Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

日誌2月17日

2008年02月19日 | 選挙制度
京都市長選挙の電子投票を視察しました。
粉雪の舞う寒い一日でしたが、今回の市長選挙では、上京区と東山区で電子投票が行われ、このうち東山区役所における東山区の電子投票と開票作業を視察しました。
開票作業は21:20からとなっており、21:00すぎから立会人による開票関係の装置の点検などが始まりました。21:20から開票を開始し、21:50頃に電子投票による分と紙の投票用紙による分の開票を終了しました。開票所で視察したところ、実質的には電子投票による分の開票は15分弱で終了していました。

ところで、電子投票による開票結果について、京都新聞に次のような記事が掲載されました。
■「白票」のつもりが「持ち帰り票」 京都市長選 投票したのに釈然としない

開票速報によると、東山区の電子投票による投票13050票のうち、電子投票機の操作を途中で終了した者の数が180、電子投票機の操作をせずに退出した者の数が2となっていますので、合計182(約1.4%)が、実質的には「白票」と考えられます。これに対して紙の投票では投票145票のうち、6票が無効投票とされています(約4.1%)。
紙の投票用紙の無効投票の中には他事記載などもあるでしょうから単純に比較はできませんが、電子投票のほうが実質的な白票率は低かったのではないかと思います。
アメリカの電子投票で問題となった事例では、白票が異様に多いとか、過去の紙の投票用紙で行われた選挙に比べて急増しているという点が有権者の疑義を招いているケースが多くありますが、今回の東山区における電子投票ではそういう事態は発生しませんでした。上京区も同様で、電子投票機の操作を途中で終了した者、電子投票機の操作をせずに退出した者の割合は1.6%、紙の投票用紙の無効投票率は4.6%となっています。

「白票」を投じたい有権者のために、棄権という意思表示を明確に行うことができるようにするべきかは、理論上難しいところです。
自分が投票したい政党、候補者がいない場合に白票を投じる権利があるか、棄権の自由があるかという憲法上の権利にかかわるからです。
アメリカでも他事記載については、「Write in」(記号式投票で、自分の投票したい候補者が投票用紙に載っていないとき、書き込みをする)の権利があるかという論点になっています。この点を明確に論じているのが、高橋和之先生の「アメリカにおける選挙権の観念」芦部信喜先生古稀祝賀論集『現代立憲主義の展開(上)』(有斐閣、1993年)です。「投票権とは、自己の好む候補者に投票する権利であり、それを正式の立候補者に限定するのは投票権の侵害であるというのが、アメリカにおける常識のようなのである」(409頁)と指摘しています。

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