「私の恋人」プレビュー公演 東大和市民会館ハミングホール 2019.8.7
【脚本・演出】渡辺えり
【原作】上田岳弘「私の恋人」(新潮社)
【キャスト】小日向文世 のん 渡辺えり
多岐川装子 松井夢 山田美波 那須野恵
渡辺えりさんの舞台を観るのは、2015年の「ガーデン」以来なので随分と久しぶり。
これもまた「ゲゲゲのげ」や「あかい壁の家」のように、時空を行ったり来たりで、誰が、そして何が現実なのか、どこから夢なのか幻か、よくわからないお話です。
で、えりさんの舞台には、その「よくわからない」を楽しめば良いかと思っているので、最初から理解の努力を放り投げて観ていましたが……
ひとことで言うならば、「原始時代から何度も転生している運命の恋人を、時空を超えて探しにいく物語」・・・でいいのかな?(と、誰に聞く)
要するに輪廻転生を妄想する人の話・・・かな?
ん? そもそも、その「理想の恋人」だか「運命の恋人」だかを探し始めた人って、最初はのんちゃんかと思ったら、小日向文世さん演ずる「余命三ヶ月の先生」ってこと?
んんん??
……ま、いっか~(笑)
でもま、輪廻転生を追いかけると宇宙空間に飛び出すというのは納得、というか、何というか…。
というのも、この前のあっきー(中川晃教さん)のコンサートで「粒子」という新曲を聴いて以来、なんとな~く量子力学の面白さにハマってしまい、ちょくちょくと、なるべく簡単そうな説明を調べたりしているのですが、ネットで検索すると、その量子力学に引っ掛けて、いくらでも宇宙と愛のエネルギーだとか輪廻転生についてのネタが転がっているんですよね。
まあちょっと、そのほとんどは怪しいスピリチュアル系ですけど、信じる信じないは別として、輪廻転生はファンタジーとしても面白いです。
この舞台では「あかい壁の家」に登場したエアリーの妖精さんのような存在が三人ほど出てきますが、これもまた「気」とか、何らかのエネルギーを具現化した存在だと思えば、誰かを求めて人の魂が宇宙を含めて時空を行ったり来たりするこの物語も、そういった量子力学系の物語と言えるかもしれませんね。
そして、こういう作品が出来たからには、えりさんは、もう昔よりは死の世界が怖くなくなったのかな?……とか。
この世で亡くなってもエネルギーとして無にはならないかもしれないし、転生するかもしれないし、ひょっとして会いたい人に会えるかもしれないし、宇宙だし。
いや、だけど、ならばこそ本当に輪廻転生を繰り返すほどの運命の恋人がいるとしたら、どうしたって引き寄せ合って偶然にも出会ってしまう運命なのだろうし、今生で会えないなら無理して探さないで、そのまま来世に行くしかないんじゃないかな?
それに、やっと会えたとして、いったい何がしたいんだろう??……とか思いながら観ていたら……どうやら融合したいらしい(エッチな意味じゃなくて)
つまり、ひとつになって生まれ変わりたいのか????
なんて……なに言ってんだか良くわかんないでしょう?この感想も(笑)
この舞台も、あと2回くらい観ればもう少し整理されてまとまった感想が書けるのかもしれませんが、そもそも、観客に整理されることを望んでいないのかもしれませんね、渡辺えりさんは。
登場人物の誰も彼も、起点となる人物ですらも幻のような渡辺えりさんの作品は、精神が混沌とする世界を混沌のままに喜劇として観客に届けたいのかもしれません。
そんなこんなで、ま~、ゆるゆると、頭とっ散らかしながら「よくわからない」を楽しみました。
ところで、この舞台は世間に注目されていて、東京の本公演(本多劇場)のチケットはとっくに完売してるのですってね!
なにせ、のんちゃんの初舞台ですものね!
なので、客席が本当に温かかったです。
客層は男性が多めで、ふだん演劇をあまり観ていない方たちもたくさん来られている様子でした。
のんちゃんが最初に登場したところで、客席から「キタっ!!」という歓喜の声が聞こえました。そういう気持ち、わかる~!
みなさん、のんちゃんを心から応援しているのが肌で感じられて、私は渡辺えりさんと小日向文世さんが目当てでしたが、いつの間にか、のんちゃんファンの皆さんと一緒にワクワクしながら、のんちゃんを応援してるノリになりました。のんちゃん、一生懸命で可愛い~
だけど、のんちゃんの台詞は早口になると聞き取りにくくなるので、この舞台には、歌の時だけでなく、台詞の全部にマイクを通して欲しかったです。
ベテランの舞台俳優さんにはマイクは無用かもしれませんが、やっぱりのんちゃんには必要だと思います。
歌の前後にマイクが入った時はストレスなく聞き取れましたから、のんちゃんの、あのふんわりとした柔らかな可愛らしい声をそのままに生かすとしたら、この際、全員のマイクをオンにして、それぞれの音量を調節すれば良いんじゃないかと思いましたが……余計なことですかね~?