今宵も劇場でお会いしましょう!

おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

「どん底」

2008年04月26日 21時48分21秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)
今日はシアターコクーンへ「どん底」を観に行ってきました。

昔々、受験生のときはゴーリキーとくれば「どん底」と暗記したもんだけど、
「どん底」がどんな作品かは知らないアタシ
題名からして絶対暗いに違いないと想像はできたけど、台本・演出がケラリーノ・サンドロヴィッチとあっては、去年観た「犯さん哉」のハチャメチャお笑いのイメージが強くて、この作品をどう料理してくれるか楽しみの舞台でした。

あ、これって明日が千秋楽だっけ?
じゃあネタバレしてもいいのね。…って、たいがいネタバレしてますが。

舞台いっぱいの大きな部屋を共有しながら、世の中のどん底に生きる人々の話。
病気で死にそうな奥さんを抱える鍵屋、毎日小説を読んで泣き続ける娼婦、自称もと男爵、頭のおかしいアル中の役者、売れない饅頭屋の女、泥棒……ほかには何をやって暮らしてるんだかわからない浮浪者もどきの男たちが何人か。
誰も彼もがみな貧乏のどん底で、明日への希望なんかありゃしない。
その上に住む大家だって、彼らよりはいくらかましな生活をしていそうだけど、気持ち的にはちっとも幸せそうに見えないし、妻(荻野目慶子)は夫が死ねばいいと思って、泥棒のペーペル(江口洋介)を焚きつけたりしてるしね。
ペーペルはその大家の妻と出来ていたんだけど、その関係にはうんざりしていて実はその妹に恋している。
そこへある日、老人ルカー(段田安則)が現れるのですが……。

この段田さんがイイんだわ
この群像劇とも言うべき舞台は、「役者」と呼ぶにふさわしい方たちばかりで見ごたえがありましたが、段田さん演じる老人は不思議な深みがありましたよ。

たとえば娼婦が恋の思い出を語るシーン。
その嘘を信じてあげるやさしい言葉の数々はまるで神様のように暖かく、娼婦を茶化す男たちに向かっては
「何を喋るかは問題じゃない、なぜ喋りたいかなんだ」と諭します。
この老人のセリフはみな、一歩間違えれば説教臭くも偽善的にもなるのに、ちっともそういうところがなく、私なんか「こういう人がそばにいてくれたら随分と癒されるだろうな」と思ったわ。

いったいこの爺さんは何者で、どういう人生を送り、どうしてここに来たのか…?
すべてが謎の人物だけど、すさんだ生活を送る人々でさえ軽視できない何かを持っています。

でもね、耳にとてもやさしい老人の言葉に癒される人もあれば、そこに夢や希望を持ってしまったばかりに、その後の絶望を現実に見てしまうものもあるわけ。
どん底から抜け出したい。抜け出せるわけがない。
でも、いつか、誰かがと思う人もいる。
諦めている人もいる。
「現実を見ないで夢を見ればいい」と言う老人は、神なのか悪魔なのか……。

結局は辛い現実だけを残して、いつの間にか老人は去ってしまうわけですが、
つまりこれは最後までどん底のまま、というか、むしろ悪化しています

なんかねぇ~、この舞台を現代の日本の住人に置き換えて観るのも面白いけれど、
あんまり難しいこと考えたくなくなっちゃった(笑)
だって、結末をどう消化していいかわからないんだもん。

お腹いっぱい食べられて、暖かい布団があり、その日の暮らしに困ってはいないけど、
こうして週末になると、現実ではなく夢を見に劇場へ通う今の暮らし。
贅沢っていえば贅沢だけど、あのどん底に住む彼らと私と、どこが違うのか?

そして結局は、
舞台セットが珍しい仕掛けで面白いな、とか、
段田さんはフルートも吹けるのね、素敵かも、とか、
江口洋介さんは大きくて、ボロを纏っていてもカッコイイな、とか、
まあそんな感想ですわ

劇場内は男性がとても多くて、みな演劇通に見えました。

原田真二「Manhattan Night!」

2008年04月20日 00時14分40秒 | ライブ/コンサート
表参道の……いえいえ、マンハッタンぴかぴか(新しい)へ原田真二さんのライブへ行ってきました。

原田さんは好きよハートライブへ出かけるくらいですもの。
でも、私らが中川晃教さんを気安く「あっきー」と呼ぶのと同じように
原田真二さんを「シンジ」と呼ぶコアな人達に囲まれてしまうと、
なんとなくアウェーな気がしてしまうほどに初心者の私であります。
たまたまお近くにいた方が気さくに声をかけてくださって嬉しかったわ~!
お陰でリラックスして楽しめましたわーい(嬉しい顔)

原田さんのファンの方たちはノリがいいでするんるん
1ドリンクでシーバス・リーガルのカクテルを開演前に一気飲みしちゃった勢いで、
私も調子にのって「キャンディ」では「しんじぃ~!!」と声をかけ、
「タイム・トラベル」では「ムード時間旅行のツアーはいかが」を歌ってきました。
ああ、あっきーはコレをやりたかったんだな。
まあでも、お約束の掛け声とかコーラスなんて、や~っぱ、すぐに出来るもんじゃありませんって冷や汗
「タイム・トラベル」のコーラスはファンがハモってます!
原田さんとファンとの年月かけた信頼関係が、しょっぱなから会場いっぱいをフレンドリーに盛り上げて、初めて参加した私まで一緒にヒューヒュー言ってしまえるほどの楽しさでした。

でね、
原田さんのコンサートに行って、あっきーの話ですみませんがあせあせ(飛び散る汗)
やっぱりこの二人は似ているんだな。
声や音楽性は違うと思う。
原田さんの声はハスキーだし、歌は思ったよりもずっとロックでガンガンな感じね。
だけど、メッセージ性が似てのるよ。
世界の平和とか、人のやさしさとか、感謝とか……。
なんか25年後のあっきーを見ているような感じ。
でも天然のあっきーと違って、原田さんは普通に面白い人だわ。

スペシャル・ゲストは、まだ日本でデビュー前なので誰も知りませんでしたがフィリピンの天才ボーカリストKristelという19歳の女の子でした。
とーっても、歌が上手です指でOK
アメリカあたりの人気歌手と言われても疑わないかも。

祝祭音楽劇「トゥーランドット」

2008年04月14日 21時49分45秒 | 観劇(ミュージカル/音楽劇)
「あの子、日本語ヘタだよねぇ……なんでわざわざ連れてきたんだろう。日本でも(この役できそうな人が)いるじゃない」

これ、私が言ったんじゃなくて、
ロビーで栗アンパンをかじるチープな私の目の前で、豪勢なお弁当を広げていたお姉さま方の会話ですが

あ~でもですねぇ、お姉さま、
日本語が下手といいましても、神秘的な女王様だと思えば許容範囲ですし、歌には心がこもっていて私はわりと好きですよ、アーメイ嬢は。
それに○カ○さんの西洋訛りを聞いたあとでは、インパクトとしてそれほどでもありませんって
だいたい、日本でこの役が出来そうなほど堂々として、歌が上手くて、ネームバリューがある若手の女性ってどなたでしょう?
……ああ、松たか子さんとか……あとは……う~ん、誰かなぁ……。

アーメイさんは、ビビアン・スー(ちょっと昔のポケット・ビスケッツね!)を顔も声も骨太にして大物感をプラスしたような感じね。
まあ、顔は独特のメイクでよくわからないですけど(笑)
このミュージカルの歌部門ではちゃんと要になっていたと思います。

顔といえば、久しぶりに見た岸谷五朗さんはやっぱり顔がデカかった
隣の女性が開演前にしきりに「ゴロウさんが、ゴロウさんが……」と隣に話しかけているのを聞いて、「ゴロウって誰? 稲垣? まさか野口か?」と思った私って間抜けだわ
岸谷さんは今日の主役ですもの。
当然ですが、いるんですねぇ…熱烈なファンが。
この日の席は前から五列目だったので、私も岸谷さんのダイナミックな演技を堪能しましたよ。
その岸谷さんもだけど、中村獅童さんも大柄でダイナミックでしたね。

どこかで「獅童さんは歌わなくてもいいのに」という評を見ましたが、歌の上手い下手じゃなくて、彼の声は悪役としてハマっているし、演技の延長のような歌い方だから流れを止めてしまうほど下手な感じはしませんでした。

楽しみだった早乙女太一くんは面白い発声だけど、イイ味でてました。
踊りはモチロン素敵でしたし。
またどこかで拝見したいものです。

そして、意外にも評判が良い安倍なつみさん。
愛を歌う彼女の顔は輝いていたし、ひたむきな姿がとても良かったです
セリフは力強くて勢いもあるし、何より可愛いしで、歌も演技も、もっともっと勉強したら、今後もミュージカルで大きな役がこなせそうだわ。
ソニンちゃんと同じくらい応援したくなりました。

まあ、そんな豪華な配役ですが……
何よりも音楽が良いです!好きです!
歌詞はアンサンブルなどでところどころ聞き取れなかった部分もありましたが
それでも意味は伝わる音楽の素晴らしさ。
さすが久石譲さん!
衣装はワダエミさんで、劇場も赤坂ACTシアターともなれば
あのバカ高いチケットもしょうがないかなって思わされましたよ。
通路を多用する演出やセットも面白かったしね。

私の好みとしては、心の琴線を大きく刺激するタイプのストーリーではないような気もしますが、あれやこれやでかなり楽しみました。

あ、最後に付け足すようで失礼だけど、北村有紀哉さんの演技と存在感が良かったです!
謎が残る男だわね。

「風林火山」

2008年04月12日 21時51分16秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)
待ちに待った週末♪
日比谷までの電車の中で本を読んでいたら、さして感動的な場面でもないのにやたら目がウルウルしてる。
やばい!
今週ずっと無理と我慢と挫折を重ねたせいで、心の振り幅がいつにも増して激しくなってるみたい。
だからこその観劇よ!
泣かせてもらおうじゃないの、イーターガーキぃ~!
笑わせておくれ!橋本じゅんさん!!

…というわけで、日生劇場で「風林火山」を観てきました。

これね、大河ドラマで見ていましたが、なんと!最終回だけ見逃してるんだわ。
だから、その心残りもあって選んでみましたが、音楽は同じだしキャストも主役の市川亀治郎さんはじめ何人かはテレビのままなので、ドラマの世界がまんま楽しめます。
それに加えて、ところどころ歌舞伎の要素も加わり面白い演出です。

見栄を切る独特なポーズや表情、花道を使っての登場や退出、お能や日舞のシーンもあって、舞台としても楽しいです。

亀治郎さんは今回、晴信と勘助の一人二役を演じ、早替もありました。
それは面白かったけど…う~ん、勘助はやっぱり内野さんだなぁ…。
なんか、亀さんの勘助ってば、妙にジジむさいんだもん。

で、晴信の宙乗りがあると聞いていた私は、またしても
「いつ飛んでくれるんだよ、晴信ぅ~?!」と待ってたら、やーっぱラストなのね(笑)
ヤマトタケルは羽が生えたけど、晴信はまだ生きてるんで、馬に跨がりながらの宙乗りでした。
2階席だったから近づく姿が嬉しかったわ。

さて、心の振り幅大きい今日の私は何度か涙がこぼれましたが、どんなシーンだったか、まだ見終えて何時間もたってないのに、よう覚えてません。後半、橋本じゅんさんが真面目モードになってきた辺りから意識飛んじゃったし。
あー、ちょっと疲れてるかな、やっぱり。
もったいないことしちゃったかも。

「身毒丸 復活」

2008年04月05日 21時52分56秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)
嫌よ嫌よも好きのうちなのか、先週に続いての蜷川さん。
いかな辛口の私でも、この舞台を生で観たら文句なんて言いませんよ。

たとえばあの、ストーリーとはあまり関係なさそうな狐の嫁入り行列とか、小人症の男であるとか、例の長くて巨大な乳をぶら下げた女が扮する異界のものども……見てはいけないのに本当は凝視したくて仕方ない異なる世界のあちら側……でももしこちらが見ていると気取られてしまったら、それらはとたんにこちら側に襲いかかってくるのではないかという恐怖が、本編の持つ暗いエロスと誘惑、その恐怖にリンクして、この世と地獄の境界線に立たされているかのような不思議な心持にさせられるわね。

蜷川さんの演出と、白石加代子さんと藤原竜也くんの熱演がどれだけ凄いかはよくわかりましたよ。

白石さんは能面の、あの一見無表情でありながら雄弁な「女面」と、「怨霊面」の般若の二つの面を同時に併せ持つ女優さんだと思いましたが、
失礼ながら、顔もスタイルも女性が憧れることのない、およそ美少年と似合わぬ普通の中年女性に見えるのに、だからこそ、その内面から噴出すような鬼のような恐ろしさが壮絶だわ。

たとえば、身毒が継母の撫子に折檻される場面ね。
まあ、あの時の撫子も凄いですが、身毒も思いっきり誘いまくってますね。
子供ってそうなんだわ。
親を怒らせて逆上するのを助長させるようなことを言ったりやったりするもんです。
その身毒の尻を叩く撫子の顔は、恐ろしくも哀しく辛そうでした。
ああ、なんて濃厚な愛憎のシーン。

しかし、あの痛気持ちよさそうな、激しく苦痛と愉悦の入り混じったエロい表情は良いとして(笑)、なぜ、身毒はああもあっさりとズボンを脱いで簡単に尻を突き出すのか?!
あれがもし私のナイトメア(悪夢)であったならば、身毒はあんな風に簡単にズボンを脱ぎはしないとか思いますが(笑)
だって、怯えながら抵抗されるほうが逆上しそうだし。
まあ、そこらへんは蜷川さんと私の感性の違いですね。

で、ラストの異界の者たちが舞台の前に列を作って並ぶ場面は、「もうここから先は、来ては行けない領域だよ。二度と戻れなくなりますよ」と言われているみたいで、夢の続きが霧の中に消えていくような余韻。
「お母さん、もう一度僕を妊娠してください」
「私をお抱きなさい」のその先は、もしかしたら誰も心の一番奥に隠し持つ、
見てはいけない願望だからか…。

そして。
私は、本編では涙しなかったのに、カテコで役者さんたちの微笑みながらお辞儀をする間、不覚にも涙がこぼれました。
これって、「エレンディラ」のときもそうだったのよね。
静かに流れる音楽の中で、舞台に並ぶ役者さん達を見ながら涙が止まらなかったのを思い出しました。

そうか
そもそも蜷川さんの舞台って「どこが?」とか「何が?」とか盛り上がりとかを期待するように創っていないのかも。
だから、終わった直後にあらゆる感情が集積してじわ~っと広がってしまう。

もっとも、それは作品によりけり……というか、私の好みによりけりで、最後まで楽しめない舞台もありますけどね。

やっぱり多くの人が賞賛する舞台は侮れないという今日の感想でした。