロッカーを使う必要もないし、足も踏まれないのが良いところ。
何よりも照明がすっごく綺麗に見えました!
特に新曲の「赤い実」「アイタイ」は歌も凄かったけど、照明が素敵で気が遠くなりそう!
椅子席でもバラード以外はスタンディングで盛り上がりました。

明日(ってもう、今日か)は一階のスタンディング席ですが、入場は一番遅いグループなので最後のあたりで入ります。
シカオちゃんは、「後ろ、聞こえるか~!」とか後方や二階席を気にしてくれていましたが、もちろん聞こえますから大丈夫。

それにしても、二階から見ていると一階の前のほうは、とんでもないことになってました!!
実は私、去年のライブではその前のほうのど真ん中で、モッシュ狂乱のさ中にいたんですよね~
あれは頭おかしくなるくらい、マジ盛り上がるんだけど、背が低いから酸欠っぽくなるんです。
明日はどうなることやら・・・とりあえず、スニーカーとデニムで行こうかな。

え~、ちょっとテンション低めに書いているのは、家に帰ってから気持ちよく飲みすぎて、逆に気持ち悪くなってきたので
やばすぎる、とんでもないライブの話は次回に。


映画「許されざる者」

2013年09月15日 22時33分49秒 | 映画

【監督】李相日
【出演】渡辺謙/佐藤浩市/柄本明/
柳楽優弥/忽那汐里/小池栄子/國村隼/小澤征悦/三浦貴大/滝藤賢一/近藤芳正

「人は、どこまで許されるのか。」

と、フライヤーに書いてありますが・・・

では、

誰に?
何を、許されたいというのか。

この映画には、愛とか恋とか、通り一遍の友情とかはない。
ましてや、「夢を持とう」だとか、「希望を持って生きていこう」とか、「人は一人で生きているのではない」とか、そういった今流行のメッセージもなく、侍だとか日本人の美徳はいかに?とか、生きることや、善と悪への問いかけすらもなく・・・

それは、いいのよ、
別に、この映画にそれを期待して行ってないから。

それじゃ、私が観たかったのは何か、っていうと?

人の持つ、ぬぐいきれない「業」とか、「罪」とか。
しかし、どこかで人は、許されること、救われることを望んでいるのではないか?
というか、それが前提なのか。
で、なければ「それがどーした、誰に許されるもなにも、自分が納得している人生ならば、それで良いのだ」、となり、苦しみもないわけだし、この題名にもならないわけで・・・

ね?

う~ん・・・

ああ、そうそう、この映画はクリント・イーストウッドのハリウッド映画「許されざる者」のリメイクだそう。
私は観ていないので比べられないけど、まず、西部劇のアメリカと、明治初期の日本じゃ、「賞金稼ぎ」のイメージが違う。
それに、アメリカやヨーロッパの人が思う「許されたい」相手って、きっと最終的には神様なんだろうな。

「神よ、我を許したまえ」

しかし、神にさえも「許されざる者」であるのなら、その絶望はいかばかり。
ましてやこの日本版には、神も仏もないし、これといった哲学もなく、許すかどうかを裁くのは・・・たぶん、自分自身?

ああ、なるほど。
絶望だなぁ、この話。
唯一、「別の生き方がある」と気づいたのが救いだったのに、結局は別の生き方が出来なかった男の話だもの。
この男は、迷って、迷って、迷いの先に、刀を抜く言い訳が欲しかったんじゃないかって、そんな気もした。

まあ、そういう意味でも、この主人公は「許されざる者」というよりは、「救われざる者」って感じだったけど。
この主人公の明日って、どんな明日だろう。 あの業を背負う限りは、救われぬ修羅の明日が続くのだろう。

期待したような涙もなく、期待したほどの余韻もない映画ではあったけれど、北海道の美しくも厳しい自然と、名優たちのがっつりとした芝居が観られた。
たまに、たまらなくこういう演技が観たくなるので、その意味で良かったと思う。
映画が終わるまで、「この人、誰?」とわからなかった、柳楽優弥くんも含めてね。

この映画は始まったばかり。
ご興味のある方は、ぜひご自分の目で。

  


映画「少年H」

2013年09月04日 18時33分14秒 | 映画

【原作】「少年H」妹尾河童
【監督】降旗康男
【出演】妹尾盛夫:水谷豊/妹尾敏子:伊藤蘭/妹尾肇:吉岡竜輝/
妹尾好子:花田優里音/うどん屋の兄ちゃん:小栗旬/下山幸吉(オトコ姉ちゃん):早乙女太一/田森教官:原田泰造/久角教官:佐々木蔵之介/吉村さん:國村隼/柴田さん:岸部一徳

雨が降っては止んで晴れ、また降り出してはすぐに晴れる・・・そんな天気の今日。
今年の夏がすっかりと終わってしまう前に、必ず観ようと思った映画、「少年H」を観てきました。

  

映像も無いエンディングロールになってから、物語をかみ締めるように静かに涙が流れました。
良き映画を観せてもらい、降旗康男監督に「ありがとうございました」と言いたくなりました。

こういう作品を観ると、「やっぱり映画って素晴らしい」と思います。
何といっても、映画は日本全国で同じものが観られますから。
レディース・ディやレイトショー、映画の日や各劇場のポイントなどを使えば、大人でもチケット代は1000円以下になりますし、DVDも良いけれど、やはり劇場に足を運びたいものです。

などと、今さらですけど。
この映画は老若男女にお勧めです。やはり「すべての人の物語」だと思いますので。

H少年の父親(水谷豊さん)は、この時代に本当にこんなお父さんでいられたのが信じられないくらいでした。
何ていうのでしょう? 素敵とか、立派とか・・・ちょっとそういう形容で表しては違うというか、足りないような気がしますが、とにかくこのお父さんと、その家族、少年Hがあの戦禍を生き残ってくれて良かったと思いました。
そして、この時代を描きながら、今にも通じる大切なメッセージを伝えてくれたことに感謝したいです。

という私は、いかにも原作を読んでなかったのがバレバレ(笑)

原作は妹尾河童さんの大ベストセラー小説なので、映画館に行けない人は小説をどうぞ。
なので、詳しいストーリーなどは書きませんけど、やっぱり、借り物ではない自分の目で見て、感じて、考えることが大切ですよね~。

ところで、この物語の舞台は神戸です。
私はつい先日に神戸に行ったばかりで、その時に映画のロケに使われた異人館「萌黄の館」を見てきました。


え~、実を言えば私はここの写真を撮ってこなかったので、この写真はネットで拾ったものです
この建物でどんなシーンがあったかというと、少年Hのお父さんが外国人のスーツを仕立てるために、採寸に来るんです。
お父さんは紳士服の仕立て屋さんなんですよね。
ですから、この時代だというのに、水谷豊さんはいつもパリッとした仕立ての良い背広を着ていて、すご~く素敵でした。
途中で国民服になった少年の服も、妹の服やお母さんのブラウスやコートも、みんなきちんと体に合っていて、アイロンが当てられていたのは、この家族ならではでしょうね。
手作りの服って、愛情がこもっていて良いですね~!

ついでに旅先で見てきた神戸の街の話をしますと、あの阪神・淡路大震災がまるで嘘のように甦ったように見えました。
もちろん、私たち観光客の見えない部分では、まだ痛みや苦しみの傷は残り、癒すことのできない悲しみもあるのでしょうが、よくぞこの街をここまで建て直したものだと、ここに希望の光を見たように思いました。

ですが、この映画を観ると、大震災だけでなく、戦争当時の空襲もまた酷い有様だったんですね。
広島を旅した時にも思いましたが、苦しい時代にも決して希望の光を絶やさず、必死に立ち上がって逞しくく生きて復興してきた名も無き多くの人々に、心から頭が下がります。

そのようなことは、私のような者が書くと、どうも薄っぺらくて申し訳ないのですが、だから「映画を観て下さい」と言うしかないですね。
この映画に限らず、いろんな作品の、それぞれの視点、それぞれのアプローチで届けられるメッセージ、問いかけられたものに、いつまでも敏感でいなきゃと思います。

滅んでは甦り、また滅ぼされても必ず甦る、人の持つ力を信じて、今のこの国に生きる私たちに、これから何ができるのか。
自分の目で見て、考えなくては・・・

「恥ずかしい人間になっとったら、あかんよ」

少年Hのお父さんの言葉が、いつまでも耳に残りました。


映画「風立ちぬ」

2013年09月03日 03時15分07秒 | 映画

※この記事にはネタバレが含まれますので、ご注意ください。

【監督】原作
【脚本】宮崎駿
【音楽】久石譲
【主題歌】 荒井由実
【声の出演】庵野秀明/瀧本美織/西島秀俊/西村雅彦/スティーブン・アルパート/風間杜夫/竹下景子/國村隼/志田未来/大竹しのぶ/野村萬斎/他


ベストではないが、ベターだ。

この物語の人生と恋、いくつかのシーン、物議をかもし出したアレコレ、そして、この映画そのものに、そう思いました。

  

何度も観たいとは思いませんが、一度は観ておいて良かったです。
大好きとまでは言いませんが、わりと好きです。
そういう映画だったと思います。

主人公のモデルは実在した人物で、ゼロ戦の設計者であった堀越二郎という人です。
彼は少年の頃から、美しい飛行機を造るのが夢でした。
たとえば、ある小説家が「書くことは生きること」と言ったように、また、ある歌手が「歌うことは生きること」と言うように、飛行機を設計して夢を追いかけることが堀越二郎にとっては生きることだったのでしょうね。

「風立ちぬ、いざ生きめやも」 (風が吹いた、さあ生きねば)

どうしてもやりたい事や、夢があったとして、それがベストな状況であったり、ベストな結果で実現出来るに越したことはないです。
でも、往々にしてそうは出来ないのが現実ですよね。
ならば、出来る限りベターであろうとすること。
たとえベストは不可能であっても、その時々で、出来うる限りのベターな選択をし続けているのなら、それが他の誰に反対されようが、文句を言われようが、人は悔いなく自分の人生を生きているという実感が持てるのかもしれません。

たとえば、
当時は不治の病であった結核を患う菜穂子と、仕事で忙しく看病もできない二郎の二人が、あのように早急に結婚をしたのはベストだったのか。
いくら飛行機を造るのが夢と言っても、それが戦争に利用されるのは、二郎の夢の実現としてベストなことなのか。
菜穂子が突然に山の病院に戻ってしまったのはベストだったのか。
とか、

たとえば、
声優ではなくて、素人の庵野秀明さんの起用は、この作品にとってベストなのか。
今の時代に、喫煙のシーンをあのように多用したのはベストだったのか。

・・・とか。

何をもってベストと思うかどうかはその人次第とは思いますが、その時々で登場人物たちが、そしてこの作品のあれこれが、ベストだったかと思うと、私にはそう思えませんでした。
でも、ベターだったかもしれない。

そうそう、その喫煙のシーンなんですが。
「病床の妻のすぐそばで、タバコを吸うなんてもっての外だ」という意見は当然あるでしょうね。
今の時代はあの当時のように喫煙に関して寛容ではないし、それどころか喫煙の害が認知された今は、喫煙者の勝手な甘えに対しての世間の風当たりは当然に厳しいです。
それを宮崎監督が知らないはずがありませんよね?

ならば、何故にわざわざあのようなシーンを映画に取り入れたのでしょう?
そう、私には「わざわざ」としか思えないです。

あのシーンは、寝ている妻に灯りが眩しくないようにと気遣いながらも、夫が持ち帰った仕事を夜遅くまで続ける新婚のシーンでした。
離れている二郎に菜穂子は言うんですよね。「もっとそばに来て」と。
もっと、近くに。そして、仕事をしている貴方の顔が好きだから、そのままずっと手を握っていてと。
だから二郎は左手に妻の手を握り、右手で書き物をしながら右手だけで計算尺を使って仕事を続けます。
で、その静かな時間の途中で、「困った、ちょっと手を離してもいいかな? タバコが吸いたくなった」と言います。
すると、妻は手をつないだままでいたいから、このままここでタバコを吸ってほしいと言うんですよ。
この時代の多くの男性がそうであったように、彼がニコチン中毒というのは、それまでの数々のシーンで説明済みでしたが、それがあまりにしつこくて不必要にも思えたのですが、このシーンの処に来たら、宮崎監督はこれを描きたいために「わざわざ」そうしたのかと深読みしたくなりました。

それで私、このシーンって、喫煙そのものは論外にするとして、物語の二人だけを見るならば、わりと好きなシーンだったりするんですよね。
この場合、菜穂子が無茶を言ったのも、二郎があのままタバコを吸ったのも、それぞれにベストではなかったかもしれません。
でも、たとえ誰が文句を言おうが、二人にとってはベターな選択で、切ないつかの間の、幸せに満ち足りた時間を過ごしていたように見えました。

ほかの人にはわからない・・・ けれど幸せ。


どんな映画も、どのような作品もそうだけど、どの人生もまた、他人からは賛否両論で、全ての人にとってベストに見えるものなんて、ないのかも。
様々な障害や困難、失意や予期せぬ不運に合ってもなお、その中で自分の思うベターな生き方ができれば良いと思いました。

この映画の背景には暗くて辛いものがありましたが、それでも最後には爽やかな印象が残りました。