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KURAU 第19話~第24話(最終話) 感想 そして総括

2004-12-17 13:15:19 | アニメ 感想
今週で最終回を迎えた『KURAU Phantom Memory』、昨夜撮りためていた最終回までの5話を一気に見ました。
静かなる感動をありがとう、決して派手ではないけれど、しっかりとしたテーマを最後まで丁寧に昇華したBONESとその制作スタッフに惜しみない拍手を送りたいと思います。
切なくて嬉しい涙とともに。

この『KURAU Phantom Memory』という作品は恐らく放送地域も限定されていると思いますし、ストーリーに派手なところが無いことからも、視聴者数はそれほど多くなかったのではないかと思います。
ゆえに、ここから書くことは私の独り言に近いものになるかもしれません。
それでもこの静かなる感動作についてラスト付近を中心にご紹介したいと思います。
しばしお付き合いを。

■一貫したテーマを二重にも三重にも昇華した制作スタッフに拍手を
うちのブログではこの『KURAU』のテーマを寂しさの裏側に見える「家族への憧憬」「親しいものへの思慕」と捉えて、それを軸に感想を書いてきたのですが、最終回となる第24話までを通じてそれが見事に昇華されていて、一視聴者として切なくそして嬉しい最終回を迎えることができました。

人を支えているのは憎しみという感情や孤独ではなく、惜しみない愛情を注ぐ家族であり、支えあう「対」の存在ということを一貫して静かに語りかけていたのですが、象徴的なエピソードをピックアップすると、

■家族への憧憬
最初は娘(クラウ)から父親への思慕だけかと思っていたのですが、それだけではなく父親から娘への思慕もしっかりと描かれていたわけで、その象徴的台詞が第12話の「紹介します、私の娘たちです」であり、最終話の「(実の娘のクラウとリナクス化したクラウ)どちらも私の娘なんだ」に繋がっていて、最後に本当に家族としての想いが昇華された瞬間でした。
自分の娘でありながら自分の娘ではない、そういう状況においてサブタイトルである「Phantom Memory」=「記憶」が効いてきて、本当に家族として心を通わせる、嬉しい涙しか出ない瞬間です。
ちなみに第12話で私は号泣しています。

■憎しみからの変化
クラウとクリスマスの他にもう一人スポットを当てるとすればそれはアヤカ。
憎しみに囚われていた彼女が第18話で前を向いて進み始めるシーンは第12話に次いで涙を誘うシーンでした。
そのアヤカが自分の心と本当に対峙するシーン、最も憎んでいる対象のサイトウ長官が殺されるかもしれない状況で、それでも長官を守りに行こうとするアヤカにほんとうの「変化」が訪れる。アヤカのストーリーはここで完結したと言っても過言ではありません。
その後にアヤカが家族を築くというエピローグはこの「変化」に対する製作者側からのプレゼントなのかもしれません。
「家族」によって癒されるべき存在、アヤカもその一人に違いありません。

■世界には二人しかいない、しかしそれでも世界は二人だけではない
第7話の感想でクラウもクリスマスも世界は二人だけで構成されているわけではないことを受け入れているんですが、それでも二人はリナクスで世界に二人しかいないんです。
それでも第23話でクラウは、そしてクリスマスはこの世界を、いろんな人で構成されているこの世界を守るために身を犠牲にしていく(涙)。
第7話でのシーンから本当に決意して、それでもあえて守ろうとするこのシーンに大きく張られた伏線の帰結を感じるとともに静かに感動してしまうのです。

■寂しさの裏返し
第1話の感想を書いたときに、「寂しくて寂しくて仕方ない」のかもしれない、そう書いた一言がこの最終話に帰結。
人間に戻ったクラウの口から「(母を失った悲しみで)寂しくて仕方なかったのかもしれない」の一言が出た瞬間、ああ僕はこの作品を観ていて本当に良かった、正直身震いしそうになりました。
第1話で表現したことが最終話で帰結する、丁寧に丁寧に積み重ねたストーリーの核心がここに帰結する、そんな瞬間(涙)。

■Phantomo Memoryの意味
「Phantomo Memory」とは「幻想の記憶」、つまりリナクス化した人間たちが持っている別の記憶。
それは「大事な人たち」と共有してきた記憶。
双子のリナクスを描いてきた意味、それがここに収斂してくるなんて熱すぎる。
彼らはその「Phantomo Memory」を思い出すことによって、最後に救われている。
大事なものは何かを思い出すことによって。
そしてこれが最後の最後、クラウとクリスマスの関係に収斂する、この積み重ねに涙が・・・。

■別れに対する答え
第13話以降、本作のサブテーマは「別れ」にあるんではないかと書いてきたのですが、その答えも最後に素晴らしい形で昇華されていました。
世界を守って消えていくリナクスのクラウ、そして残されるクリスマス。
これまで数々の「別れ」を描いてきて、「対」無しでは生きていけないという展開を見せつつも、最後には自分の胸に生きている、ずっと見守っている、物理的な「別れ」ではなくむしろ「始まり」を描くラストに大きな拍手を送りたい。
そして第1話と同じく、クラウがリナクス化した12歳の姿だったクリスマスがクラウと同じように10年の歳月と寂しさを積み重ねて再び12歳のクラウが出現するシーンは、クリスマスに対する製作者サイドの最高のプレゼントなのでしょう。

最後の「Welcom home」に心温められつつ、静かにこの小さな名作を見終わりました。
各話のエンディングの出来はときにガンダムSEED DESTINYを上回る切なさを見せるほど秀逸。
こういう作品があっても良い、BONESはいい仕事してますよ。
DVDも出ているので、もしこの静かな作品に興味を持った方は是非美しい音楽とともに静かに観てみてください。
物足りなさはあるかもしれませんが、こういったしっかりした作品が僕は結構好きなんです。
改めて制作スタッフに静かなる拍手を送りたいですね。

独り言にお付き合いいただきありがとうございました。

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7 コメント

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僕もKURAU好きです (楊枝)
2004-12-18 23:23:18
表現が過大な他のアニメと違って、登場人物の少しの仕草、少ない言葉で

よくここまで悲しいけれど素敵な物語を作れるなと、感心しました。

派手さはないけれど、静かに深く心に残るアニメだと思います。

返信する
これは嬉しい!! (燕。(管理人))
2004-12-19 03:54:30
>楊枝さんへ

やった!これは嬉しい。この作品を好きと言ってくれる人が居て本当に嬉しいです。

>派手さはないけれど、静かに深く心に残るアニメだと思います

まさにその通りだと思います。

一際違った光を放ってましたね。

こういう丁寧なつくりをする作品、今後もあるといいなと思っています。

よかった~。観てる人少ないからなぁ。
返信する
家族や大切な人との絆を前面に出した作品 ()
2005-01-16 22:32:44
テーマは家族、大切な人との絆。

一見地味めですが、その実深みと暖かさを持った良作ですね。

普段はアニメどころかテレビもあまり見ないのですが、この作品は深夜に偶然見かけて以来、レンタルも含めて全話鑑賞してしまいました。



これだけ良質な物語を作り上げたスタッフに、感謝したい気持ちでいっぱいです。
返信する
ほんとに良作ですよね (燕。(管理人))
2005-01-17 12:00:37
>魄さんへ

始めまして&非常に嬉しいコメントありがとうございます。

とても静かな作品でしたが、「絆」を無意識に求めてその「絆」の大切さに気がついていくプロセスをとても丁寧に描いてくれていて、色んな作品が世に氾濫する中、こういった作品があることに何か安心を覚えました。

一貫したテーマの掘り下げ、昇華をしっかりと続けてきた制作スタッフにほんとに静かに拍手を送りたいです。

こういう作品がアニメに限らず世に出てくるといいですよね。

この感想にコメントを頂けたことが私個人としては非常に嬉しいです。

#この作品を好きだと言ってくれる人がいることが素直に嬉しいです。
返信する
じ~んときました。 (こばやし)
2007-06-23 20:42:15
燕。さんのお薦めと言うことで手に取ったレンタルDVD、落ち着いた絵柄でいいなと思い見始めました。
「静かなる感動作」という表現はまさに的を得ていると思います。表情、しぐさ、場面の間の取り方、とても自然で良かったと思います。そして登場人物たちの心の葛藤。たしかにBONES、いい仕事してます。
第1話でクラウがリナクスと同化して、まったくの別人となってしまった娘を受け入れられない父親を、丁寧に描いていたと思います。それが、さまざまな出来事を経て、クラウを娘だと受け入れていく、そして絆が深まっていく様は、じ~んときました。登場人物の動機や感情の動きに不自然さが感じられないのがすばらしかったです。
また、10年のときを経て対を得たクラウとクリスマスの関係は見ていてほほえましく、「事件がなくても」十分見ごたえがありました。
GPOという巨大組織に追われ、追い詰められていく様は、リアルで絶望的で、どうやって物語をまとめるのだろうと心配したものです。最終話で、ついに内部告発で監査が動くというのは、ちょっとうまくいきすぎかなとも思いましたが、ハッピーエンドは本当に良かったです。
地上に出てきたリナクスたちの感情や行動は、実は寄り代となった人間たちのphantom memoryと大きくかかわっていたと言うことが終盤明らかになってきますが、そんなことは知らない登場人物たちがおりなす物語は悲しく、ときに優しく、見るものの心を揺さぶります。
クラウとクリスマスが人間たちの喜び、死んでしまうことの悲しみ、などを知って成長していくのですが、彼女たちは、人間として成長するだけでなく、リナクスだからこそリナクスと人間の悲しみの連鎖を止めなければいけないと思い至るまでのプロセスは秀逸だったと思います。
脇役も良かったですね。アヤカ、ダグ、ウォン警視正
、長官、イヴォン、ジェシカ、双子、どれも丁寧に描かれていて、ぐっと感情移入してしまいました。泣けるシーンが多かった。
なにはともあれ、ハッピーエンドがよかった。最終話にすべてがおさまるところに収まったという感じで、幸せな気分に浸れました。いい作品でしたよね。レンタルビデオ屋で、結構借りられているのを見るとうれしくなります。大騒ぎはされなかったけれど、ひそかに「私だけはこの作品が好き」という人が多いのではないかと推測しています。
それにしても、感動したのだけれど、コメントするのがこんなに難しい作品もないかなと思いました。下手なことを書くと、作品世界のイメージが壊れてしまいそうで。だから反応が少なかったのかも?
だらだらと書き連ねてしまいましたが、今度は、蒼穹のファフナー、つづいて神様のパズルにコメントさせて下さい。
返信する
静かなる良作 (燕。(管理人))
2007-06-27 23:14:40
■こばやしさんへ
いやー、懐かしい作品をフューチャーして頂いてありがとうございます(笑)。
個人的にはこの作品、万人にはお勧めしてないんですが、僕は非常に想いいれのある作品になりました。
静かに静かに展開していくんですが、きちんと丁寧に心理描写と伏線が昇華されていく、そういうつくりと、家族であったり、大切な人であったり、支えあいの中で生きていく、というテーマが織り成されていく、という点でほんとに良作だな、と感じるんですね。
特に第12話で「紹介します、私の娘たちです」の台詞、娘たち、となっているあたりが秀逸で、あのシーンは今でも胸に残ってますね。
今も深夜枠含めてたくさんの作品が世に出ていますが、その中に混じって、こういう静かな作品があっても良いな、と思わせてくれます。
#反応が少なかったのは作品のせいじゃなくて、僕のブログがその頃まだアクセス数も少なかったからだと思います(笑)。
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Unknown (Unknown)
2012-11-20 14:11:02
そこそこ良い作品だった
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