5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

そよりともせいで

2018-08-07 21:23:10 | ことば

帰りの駅を降りると西空に大きな円い太陽が沈みかけていた。日の入りは19時10分。夏至の頃とくらべてずいぶん早く陽が暮れる。

今日は二十四節気の「立秋」。七十二候は「涼風至」で、涼しい風が吹き出す頃というわけか。昨深夜には我が家周辺で驟雨が降った。夕立ちならぬ朝立ちである。それもあってか、涼風至るとまではいかなかったが、気温は30度を少し上回る程度と連日の猛暑日が少し遠のいた。しかし、秋の気はまだ立つことはなく、明日の予報では再び猛暑日が戻ってくるという。

「そよりともせいで秋立つことかいの」

芭蕉と同時代を生きた俳人の上島鬼貫の句が引用されているのは、高橋睦郎の「百人一句」という中公新書の秋の部である。

鬼貫は奥州平泉藤原氏の末裔だという。寛文元年(1661)、伊丹の富裕な酒造家の一族として生まれ、武士として出仕を数度試みたが、結局は馴染まずに身を引いている。俳諧の紀貫之たらんとして鬼貫(鬼貫之を略して)と号した。

古今和歌集にある「あききぬとめにはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」という藤原敏行の有名な歌を、「そよりともせいで」「ことかいの」などと大胆に口語化することで俳諧化に成功していると、高橋は言う。

口語化しても野卑にならないところが鬼貫の鬼貫たるゆえんだとも。ともあれ、300年前の鬼貫のセンスがそのまま使えそうな、今日の立秋だった。





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