瑞浪を通る中央自動車道で雨による土砂崩れが起きたのは8月18日の深夜だった。多治見では18日昼過ぎから19日早朝にかけて153ミリの総雨量を計測する豪雨を記録している。さらに北に上がった瑞浪でも同じような状況だったのだろう。
崩れた土砂で埋まった高速道路を調べた中日本高速道路は「白色で粘土質。崩れた斜面の土は茶色で、周辺の土とは種類が違うようだ」と報告した。
マスコミのニュース映像を見ても「白い土砂」だというのが良くわかった。「こりゃ陶土だろう」と思ったのは 事故現場周辺が窯業の盛んなところだったからだ。
昔は国鉄中央線(今はJR東海)に乗って中津川から木曽谷をよく巡った。多治見、土岐、瑞浪、釜戸、武並と汽車は土岐川に沿って走る。釜戸あたりの川水はいつも白濁して流れていた。時によると土岐川下流の庄内川も白い汚れを川縁に残しているのが目撃できた。春日井には製紙会社があってこの工業排水も一緒くたに名古屋の西を廻って伊勢湾に流れ込んでいたのだ。
その後の調査で事故現場の山上にある陶磁器原料メーカーが斜面に投棄していた窯業原料の汚泥が土砂崩れの原因を作ったということになり、メーカーの社長も長期間に渡る不法投棄を認めたという。
環境基準が緩やかだった戦後の成長期には、陶土などの汚泥は川に流しても、誰も何も言わなかった。窯業関係業界は当然のことと考えてきた。
やがて世の中が変わり、生活環境を汚染するゴミの類を「タレ流す」ことがご法度になった。コストをかけて処理業者に依頼する者もあれば、このメーカーのように悪いと知りつつ山中に黙って投棄する者も現れたということなのだろう。何十年もこれが続けば罪の意識も希薄になって、代替りをしても改められない。
ひょっとすると、今頃大慌てでカバーアップに走り回る同業者がいないとも限らない。 悪しき習慣は伝染するのである。
事故から一週間が経ち、土砂が流れ込んだ釜戸の住宅地はほぼ撤去作業が終わったが、道沿いには白い泥の跡が残っているのだという。シリカ粉を大量に吸い込むと発がんリスクがあるなどと騒がれた瑞浪市は職員が休日返上で洗い流す作業を続けたそうだ。
最近は中央線を使うこともなくなり、釜戸あたりの土岐川がどんな風に流れているのかは知らない。昔の白く濁った川水がちょっと懐かしい気がした。自然にあった陶土を川に流して自然に還す。投棄をさせた方がエントロピーを上げてしまいそうに思うのだが、、、
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