5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

咲くハズ

2019-07-23 21:42:26 | くらし

「白はちす夕べは鷺となりぬべし」

はちすとは蓮のこと。花がおわり、成長した花托が漏斗のかたちになり、その表面に小さな孔の出来た状態が蜂の巣のようだというのでこの名前がついたとは「文人たちの句境」で編者の関森勝夫が説明したもの。白はちすの俳句は詩人で文芸評論家だった三好達治(1900~1964)のものである。

白い蓮の花に見とれた作者は、「この清らかさや静けさは、夕暮れになるときっと白い鷺になるに違いない」と詠うのである。木下順二の戯曲「夕鶴」の清楚なつうのイメージだと関森は言い、作者の精神が澄んで漲っているからできた句だと褒めている。

さて、夏になると北京では街角に蓮の花売りが店を張るのだそうだ。今日の中日夕刊「世界の街海外リポート」の北京特派員は「つぼみは咲くハズ」という題で記事を寄せている。

花売りたちは拳大のつぼみやはちすをそれぞれ1本5元(約80円)で売っている。シャワーヘッドのようなはちすの中には白い実がいくつも入っている。

特派員氏が交渉をした男の売り手は、蓮は白洋淀(はくようてん)の産だという。白洋淀とは習政権が建設を進める河北省の新都市、雄安新区にある湖の名だ。北京から150キロ程の距離にある果樹園などが多い農業地だが、今では少しづつテクノロジー都市に様子を変え始めているという。

「必ず咲くから」と聞いた特派員氏がつぼみを二本買うと、男は「中の実は食べられる」とはちすをおまけに一本くれた。ところが、つぼみはいつになっても開花せず、シャワーヘッドの茎から実を取り出して食べる気も進まない。

繊細な蓮の花だ、切り花の水揚げが上手くいかなかったのだろう。どうやら、特派員氏は蓮の花を楽しむデリカシーより、蓮の根を食べるグルマンの方が似合うタイプなのかもしれない。

気候不順は北京も同じで、彼は夏風邪がちっとも抜けないと歎く。蓮の実は漢方で「蓮肉」という生薬、鎮静や滋養強壮作用があるというし、蓮の実を蓮蓉餡に加工して月餅に使ったり、苦みのある芯は蓮芯茶として飲んだりするという。

夏風邪退治に、白洋淀の蓮の実を煎じてのんだらどうなるか。それとも蓮芯茶と月餅でということもあるかも。




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