今宵も劇場でお会いしましょう!

おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

「ドラクル」

2007年09月19日 23時58分01秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)
渋谷のシアターコクーンで「ドラクル」を観てきました。
作・演出 長塚圭史、出演 市川海老蔵 宮沢りえ 永作博美 勝村政信 他

吸血鬼ネタは好きなのよ。あちこちにツボがあるし。
舞台のヴァンパイアものは「…シャッフル」と「なんとかショー」と「ダンスなんとか…」と、これで四作を観たことになるかな。
人間の生き血を吸い永遠の時を過ごすことを吸血鬼自身がどう感じているのかとか、その愛はどのようなものであるかとか、ラストはどうなるとか……それぞれの作品で捉え方も落としどころも全然違うんだけど……ふ~ん、長塚さんはこうなんだ~……。

物語の始まりでは、吸血鬼レイ(海老蔵)が、過去の行いに対して神に許しを請い、救いを求めながら病身の妻リリス(宮沢りえ)と二人でひっそりと信心深く暮らしているわけよ。
それって、ちょっと面白いでしょ? 悪魔が神に祈る姿。
人外のものに人の世の善悪とか、信仰とか、そういうものが持てるのか?という疑問はあるけど、レイがリリスと共に暮らすためにはそこまで自己改革が必要だったのでしょうね。
というか、リリスと出会って彼の求めるものが変わってしまったのかな。
その生活はかな~りストイック……と言えば聞こえは良いけど、人の血が吸えずにお腹空いてフラフラで青白い顔した海老蔵さんは、テレビで見る豪快で奔放なイメージと違ってなかなかに美しかったです
リリスのりえさんと並ぶととても綺麗な二人だったわ
「私の血を吸って」と差し出すりえさんの腕はあまりに細すぎて、これじゃレイじゃなくても遠慮しそう

それで、話が進んでいくうちに、リリスが誘拐されてレイは愛しい人を取り戻すために暗黒の力を解放するわけですが……このあたり、「ヴァンパイアはこうこなくっちゃ!もっとやれ~!」と思って観てましたけどね、吸血鬼本来の姿に戻った海老蔵さんも、謎が解き明かされるリリスのりえさんも、悪女が似合う永作さんも、徐々にテンションが上がって二幕は意外な展開になるわけです。
終盤へ向かうにつれ、ゴシックホラーを含みつつ、でもリリスの過去がわりと衝撃的で、彼女が何故レイに出会い、手を差し伸べたのかという話に移ります。
このあたりのりえちゃんは良かったです。彼女の透明な美しさとその陰にもつ闇とが、罪を背負い苦しむ聖女によく似合ってましたね。

そしてラストですが。
その数十秒前に「あ、これはこのまま終わってしまう?……いや、そうじゃなきゃおかしいんだけど……でも……」なんて想ううちに、やっぱりそこで終わったか、という感じね。

なんかあのラストだけを観たら、美しいラストではあるけど、せっかくの「永遠の命」という美味しいネタを放り出しているようで、もったいないような気もしたわ。ある意味ハッピー・エンドなのよね。
吸血鬼よりは人間を描きたかったのかも。
「それでもなお、哀しさと空しさを抱えてヴァンパイアは永遠を彷徨う」というような、私好みの乙女チックな感傷的路線はここでも捨てられたわけか まあ、いいですけど。
「これでいいのか!!」と仰け反った某作品のラストよりは、このラストを取りますよ、私は。

あと、難を言えば、生首の出来が悪かったな~。相変わらずくだらんことにこだわりますが、あればどう見ても人形の首よ

「ヴェニスの商人」

2007年09月19日 23時54分30秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)
天王洲 銀河劇場で「ヴェニスの商人」を観てきました。

開演前のロビーが楽しい
音楽隊や仮装した役者さんたちが徘徊していて、カメラを向けると立ち止まってくれたり一緒に写真を撮ってくれたりします。
その仮装のなんともいえない妖しさや華やかさ、音楽やお客さん達のざわめきも賑やかで、これから観る舞台の期待がいっそう高まるような楽しい演出でした。

物語は有名な「ヴェニスの商人」ですから説明は要りませんよね?
冷酷なユダヤ人の高利貸しが、金貸しの証文どおりに商人の肉を1ポンドを要求すると「肉を切り取るときに、キリスト教徒の血を一滴でも流したなら、お前の土地や財産は法律によってヴェニスの国家によって没収されることになるぞ」というあまりに有名なアレですね。

……なわけで、この物語は深く感動するとかそういうものじゃありませんが、戯曲の面白さを楽しむ舞台です。
だから、ユダヤ人に対する差別があんまりだ!とか、キリスト教万歳じゃん?とか、セリフ長っ!とか、早口すぎて目が回るとか、市村さんは結構お茶目だしあまり悪人に見えなくてなんか同情しちゃったわ!とか、寺島さんは藤原さんのお相手にしてはお姉さますぎるとか、藤原くんってやっぱり素敵ね~とか…とか…言ってはいけないのですね、きっと

で、市村さんがあまりに素晴らしかったので、つい来年の「ペテン師と詐欺師」のチケットを先行で買ってしまいました。

「美の教室、静聴せよ」展

2007年09月17日 10時30分55秒 | 美術館/博物館/展覧会
横浜美術館で、森村泰昌さんの「美の教室、静聴せよ」展に行ってきました。

この展覧会は、西洋美術史上の名画に描かれる登場人物に、作者の森村泰昌さん自身が扮した約80点もの作品を、まるで学校の授業を行っているかのように紹介していく参加型の珍しい展覧会です。

会場の中には、授業の受け方を説明するホームルール、一時間目から六時間目の各教室、そして放課後の広場といった、八つのブースに分かれています。イヤホンを借りて森村さんの講義を聴きながらの授業は、本当の一時間ではなくてそれぞれ10分くらいで終わります。
以下はその復習ね。

一時間目「フェルメール・ルーム」……絵画の人物に森村さん自身が扮装し、メークまでしてその世界を独自のイメージを加えて再現したもの。

二時間目「ゴッホ・ルーム」……ゴッホの自画像に森村さんがなり、またセザンヌのリンゴの一つ一つにも森村さんの顔があります。

三時間目「レンブラント・ルーム」……またまたレンブラントの自画像に森村さんの顔。その解説の中で、「画家の人生は、不幸になっていけばいくほど深い作品になる」というのは印象的でした。レンブラントはどんどん負け犬になる人生だったそうですが、その自画像は歳を経るごとに深いのです。
その顔を再現する森村さんは、「自画像は自分自身を見つめなおすこと」とも仰っていました。

四時間目「モナリザ・ルーム」……「真似る」ということは「学ぶ」ことだそうです。モナリザが妊婦で裸体になっていたりします。教室には「モナリザの微笑み」に顔の部分をくりぬいたものがあり、「どうぞそこに顔を入れ鏡に写して、みなさんもモナリザを真似てください」と言われました。
もちろん、真面目な学生の私は実習いたしましたよ。

五時間目「フリーダ・ルーム」……フリーダは眉毛の太い、うっすらと髭さえも見える力強い強烈な印象の女流画家です。そのフリーダにも森村さんが扮しています。森村さんは五十代後半の男性ですが顔立ちが整っているのとメイクやPCその他の技術で女性にも子供にもなれるんです。

六時間目「ゴヤ・ルーム」……「笑い」をテーマにしています。人類は戦争をやめて、どちらが先に相手を笑わせるかで競えば幸福になれるのに……などという想いが込められているそうです。

放課後「ミシマ・ルーム」……三島由紀夫さんのパロディです。森村さんの芸術に対する主張が、三島由紀夫の自殺直前の場面で再現されているビデオです。

そして、一通り授業を受けると試験があります。
私は五問中一問間違えましたが、試験を受けた生徒全員に修了証とバッジがもらえました

以上、珍しく大変真面目にレポートを書いてみました(笑)

あぁ~、復習なんて久しぶりだ~。
でもこんな面白い授業ならまたやりたいわ。
美術に疎い私にはうってつけの展覧会でした。

あ、このままウケもオチもありません。

「ラスト・ファイブ・イヤーズ」

2007年09月15日 23時56分15秒 | 観劇(ミュージカル/音楽劇)
東京グローブ座で「Last 5 Years」を観てきました。
出演・山本耕史、井出麻理子

恋人たちの五年間を、女は恋の終わりから、男はその始まりから、その二人の思い出の時間を交差させるように歌い上げた舞台です。
恋をして愛し合い次第にすれ違っていく二人のどこにでもあるような物語で、特にドラスティクな展開もないのですが、それだけにその恋の終わりには共感もできるし切なくも感じられます。

それにしても、男って、どうしてねだりもしないうちから自分から永遠の愛を誓いたがるのかしらね? それが果たされるケースってどこかにありましたっけ?
まあ何か突然に離ればなれになったら別だけど、五年間も一緒に暮らしたらいいかげん互いに不満も出てくるし、多かれ少なかれ心のすれ違いはあるものよね。

ところで、この舞台は二人しか出演者がいないので、そのぶんたっぷりと歌が聴けます。
これは山本耕史ファンにはこたえられないでしょうね!
彼の魅力がいっぱい!二枚目さんの役でした
しかも、この方、客席に視線を飛ばすのが非常に上手いんだわ
私はやや後ろのほうでしたがセンターだったのでバシバシと視線を感じました
演技しながら自然に客席をじっと見られるとですね、これはヤラれちゃいますよ~
イイ男の視線は何度浴びてもよいわぁ~
でも、それはたぶん一階席と二階席前列センターのお客さんはみんなそう感じていたはずね?
帰り道でも「見つめ合っちゃったわね~」「ほんと私もいっぱい見つめ合った」なんて会話が聞こえてましたもの。
でもってカテコでは一番最初に手を振ったご婦人に手を振り返したりして「やさしぃ~」というファンの声も聞こえたし。
この上手さとサービス精神にシビレました

……ということで、山本耕史祭りの舞台かと思いきや、相手役の井出麻理子さんがなかなか良かったです
この方って、ミュージカル初挑戦の歌手の方だったのね。
ちょっとハスキーがかってオトナの声を持った方で、東宝あたりで観る舞台じゃお目にかかれないような歌い手さんでした。
前半は山本耕史さんが歌い終わるだびに拍手があるのに、彼女にはなかったのね。これが私は不満でムズムズしてたんだけど、途中から彼女にも自然に拍手が沸き起こって、私なんかこっちのほうに一生懸命拍手していたくらい。
ダンスはもうちょっとガンバレ!だけど、またどこかの舞台に出て欲しいな。
演技も勉強してくれれば、コンスタンツェなんかもできそう。
ちょっと骨のある、マジャーン・シャキさんのようなコンスになるんじゃないかしら。

「エレンディラ」のさいたま千秋楽

2007年09月02日 00時00分25秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)
とうとう「エレンディラ」のさいたま千秋楽。

この舞台が始まる前は「一度でいいから美しいあっきーを見てみたい!」なんて、ファンにあるまじき暴言を吐いていた私ですが、あっきーのウリセスはほんとうにカッコ良くて、美青年ウリセスの名に恥じぬ美しさでした

ストレートプレイだし、さいたまは遠いし、上演時間は長いし…ってことで結局「TOMMY」より1回少なく4回しか観てませんけど……「しか」って言うな、「しか」って!と思うか、「へぇ、それだけでよく我慢できたね」と思うかはそれぞれの常識の違いね。
「あなたの常識は私の非常識」って言葉もありますし

で、頭の中で整理できてない部分もあるけど、さらっと総括しますと……

★その1『観るごとに「非情な」はずのお婆ちゃんは可愛かった』
ウリセスに毒のケーキをもらって喜んで食べるところとか、その翌日けろっとして目覚めて「おはよう、エレンディラ!」という場面とか、すっごく無邪気で可愛いの
この迫力のお婆ちゃんはいつも長々寝言を言うんだけど、この寝言の内容は若い頃の恋愛の記憶ばかりなのよね。妄想も入り混じっているとは思うけど。
若い頃はとびきりの美女で、彼女のためなら人を殺す価値もあったほどにイイ女だったという彼女は今では小錦みたいに太ってしまって見る影もない……この年月の残酷さに泣ける思いだわ。
そのお婆ちゃんが幸せだった愛の思い出を寝言で語るわけよ。
これには人生の哀愁を感じずにはいられません

話はズレるけど、私はこの舞台を観ると自分の17歳の頃の恋を思い出したりするのね(笑)
当時の彼は普段は無口な人なのに、盛り上がるとウリセスばりに情熱的なセリフを吐くヤツで(笑)、なんかそれで一生分の甘い言葉を聞かされちゃった気もしたけど、若い恋ってそういう臆面もないものよね
で、その思い出を今の私が具体的に語っちゃったりすると、「なに寝言いってんだ?!」というほどに過去は遠く何もかもが変わってしまった。
ましてや、老婆になって「あの時、その彼は…」なんて言うと、「とうとうボケたか、この婆ぁ」なんだろうな。
本当に時は容赦ないわ
今若いと思っている方々も、あと10年もたてばわかると思うけど。

だからこのお婆ちゃんの歌で「神さまお許しください、昔の無垢なわたくしに」とか「せめてあの愛がもう一度享けられますように」という歌詞はなんだか泣ける。涙は出ないけど。
……にしても、この場面は横でウリセスたちの熱いラブシーンがあって、そこから客の視線をもぎ取るように舞台の前に出てくる姿が可笑しくて可愛いわ。
でも、視線はお婆ちゃんよりやっぱり恋人達に行っちゃうけどね。

★その2『観るごとにエレンディラは怖かった』
なんか、だんだんとエキセントリックに、絶叫系になっていたんですけど
最初はもうちょっと淡々としていたセリフも絶叫してるし。
なんか堪る思いが日増しに強くなっているのかしら?
私の注目の場面、「あんたって満足に人も殺せないのね」というセリフがどんどん怖くなってましたね。
ウリセスがお婆ちゃんを殺す場面は、最初は原作どおり「恐るべき冷静さで」眺めていたけど、観るたびに表情が怖くなって……笑うんですよ、うっすらと。
恋人が殺人する現場で笑う。この心理、どこかタガが外れたようなヒステリックな心境はわからなくもないけど、……私は、ちょっと違うような気がするな。冷静に見つめるほうが違う怖さがあって好き。
あ、そうそう、美しい裸体の美波ちゃんですが、今日はお尻にポチポチとなんか虫に刺されたか赤くなっている部分があって、「あ~、この子もやっぱり普通の女の子なのね」と変なところでほっとしましたです。

★その3『観るごとにウリセスはオトナになっていった』
こっちが見慣れたせいかもしれないけど。
ドキドキだったラブシーンが自然に美しくなってきて、憂いをおびた表情が板についてきた感じ
エレンディラが最初に犯されて「ちがう!(そうじゃない!、だっけ?)彼女は……」というセリフも、「満足に人も殺せないのね」と云われたあとのリアクションも、日替わり微調整の結果か、千秋楽の今日が一番ウリセスらしい感じがしました。
んで、私が唯一「これはどうよ?」と気に入らなかったシーンですが。
ふくろうの鳴き声で待ち合わせした二人がヒシっと抱き合うところ。
立って抱き合う時、あの状況でウリセスがやたら彼女のお尻を触るのが嫌だったのよねぇ…。
ああいう格好で情熱的に抱き合うときは、ふつうお尻は触らないと思いません?
かき抱くのは上半身と髪とかじゃないの? それにお尻を激しく触るとスカートがめくれあがって気になるのよね
でも千秋楽ではお尻を撫でないでくれて良かった!
ま、私の好みですけど。なんかここがこだわりなんで。

あ、さらっと語るつもりだったのに長くなってしまった。

「戦争わんだー」

2007年09月01日 00時01分53秒 | 芸能/エンターテイメント
北千住まで、森山未來 作・演出 モダンミリィの「戦争わんだー」を観てきました。

凄まじい爆音に銃音、眩しく交差する閃光、禍々しい兵隊に踏みにじられる民衆……冒頭のシーンでこの舞台の方向が……ん?まてよ。
そのすぐあとに幕が下ろされ、出てきたのはお笑いトリオのような三人
「戦争ワンダー」は間違いで「センス・オブ・ワンダー」ですと?
空耳アワーなネタを披露しつつ、これは戦争ものじゃないと訂正が入り、その後の舞台はまるで戦争と関係ないものでした(笑)

で、内容は簡単に言えば、父と母と女子高生と祖父の四人家族、それぞれの今を中心に、セリフなしの、ダンスのみで表現される舞台です。未來くんは「案内人」ね。

この舞台はね~、「血の婚礼」で「もっと未來くんのダンスを見たい!!」と思って行ったんですけどね。「エレンディラ」の前楽と引き換えにしてまで。
その結果、やっぱり未來くんのダンスを観に行ったのよね、私。
だってほかのダンサーさん達には申し訳ないけど、未來くんのダンスは際立ってカッコよかったんだもの!
結局私って、何を見てもミーハーなのよねぇ…
ある程度上手ければ、誰がどのくらい歌や演技が上手いとか、どれだけダンスの技術が優れているとか、どのスピンやジャンプの難易度がより高いとか……まるでわかってないの。
でも、目を惹きつける力とか華とか、その役者さんたちやダンサー、選手らの魅力ってそういう尺度で測れないものがあると思う。
そこだけ纏う空気が違うって凄いことよね。

で、未來くんは素敵でした~~
なんか頬がげっそりしてましたけど、ダンスのちょっとしたポーズも跳躍もなんて美しいのかしら。タップダンスも興奮するほど良かったです
なので、この舞台の私的見所は未來くんが踊っている場面全部ですが、あんなにカッコいい野球拳は初めて見たわ
BlueDreamさん、私も未來くんに脱いでほしかった!