Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

演劇 「八月の鯨」

2014-08-11 | 映画・テレビ・演劇・芸能

 7月末から夏休み(勝手に)に入り、ルビーの会のお泊まり、観劇、観能、ライブ…と行事が続き、それがない日は暑さに耐えながら家でグッタリ。 もう立秋も過ぎ、今週はお盆だ。ここ2,3日は気温も下がりいっぺんに涼しくなった。

 さて、今日は8/1(金)に観た劇団民藝の「八月の鯨」のことを書きます。最近テレビでも時々お目にかかる奈良岡朋子さん、地方公演はもう最後かも、と聞いている。かつて幟を立てて「宇野重吉一座」の旅回りに一緒に来られた日色ともえさん、久しぶりの高岡公演だ。そして客演として、かつて憧れた篠田三郎さん、このお芝居では微妙な役回りを演じられる。多くの賞をもらったこの映画は、テレビでチラッと見た程度であまり覚えていない。ともかく楽しみにしていた。

 時は1954年の夏の終わり、所はアメリカメイン州ポートランドの向かいにあるピークス島。サラとリビーの二人の姉妹は毎夏、フィラディルフィアから避暑に来ている。二人が子どもの頃は、8月になるとこの海に鯨、イルカ、アザラシがたくさん泳いでいた。メイン州はアメリカの最北東部、東は大西洋に面し、北はカナダである。日本で言えば宗谷岬か知床と言うところか。

 姉のリビー(奈良岡朋子)は86歳、妹のサラ(日色ともえ)は75歳。目が不自由なリビーは、他人の世話にならないと生きていけない自分に腹を立てている。気難しくなり偏屈、言葉にもとげがある。サラは姉の面倒を見、バザーの小物を作ったり、友人や隣人とも仲良く付き合う、働き者のかわいいらしいおばあちゃん。二人の女優さんはともに声がとてもきれい。二人とも夫と死別しており、リビーには娘がいるが離れて暮らし、サラには子がいない。

 (↓は、他県の例会にアップされた舞台写真をお借りしました。)

            

 11歳年の離れた姉妹、母亡きあと姉は妹の面倒を見、老いてからは妹が姉の面倒を見ている。サラの幼馴染のティシャ(80歳)が遊びに来て、リビーは娘にまかせ、二人で一緒に暮らさないか、と誘う。
 近くに住むロシアの亡命貴族のマラノフ(篠田三郎)79歳が、釣りの帰りに魚を持って寄り、サラは彼を夕食に招待する。彼は帝政ロシアの貴族で、革命後知人を頼り転々と暮らしていたが、最近世話になっていた夫人が亡くなり、次はこの姉妹を頼ろうとの下心がある。
 マラノフに魚をさばいてもらい、サラが料理を作り、3人は盛装で夕食につき、楽しいひとときを過ごす。マラノフはロシアの冬宮で母と撮った写真を見せる。が、リビーはマラノフの魂胆を見破り、彼を傷つけてしまう。マラノフは静かに去って行く。   
 篠田三郎のマラノフは、礼儀正しく、気品のある貴族だった。働きもせず、人の世話になり自由気ままに暮らしている亡命者、という難しい役どころだ。ともかく、話は夏の日のたった1日半ほどの出来事、この人たちは皆、第1次と第2次の二つの世界大戦を生き抜いた人たち。会話の中で歴史や人生が語られる。その間、ザブ~ン、ザブ~ンと波の音が聞こえ、カモメの声も聞こえる。客席側に海があり、険しい岩の入り組む海岸があるのだ。

 マラノフが帰った後、夜1人で42回目の結婚記念日を祝うサラ。翌朝、ティシャが不動産屋を連れて来て、この別荘を売り、一緒に暮らそうと言うが、サラは断る。リビーは近所の大工に、前日まで「年を取ると新しいものは不要」と言っていた「見晴らし窓」を作ってもらうように頼んでいた。そして、姉妹は手を取り合って、鯨が来ているか海岸へ出かける…そこで幕が降りる。

 60年前の話で時代も国もまったく違うのだが、今の私たちの生活となんとよく似ていることか。日常の些細な会話に深い意味のあることがいっぱい。もう終わりではなく、まだまだ未来があるよ、と教えてくれる。↓は、トップと同じポスター用写真だが、素適でしょう?