最近読了したばかりの本と言えば福井晴敏の『亡国のイージス』。
これがまた秀逸で最初から最後まで緊張しっぱなし、非常に重厚なストーリー展開でもあるんですが一気に読み終わりました。
何と言うかこの感覚は高村薫の『マークスの山』を読んだ時の感覚に似ています。
『マークスの山』も素晴らしい作品だったと思うのですが、共通するのは一級の人間ドラマとミステリーが渾然一体となってストーリーが展開していく点と、精緻に調査された背景、登場人物が非常に魅力的である点、いずれも名作と呼ぶにふさわしいと思うわけです。
#取り扱うテーマや切り口は全く違うのに、海上自衛隊と警察組織という組織構造舞台とした設定にもどこかしら共通点があるからこう感じたのかもしれません。
#ちなみに管理人は『マークスの山』を読み終わるまで作者が女性だということを知りませんでした(これはかなり驚いた)。
本作で取り上げたいポイントや数々の名台詞は挙げればキリがないほどなのですが、一応個人的に感じたポイントはこんな感じです。
■建前や理想の間に浮かんでくる本音の熱さに感じ入る
自分の好みの作風は?と問われれば、登場人物が迷いなく悟りきっている作品よりも、建前を理解しつつも絶えず揺れ続け、そして自問自答し続ける、それでも前に進まなくてはならない、そういった作風が好きです、と迷わず答えるのですが、本作品はまさにそういった魅力的な登場人物の宝庫。
国とは何か、自分たちのアイデンティティーとは何か?という大きな問題提起が絡み合う流れが一つ。
それぞれが所属する組織の建前やしがらみ、そして自身の信念・執念に翻弄される大きな流れが一つ。
この大きな、そして簡単に答えが見つからない問いかけの流れの中で最後に浮かび上がってくるのは、まるでそんな問題提起やしがらみなど関係無いんだ、とばかりに心を突いてくる「人が人を想う情熱」であり、無くしてはならない「何か」だったりするわけです。
しかもその心を突くシーンは全編に渡っており、ひたむきな魂でぶつかってくる仙石先任伍長の姿、そしてそれに影響されて変化していく如月行の姿に何度となく涙してしまうところであり、やはりここがこの作品の見所なんだと思います。
■仙石先任伍長と如月行
どうにもならないんだ、もう仕方ないんだ、と何度も諦めの波が彼らを襲うのにそれでも諦めきれない、むしろ互いがいるからこそ諦めるわけにはいかない、そんな二人の関係性だからこそ、答えの出ない問題提起や、複雑に絡んだ組織構造の闇の中で熱く輝いてみえるんですよ。
感動のポイントや名台詞は数あれど、やはりそんな二人を現すこの台詞でしょうか。
生き甲斐だ。生きててよかったって思えるなにかだ。
それがあるから人は生きていけるんだって・・・・・・
そう教えてくれた人の言葉を、おれは信じる
これが「あんたにだけは信じて欲しかった」の対比表現になっていて余計に泣ける。
やはりこの二人の関係性、この作品はこれに尽きます。
■精緻な情景描写と徹底した調査に驚愕
それにしても驚くべきは作者の取材能力だと思います。自衛艦の仕組みや船内の様子、そして武器の隅々に至るまで、徹底した描きこみがされていて、そういった方面に関しては素人同然の私ですらしっかりとイメージできました。
また自衛官たちの心意気、揺れ動く心情、このあたりの描写も感心するしかない、というほど自然にそして精密に描かれていて、まるで歴史小説家のような徹底した調査ぶりで、この作品の臨場感、緊張感を盛り上げるのに十分過ぎる役割を担っていると思います。
福井さんは近々ガンダムエース誌上でガンダム系の小説を執筆準備しているそうなので、これはこれで非常に楽しみです。
読んでいる最中からずっと脳内BGMは何故か「蒼穹のファフナー」のサントラの曲がエンドレスでかかっていたのですが、読み終わってすぐ、脳内エンドクレジットが流れている時のBGMは「蒼穹作戦」でした。
つか、もう生き残った人々や、散っていった人々に敬礼するくらいの勢いでした。
ということで『亡国のイージス』、私絶賛させて頂きたいと思います。
そして今、既に『終戦のローレライ』へ突入、まだ第1巻ですが、すでにぐっと心を掴まれております。
2005年度の上半期は福井作品にのめり込みそうです。
これがまた秀逸で最初から最後まで緊張しっぱなし、非常に重厚なストーリー展開でもあるんですが一気に読み終わりました。
何と言うかこの感覚は高村薫の『マークスの山』を読んだ時の感覚に似ています。
『マークスの山』も素晴らしい作品だったと思うのですが、共通するのは一級の人間ドラマとミステリーが渾然一体となってストーリーが展開していく点と、精緻に調査された背景、登場人物が非常に魅力的である点、いずれも名作と呼ぶにふさわしいと思うわけです。
#取り扱うテーマや切り口は全く違うのに、海上自衛隊と警察組織という組織構造舞台とした設定にもどこかしら共通点があるからこう感じたのかもしれません。
#ちなみに管理人は『マークスの山』を読み終わるまで作者が女性だということを知りませんでした(これはかなり驚いた)。
本作で取り上げたいポイントや数々の名台詞は挙げればキリがないほどなのですが、一応個人的に感じたポイントはこんな感じです。
■建前や理想の間に浮かんでくる本音の熱さに感じ入る
自分の好みの作風は?と問われれば、登場人物が迷いなく悟りきっている作品よりも、建前を理解しつつも絶えず揺れ続け、そして自問自答し続ける、それでも前に進まなくてはならない、そういった作風が好きです、と迷わず答えるのですが、本作品はまさにそういった魅力的な登場人物の宝庫。
国とは何か、自分たちのアイデンティティーとは何か?という大きな問題提起が絡み合う流れが一つ。
それぞれが所属する組織の建前やしがらみ、そして自身の信念・執念に翻弄される大きな流れが一つ。
この大きな、そして簡単に答えが見つからない問いかけの流れの中で最後に浮かび上がってくるのは、まるでそんな問題提起やしがらみなど関係無いんだ、とばかりに心を突いてくる「人が人を想う情熱」であり、無くしてはならない「何か」だったりするわけです。
しかもその心を突くシーンは全編に渡っており、ひたむきな魂でぶつかってくる仙石先任伍長の姿、そしてそれに影響されて変化していく如月行の姿に何度となく涙してしまうところであり、やはりここがこの作品の見所なんだと思います。
■仙石先任伍長と如月行
どうにもならないんだ、もう仕方ないんだ、と何度も諦めの波が彼らを襲うのにそれでも諦めきれない、むしろ互いがいるからこそ諦めるわけにはいかない、そんな二人の関係性だからこそ、答えの出ない問題提起や、複雑に絡んだ組織構造の闇の中で熱く輝いてみえるんですよ。
感動のポイントや名台詞は数あれど、やはりそんな二人を現すこの台詞でしょうか。
生き甲斐だ。生きててよかったって思えるなにかだ。
それがあるから人は生きていけるんだって・・・・・・
そう教えてくれた人の言葉を、おれは信じる
これが「あんたにだけは信じて欲しかった」の対比表現になっていて余計に泣ける。
やはりこの二人の関係性、この作品はこれに尽きます。
■精緻な情景描写と徹底した調査に驚愕
それにしても驚くべきは作者の取材能力だと思います。自衛艦の仕組みや船内の様子、そして武器の隅々に至るまで、徹底した描きこみがされていて、そういった方面に関しては素人同然の私ですらしっかりとイメージできました。
また自衛官たちの心意気、揺れ動く心情、このあたりの描写も感心するしかない、というほど自然にそして精密に描かれていて、まるで歴史小説家のような徹底した調査ぶりで、この作品の臨場感、緊張感を盛り上げるのに十分過ぎる役割を担っていると思います。
福井さんは近々ガンダムエース誌上でガンダム系の小説を執筆準備しているそうなので、これはこれで非常に楽しみです。
読んでいる最中からずっと脳内BGMは何故か「蒼穹のファフナー」のサントラの曲がエンドレスでかかっていたのですが、読み終わってすぐ、脳内エンドクレジットが流れている時のBGMは「蒼穹作戦」でした。
つか、もう生き残った人々や、散っていった人々に敬礼するくらいの勢いでした。
ということで『亡国のイージス』、私絶賛させて頂きたいと思います。
そして今、既に『終戦のローレライ』へ突入、まだ第1巻ですが、すでにぐっと心を掴まれております。
2005年度の上半期は福井作品にのめり込みそうです。
亡国のイージス(上) 価格:¥730 (税込) もうすぐ映画化ですがキャストはネタバレ するからみない方が良いです |