血圧のせいかすこしふらつく脚を踏みしめて万歩コースを歩く。ウインドチルファクターで風を切るとやはり小寒いが、一週間前には枯れ木のようだった街路のイチョウはおどろくべき速さで青葉をつけ始めている。
週末のJRA、このところツキが戻ってきて今日も少しだけ勝ち越し。競馬場のターフも緑を増して、陽光に輝いて見える。スタンドから馬のいない走路(今日は、阪神、中山と福島)を眺めおろしているうちに、緑の帯がフラットになっていき、遠景がジオラマ化して見えてきた。スタンド側にいるホースプレイヤー達もなにか人形のように小さい。ああ、これは本城直季の撮影テクニックみたいだと思った。
「スモールプラネット」は少し前に評判になった彼の写真集だ。撮影技術の「被写界深度」をつかって本当の景色をあたかもジオラマであるかのように表現した独特の効果をもった組写真。望遠レンズをつかい、露出と絞りの変化によって被写界深度を調整、すなわち、被写体の一部にピントをあわせて背景をボカすやりかただ。写真を見ると、たしかに遠近または天地左右をぼかして、中心の一部分にだけピントがあたるようにしてある。しかし、こうすると何故ほんものをジオラマであるかのように誤認してしまうのかは、はっきり説明できないらしい。それに、海や山などの自然だけを撮ったものだとあまり効果が見えず、人工物の方がよりジオラマ的なのはどうしてなのだろうか。
映画「ナイトミュージアム」ではジオラマの人形や動物が夜になると動き出したわけだが、彼の写真はその逆で、動きまわる人や車の流れなども一瞬で切り取られてジオラマ化してしまうのが不思議である。万歩コースの前方には名古屋の名所、ミッドランドタワーが聳えている。247メートルの屋上から望遠で地上をながめれば、200万都市の裏町ジオラマが労せずに覗けるかもしれない。
ジオラマといえば、ミュージシャンで日本唯一の公認サンタクロースを名乗るパラダイス・山本氏が発案した「マン盆栽」も面白かった。盆栽の上にミニチュアの人形や自動車を並べただけのことで、庭や道路や座敷に見立てられた苔が日本的なジオラマ効果を生んでいた。 また、男の趣味としてちかごろ評判だというマイクロゲージの鉄道模型。最小のものはZZトレインと呼ばれて、ゲージ幅4.8mm、1/300スケールは世界最小の自走式鉄道模型らしい。鉄道模型ファンは鉄道車両だけでなく、レールの周辺の景色部分にも拘りをみせるという。
本城直季の写真にしろ、マン盆栽やZZトレインにしろ、見立てと極小化の好きな日本人のなんと多いことだろう。 What a small world!
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