春雨は一段落して今日はすっかり晴れ。桜も満開近しとニュースで云っていた。
春雨といえば「船底をガリガリかじる春の鮫」という句をすぐに思い出して笑える。これは「雑俳」という落語にある。隠居の「題を出すからやってごらん。春雨なんだが出来るかい?」という誘いに乗った八五郎が即座に詠むのがこの句だ。
春の雨ではなく、春の鮫に音も意味も転じていく日本語というのも面白い。この春雨について「ことばの歳時記」の金田一春彦先生は、純正な子規のこの句をまずあげる。
「春雨や傘さして見る絵草紙屋」
金田一先生は、春雨をハルアメではなくハルサメと読ませる訳を説明するのは案外難しいという。ローマ字で書いてみるとわかるように、ハルとアメの中にSの字が挟まっているが、このSの正体がはっきりしないのだそうだ。
ある学者は「春し雨」がつまったものだろうと云ったが、その生きた用例がみつからないから何とも言えない。Sが挟まれる用例としては村雨や小雨、真っ青が見つかるが、母音が接するのを嫌ってSを入れる習慣が昔あったのだろうかと、先生も先後まで断定はしていない。シークレットのSかもしれない。
最後に子規の有名な短歌を一首。
「くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる─」
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