天野喜孝・弓彦「ファンタジーアート展2020」新宿アイランド 2020/08/11
この絵、「桜姫」に魅せられて、いつまでも長々と立ち止まる私に、会場のスタッフの方はわざわざ絵を外してくださり、ライトをあてて近くでじっくりと見せてくださいました。
椅子に座りまじまじと眺めながら、スタッフの方といろいろお話ししてると、やがて、こう聞かれます。
「この絵がもし自分のものになったとしたら、家のどこに飾りたいですか?」
この絵は一点物の特注品で、特別に貸し出されて展示されたものですから、全国で同時に開催される展覧会の、全ての会場で見られるわけではないそうです。他の作品のように買えるような作品でもありません。
でも、もし…もしも、この絵が手に入るとしたら……
私はちょっと考えて、言いました。
「いらないです、欲しくないです。」
こんな凄い作品を、うちなどに置いてはいけない気がする、私のような者が持ってはいけないような気がしたので。
あまりにキッパリと言い過ぎたので、スタッフの方から「珍しい方ですね」と鼻白むように言われてしまいました。
しまった! せっかく見せてくださったのに、大人気のない失礼な言い方をしてしまったかも?
たぶん、こういう会話から「では、他の絵はどうですか?もっとお安く手に入りますよ」なんて発展して販売に続くのでしょうし、たとえ買えなくても、もうちょっと言い様があったかも。だってこれは無料の展示会であり、同時に販売会でもあるのだもの。
コロナ禍の中、みんな頑張っているのに、なんか無駄なお仕事させてしまって申し訳ない気分。
ああ、これに限らず、どこに行っても、何を、誰を、どれだけ好きになっても、ろくにお金にならず、Twitterで気の利いた呟きもせず、宣伝もできない、使えないお客さんの私……。
とか、思ってプチ落ち込んだ、令和2年の、ある夏の日。
そう、だからこれは、もう4か月も前のお話。
「ファンタジーアート展」は今年に入ってからすぐ、全国で開催されていましたが、春ごろには外出自粛していたので、夏になってようやく見られました。
で、なんで今になってこれを書いているのかというと、今日ふと、「桜姫を私が飾るとしたらこのブログしかないだろう」と思いついたので(笑)
私はこの絵をプリントされたポスターくらいは買ってきましたが、まあでも、本物は全然違います!
モデルは一目でわかる!歌舞伎の玉三郎さんです。
透き通るような白い肌に唇の鮮やかな赤、うなじから肩にかけての何とも言えない色気に凄みを感じます。流された瞳が妖艶です。
この絵は上質の黒い漆(うるし)の上に、特別な手法で版画されており(といってもハイテクに乗せるのだと思う)、桜姫の髪などに舞い散る小さな桜の花びらは螺鈿(らでん)です。
着物の柄の金は、金箔をただ貼るのではなく、丁寧に何度も叩き込んであるそうですし、とにかく、どこもかしこも大勢の方達の手により、たくさんの技術が施されているのだそうです。そのため、深く艶やかな漆黒も、上品で豪奢な金も、光の加減で色がさざめくように変化する螺鈿の輝きも、なんとも深い味わいで、この妖しい美しさは実物を見た方でしかわからないと思います。
やっぱり、本物を、生で、自分のこの目で見なきゃ!
そして、私が何か作品を好きになるということは、それに「魂を持っていかれる」ことではなく、逆に「魂を分けていただき自分に取り込む」ことなのだと、改めて思ったのでした。
欲しいと思わないでも、愛した瞬間に、ある意味すでに手に入れてしまっているのだから……。(勝手に言わせておいてください)
ところで、天野喜孝さんのイラストといえば、有名なのは何と言っても「ファイナルファンタジー」でしょうか。私もⅣぐらいまでですが、ゲームやりましたよ!
幻想的だし、どのキャラも魅力的ですよね!
展示会の会場は、ゲームファンと思わしき男性もたくさんいらしてました。
あと、有名なのはタイムボカンもそうですし、小説の挿絵では「吸血鬼ハンターD」とか「アルスラーン戦記」とか多数です。
だけど、私が好きになったきっかけは、何たって栗本薫さんの小説「グイン・サーガ」の表紙と挿絵。
この二冊の写真はうちの本棚にある文庫本ですけど、このグインとリンダにも展示会で会えました。
これらは「桜姫」と違って1点物ではないので、たしか販売していたと思います。
実物はリンダ(白虹)のほうがサイズが大きいので値段は高かったですが、まあそんなに驚くようなスゴい高価ってこともないと思います。リトグラフなので。どうやらローンも組めそうです。
とか言って、絵を買わない私は、ちょっとしたグッズ・コーナーもあるので、桜姫のポスターの他、卓上カレンダーとかの細々としたグッズをいくつか買いました。
あと、ネットで予約すると記念のオリジナルクリアファイル(またはマウスパッド)がもらえます。
この展覧会は、今は大分や福岡で開催中のようです。
来月(2021年1月6日〜12日)にもまた東京に来るそうで、新宿アイランドなら職場から歩いてすぐだし、仕事帰りにでもできればもう一度行きたいです。
(↓ファンタジーアート展HP)
https://artvivant-fantasyart.net/