今宵も劇場でお会いしましょう!

おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

映画「大いなる沈黙へ」

2014年09月22日 23時58分57秒 | 映画

 「静寂の音が、聞きたい」

確か一年前に、そう書いた。
その少し前から耳鳴りが続くせいでもあったが、それだけでもない。

2014/09/23 「大いなる沈黙」 
【監督・脚本・撮影・編集】フィリップ・グレーニング

「カトリック教会の中でも特に戒律が厳しいカルトジオ会に属するフランスの男子修道院、グランド・シャルトルーズの内部を、初めて詳細にとらえたドキュメンタリー。ドイツ人監督フィリップ・グレーニングが1984年に撮影を申請、それから16年の歳月を経て許可がおり、音楽・ナレーション・照明なしという条件のもと、監督ひとりだけが中に入ることを許された。」
 

この映画はどこの映画館でも上演しているような、そういう大人気のエンターテイメント作品ではない。
誰もが観るに向いているとも思えない。
一番向いてないのは子どもだろう。
次に向いていないのは、疲れている人、睡眠不足の人かもしれない。
それからもちろん、はなからこういうものに興味のない人だ。
これを観るにあたり、日々に疲れている私は前日にいつもより早く就寝し、映画を観る前にコーヒーを飲み、ご丁寧に眠気防止の錠剤まで飲んだ。
そうまでしてでも観たかった。

自然の中に静かに立つ修道院の内外と、そこでひたすら祈りを捧げ生活する修道士達の姿が延々と流れる三時間弱。
彼らの一日のほとんどは沈黙で過ごされる。
ストーリーも音楽もない、台詞さえもないドキュメンタリー映画だ。

けれども全く音がないわけではない。
風や木々の揺れる音、小さな虫の羽の音、修道士の頭をまるめるバリカンの機械音、布地に入れる鋏の音や、野菜を刻む音・・・
日常で何気なく聞き流す音の、なんと豊かなことか。
そして、神に捧げる詠唱の声。
静謐であるがゆえに耳と心が研ぎ澄まされていく。
淡々とした時の流れを感じながら、少しも退屈ではなかった。
観る前に「三時間は長いだろう」と思ったが、何故か終盤に近づくにつれて「もっとずっと観ていたい」と、この清浄な時間の終わりが惜しまれた。

この映画のHPには、こう書いてある。

「音がないからこそ、聴こえてくるものがある。
言葉がないからこそ、見えてくるものがある。」

沈黙の中で、修道士は、そして私は何を聴き、何を見たか・・・

最初と最後に聖書からの引用がある。

「主の前で大風が起こり、山を裂き、岩を砕いたが、主はおられなかった。
風のあと、地震が起こったが主はおられなかった。
地震の後に火が起こった。しかし火の中にも主はおられなかった。
火の後に、静かなやさしいさざめきがあった」

魂に聖域があり、それを見出し呼ぶ者だけに、神は現れるという。
全身全霊で耳を傾ける者には、神の声が聞こえるらしい。
それは、無宗教の私にとって、禅と同じように思われた。
神も仏も同じようだ、と言ったら双方に叱られるだろうか。
けれども、いずれにしても、欲のない清らかな魂こそへ慈悲の救いがあるに違いない

最後のほうで静かに語りだした盲目の修道士は、「死は怖くない」と言った。
死は神の元へ行くことだからだ。
そもそも宗教の興りとは、死の苦しみや恐れから逃れるために始まったと、聞いたことがある。
修行を極めた修道士に死の恐れがないのは、当然といえば当然だ。
彼は神の「静かなささやき」を聞くのだろう。

俗世から離れ、長い年月を自然と共にゆっくりと静かに老いてゆく彼らが、少しだけ羨ましかった。
興味のない人へ、この淡々とした映画のどこが良いのか説明するには難しいが、私は観て本当に良かった。
物語も音楽もないこの映画を、いつかもう一度観てみたい。
 

静寂と旅する映画「大いなる沈黙へ」
  

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映画「STAND BY ME ドラえもん」

2014年09月15日 04時15分14秒 | 映画

2014/09/14 「STAND BY ME ドラえもん」

この連休は立て続けに映画を観ていますが・・・
ドラえもんの映画って、もしかして(もしかしなくても)映画館で観たのは初めてです。
今までずっと、このアニメはテレビで観るものだと思っていたので。

んで、なんでこれだけ映画館に行ったかというとですね~、
8月に行われた「J-WAVE LIVE 2000+14」で、出演者のひとりだった秦基博さんが、この映画の主題歌「ひまわりの約束」を歌ってくれたんです。
その日に私と同行してくれた二人が、ちょうどそこに来る前にこの映画を観てきたとかで、秦さんの歌を生で聴けたことに感激して、「今度のドラえもんは凄く泣けた、感動したよ~!ぜひ観に行きなよ~!」とか言うんで・・・

ならば、それじゃあ映画を観て、私「もひまわりの約束」をよりいっそう感動的に聴いてみようじゃないの!
ってな、そんな邪道な目的で行ったわけ。
もちろん、そのためには先ず映画に感動しなくちゃダメなんですけど。 

うん、そりゃ~、私も泣いた。二回くらいかな? ちょっとだけ。
そして 秦基博さんの「ひまわりの約束」はやっぱり良い歌だな~って思いました。

めでたし、めでたし。 

  

なんて、それだけじゃ、まったく感想になってない(笑)

でもね~、映画館から帰ってきてから検索してみると、この映画の感想が賛否両論で、それぞれに読み応えがあって面白いのなんの。
それを書いているのは、たいがい30代とか40代くらいの大人、それも男性が多いのね。
小学館の学年誌「小学一年生」あたりから読み始めてずっと、コロコロコミックとかアニメの「ドラえもん」で育った人達だから、思い入れも深いんでしょうね。
「いい大人なのに、不覚にも泣いてしまった」という人もいれば、「原作への冒涜だ!」って怒っている人もいて、それぞれの心情もわかるよ!ってなくらい、どの記事もなかなかに読み応えがあり、どちらにしても「ドラえもんは本当に愛されているんだなぁ~」とつくづくそう思いました。

私としては、「突っ込みどころはあるけれど、感動しどころは素直に感動させてもらったし、ドラえもんの始まりや終わり(?)が見られて面白かったです。」という感想。
アニメは、やっぱり子供が楽しければいいのだと思う。
だから大人の感想なんて、勝手に言わせておけばいいのよ。どっちにしても言うのが趣味なんだから。

ああ、だけと私もひとつだけ勝手に言わせてもらえるならば・・・

この映画に限らず、舞台関係のいわゆるエンターテイメント全般に対して近頃ちらちらと思うことだけど、
物語で一番に伝えたいことや結論を、最後のほうで出演者に台詞にしてそのまま言わせてしまうのって、残念なことじゃないかしら?
結局言葉で説明してしまったら、長い時間をかけて物語で見せている意味がないもの。
大衆をもっと信じて、感想を任せてくれるような、そういう脚本のほうが私は好きです。

ああ、そういえば、去年観た、ピーター・ブルックの舞台「ザ・スーツ」の感想って、ずるずると書いてなかったか。

ピーター・ブルックの演劇を見てもらいたいな、去年や今年に観たあの(って、どの?)演出家や脚本家たちにも。
観客の想像力や理解力を信頼し、それらをちゃんと引き出す力量を備えてさえいれば、深く受け止めたい人には深く、浅く楽しみたい人には浅く、たとえそれぞれに違う感想になろうとも、観客はちゃんと自分なりに受け止められるってことを、彼らに知ってもらいたい。
物語の面白さというものは、そういものだと思うから。
それには当然、作品で一番に伝えたいことが、その演出家なり脚本家なりの深いところで血となり肉となり、作品に滲んでいなければならないということも。

なんて、「ドラえもん」をきっかけに、話があらぬ方向へ脱線したけれど、時代によって少しずつ様変わりしても、やっぱり「ドラえもん」は、ずっとずっと子供達や、かつての子供だった人々に愛されていくのだろうと思いました。

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映画「舞妓はレディ」

2014年09月14日 12時47分21秒 | 映画

2014/09/13「舞妓はレディ」
【製作】石原 隆、市川南、桝井省志
【監督・脚本】周防正行
【音楽】周防義和
【主題歌】「舞妓はレディ」小春(上白石萌音)
【キャスト】上白石萌音、長谷川博己、富司純子、田畑智子、草刈民代、渡辺えり、竹中直人、高嶋政宏、濱田岳、中村久美、岩本多代、高橋長英、草村礼子、岸辺一徳、小日向文世、妻夫木聡、松井珠理奈(SKE48)、武藤十夢(AKB48)、大原櫻子、徳井優、田口浩正、彦摩呂、津川雅彦

周防監督の最新作! これはぜひ観に行かねば!
ということで、この日は「舞妓はレディ」と「思い出のマーニー」の二本をハシゴをして来ました。

  

この映画、噂には聞いてましたが、なんとミュージカル仕立てなんですよ!
だから知っていたとはいえ、 舞妓志願の春子(上白石萌音ちゃん)がいきなり歌いだした時は、ちょっと違和感。
この作品って、歌なしでも充分に成り立つのでは?
だけど、それから先の、随所で始まる歌と踊りのシーンがことごとく楽しいです!
男衆(おとこし)役の竹中直人さんなんか、なんかすごく嬉しそうだし(笑)、草刈さんや富士純子さん、妻夫木聡くんまでもが(ちょっとだけど)歌うし、見るたび、聞くたびに面白いです。
まあ、この方達はミュージカル俳優さんじゃないんで、劇場のミュージカルで聞くような歌い方とはちょっと違うんですけど、映画ならではのミュージカル・シーンが効果的に使われていて、本当に楽しかったです。
そんな中、ミュージカル畑の高嶋政宏さんが歌いだした時には、その「なんちゃって感」に思わず笑いがこみ上げてきたりして(笑)
日本舞踊を踊る芸者姿の草刈民代さんが、突然ドレス姿になって洋風に踊りだす中盤のシーンも素敵で見所です。

思えば、今年の「アナと雪の女王」の全国熱狂ぶりを見るにつけても、やっぱり日本人って、基本的にミュージカル好きなんじゃないかな?
そういや歌舞伎だって、歌あり踊りありの劇なわけでしょ? 歌や音楽が必須なのは能や文楽だってそうだし。
だから、本当は日本ではもっとミュージカルが流行っても良いんじゃないかと思うけど、やっぱりミュージカルってチケット代が高すぎますよね~。
上演している劇場は限らているし、映画ほどには気軽に予約もできないしね。
今後はこういう映画からミュージカルの楽しさが広まっていくのかもしれないな。
そりゃあ、生で観たり聴いたりする醍醐味っていうのは、味わった人じゃなきゃ解らない素晴らしさがあるとはいえね、映画館に行くこの気軽さこそが一般庶民には嬉しいです。

なんて、思わず話はそれましたが・・・

上白石萌音ちゃんは可愛かったな~!
彼女はオーディションで800人の中から選ばれたそうで、本当に若くてまだ16歳だとか。
この少女期特有の透明感のある声が愛らしくて、その一生懸命さに好感が持てます。
歌って、熟練した上手な歌い手が歌えば良いってもんじゃないのね。

舞妓さんもそう。
見習いの彼女達は、成熟した芸妓さんほどにはまだ踊りも三味線も未熟だけれど、その若さこそが愛おしく見えるのよね。
だから、舞妓や芸妓遊びはやっぱ、大人のものなのね~。 
まあ、私のような貧乏人には「一見(いちげん)さん、お断り)のこの世界を生で見られることは一生ないんでしょうけど、ちょっとは体験してみたい。
そんな一般庶民の珍しさや好奇心も手伝って、このマイフェア・レディーのような田舎少女の成長劇にはわくわくしました。 
観終わった後は、実に爽やかでスカッとした気分になれます。
最後のミュージカル・シーンがまた明るくて楽しい!
渡辺えりさん、竹中直人さんお二人が並ぶところもご覧あれ!

話はわかりやくすて、脚本も面白いしで、周防監督の作品って、やっぱ好きだわ。

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映画「思い出のマーニー」

2014年09月14日 02時14分21秒 | 映画

2014/09/13 「思い出のマーニー」
【監督】米林宏昌
【脚本/丹羽圭子、安藤雅司、米林宏昌 
【原作】ジョーン・G・ロビンソン『思い出のマーニー』(訳/松野正子 岩波少年文庫) 
【作画監督】安藤雅司
【美術監督】種田陽平
【音楽】村松崇継
【主題歌】プリシラ・アーン「Fine On The Outside」
【声の出演】杏奈/高月彩良 マーニー/有村架純
     松嶋菜々子 寺島 進 根岸季衣 森山良子 吉行和子 黒木 瞳


あなたが来るのを待っていたの。

あら、もしかして、あなたは今、「それは自分のことじゃない、きっと別の誰かのことだろう」なんて、他人事に思ったりする?
違うわよ、「あなた」と言ったら、あなたのことでしょ?
他の誰でもない、今この画面の前にいてこれを読んでいる、そのあなたよ。

だいたい、ろくに更新もしないこんな場所に来る人って、そんなにいたりしないものよ。、
だけど、あなたならば、きっとここに来てくれるだろうって思ったわ。
そのあなたを、私は間違えたりしない。
私は本当にあなたを待っていたのだし、思ったとおりに、ちゃんと来てくれて良かった。

 だからもちろん、あなたがあなただってことは知っている。
私達、とっくに出会っているんだし。
え?、やーね、まさかまだ一度も会ったことないなんて言わないでよね。

たとえば、ここ。
私の感想記の、ここの中。
私は物語を自分のレンズを通し、勝手に自分好みに見たり聴いたり解釈しているわけで、だから私が語っている感想は、ある意味、作品の「パラレルワールドの感想」と言えるかもしれない。
ここは、私の場所。私にとっては夢の中の場所。
その夢の中に、あなたは会いにきてくれた。

さて、そこで唐突にクイズです。

では、ここにいる私は、夢の中の住人なのか、幻か、ただの妄想人か・・・それとも遠い過去の人か、はたまた幽霊なのか? 
いやいや、そんな不思議なもんでもなし、やっぱ現実?

答えは、全部が正解。
だけど、まさに今・・・私が書いている今じゃなくて、あなたがここにいる今・・・私が生きてるか死んでるかってわかる?

まあでも、どちらにしろ、いつかどこかで、「思い出の人」として、あなたが私を思い出してくれたら嬉しいな。

だって私、あなたのことが大好きだから。


  


そんなわけで、この映画はジブリ作品の中では物語の起伏やスピード感がなく、それだけに静かにじわっとくる作品で、そういうところは「借りぐらしのアリエッティ」と同じくくりかな。
そして、観ている間よりもエンディングの歌でじわじわ~っと泣かされてしまったのも同じかも。
言葉(歌詞)がわからなくても、伝わるときは伝わるものなのね。
歌の力? それもあるけど、この映画の力でもあるよね、やっぱり。
 

   Fine On The Outside / プリシラ・アーン 映画『思い出のマーニー』主題歌(和訳付)
  

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