Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

選挙期日後の挨拶行為

2013年07月18日 | 選挙制度
 公職選挙法の改正により、インターネットを利用した選挙運動が認められるようになったが、投票日の後のいわゆる挨拶行為についても、インターネットの利用が認められるようになったことは、案外と知られていない。

 従来は、選挙期日後、当選又は落選に関し、選挙人に挨拶する目的をもって文書図画を頒布し又は掲示することは、自筆の信書及び当選又は落選に関する祝辞、見舞等の答礼のためにする信書を除いて、禁止されていた(178条2号)。このため、ホームページに当選の御礼を掲載したり、Twitterで当選のお礼をつぶやいたりすることは、違法であった。
 今回の改正により、選挙期日後に当選又は落選に関して選挙人に挨拶をする目的をもって行う行為のうち、インターネット等を利用する方法により行われる文書図画の頒布が解禁された(178条2号)。また、こまかいことをいえば、「あいさつ」というひらがなの表記が「挨拶」という漢字の表記に変えられている。

(選挙期日後の挨拶行為の制限)
第百七十八条  何人も、選挙の期日(第百条第一項から第四項までの規定により投票を行わないこととなつたときは、同条第五項の規定による告示の日)後において、当選又は落選に関し、選挙人に挨拶する目的をもつて次に掲げる行為をすることができない。
一  選挙人に対して戸別訪問をすること。
二  自筆の信書及び当選又は落選に関する祝辞、見舞等の答礼のためにする信書並びにインターネット等を利用する方法により頒布される文書図画を除くほか文書図画を頒布し又は掲示すること。
三  新聞紙又は雑誌を利用すること。
四  第百五十一条の五に掲げる放送設備を利用して放送すること。
五  当選祝賀会その他の集会を開催すること。
六  自動車を連ね又は隊を組んで往来する等によつて気勢を張る行為をすること。
七  当選に関する答礼のため当選人の氏名又は政党その他の政治団体の名称を言い歩くこと。


 「インターネット等を利用する方法」であるから、ウェブサイト等だけではなく、電子メールを利用することも可能であるはずである。改正公選法は、インターネット等を利用する方法から、電子メール(SMTP方式またはいわゆるショートメッセージ)を利用する方法を引いた残りが、ウェブページ等を利用する方法にあたる、という構造になっているからである。
 これによって選挙期日後、ホームページにおいて当選又は落選に関する挨拶を記載したり、電子メールを利用して当選又は落選に関する挨拶をしたりすることができるようになった。
 
 公職選挙法が改正されてから初の地方選挙での投票となったのは、7月14日投票の福岡県中間市の市議会議員選挙であるが、さっそくJCP(日本共産党)中間市議団のブログで、投票後の挨拶が行われている。
http://jcpnaama.blogspot.jp/2013/07/blog-post_1581.html
 「日本共産党3人全員勝利。 ご支援ありがとうございました 」とあり、明らかに挨拶行為であるが、これは従来であれば違法であった。改正によって、公職選挙法には違反しないこととなった。
 
 ところで、「中間市議会議員選挙結果(平成25年7月14日執行)」が公開されているが、
http://www.city.nakama.lg.jp/gyose/senkyo/shigikaigiinsenkyokekka250714.html
 最下位の当選者の得票は524票、次点者の得票は499票。議員定数や投票率にもよるだろうが、人口数万人(中間市の有権者は36,911人)の市議会議員選挙では500票あれば当選できるのである。もっとも、その500票を集めるのが大変であろうことも、想像が付く。
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