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おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

文楽の本 いろいろ

2012-11-22 23:12:15 | 読んだもの
 夏から一気に読んだ文楽の本です。かなり“忘却の彼方”にありますが、このブログ、そもそも「読書日記」「観劇日記」をつけたくて始めたものなので、とりあえずごくごく簡単にささっとふれておきたいと思います。

 「文楽のこころを語る」 竹本住大夫
 
 
 〈内容紹介〉
 
当代随一の浄瑠璃語りにして人間国宝である著者が、三大名作から十年に一度の珍しい演目まで19演目について、作品の面白さ、詞の一行一行にこめられた工夫や解釈にいたるまで、芸の真髄を語り尽くした、すべての文楽ファン必携の書。文庫化に際し『菅原伝授手習鑑・寺子屋の段』と、狂言・茂山千之丞氏との対談も収録。

 山本千恵子さんの「聞き書き」です。住大夫さんがお話されたままを文章に起こしてあるので、大阪弁がそのまま文字になっています。「おまへん」とか「したはります」とか「あきまへん」とか、大阪弁(正しくは河内弁だけれど)nativeの私はすっと入りますが、東京のお人がお読みになったらどうなんでしょうか。

 これを読んでいたときは、実際の舞台は「曾根崎心中」を見ただけだったので、どちらかと言うと演目のあらすじをなぞる感じでしたが、今は、と言っても「忠臣蔵」が増えただけですが、もうちょっと身近に感じるようになりました。

 ところで、住大夫さんはアノ騒動のせいで、軽い脳梗塞で入院されていましたが、無事退院され、初春公演で復帰されるとのことで、1月公演が楽しみです。


 「頭巾かぶって五十年 文楽に生きて」 三代目吉田簑助 


 〈内容紹介〉
 
現代の文楽の女方を代表する簑助が、芸歴50年を機に、はじめて明かす半生記。そして、伝統と現代・人形遣いの知恵・女方の人形の型・文楽に生きる女たちなどをテーマに、簑助本人の体験をまじえて語る芸の話。

 平成3年に出版された本です。ご病気の前の本です。簑助さんのお父様がやはり文楽の人形遣いでいらっしゃったので、簑助さんも5、6歳の頃から劇場へ通っていらっしゃったそうです。特別に作られた子供用の黒衣を着た簑助さんの写真が掲載されていました。お可愛らしかったです。ドラマチックなことが書かれているわけではなく、淡々と生い立ちや現在のことを書いていらっしゃるだけなんですが、じわじわと感動する本でした。


 「花舞台へ帰ってきた 脳卒中・闘病・リハビリ・復帰の記録」 吉田簑助と山川静夫
 
 
 〈内容紹介〉
 
平成10年文楽人形遣い(人間国宝)吉田簑助発病、平成12年司会者・エッセイストの山川静夫発病。40年来の友が、不幸にも「脳卒中」によって半身のマヒや失語症に見舞われました。汗と涙のリハビリの結果、簑助師匠は舞台復帰をはたし、山川氏はことばを取り戻しました。この間の互いの闘病記録、励まし合いの交信を中心に、「二人の道のり」や生き甲斐を両者の立場から対比的にまとめた書。古希をすぎた二人の友情と、あらためて感ずる “仕事への熱き思い”。同じ病と闘う人や、二人のファンにおくる人生の応援歌です。

 簑助さんと山川さんは同い年のお友だちです。山川さんっていうと「歌舞伎」のイメージなんですが、文楽にも精通していらっしゃいます(まあ、歌舞伎の親元のようなものですから)。闘病中のお二人の往復書簡も掲載されていましたが、思いのあふれたお手紙で、本当の親友なんだなぁと思いながら読んでおりました。

 今の簑助さんの舞台を拝見しても、どこにも病気のことを感じさせるところはありません。「舞台に立ちたい」という一心でリハビリに励んだから、とご本人も書いていらっしゃいますが、それでもここまで復帰するというのは強靭な不屈の精神力がないとできないでしょうね。

 簑助さんの舞台写真も何点かあって、あの、無愛想にも見える舞台のお顔、萌えます~


 「文楽ざんまい」 亀岡典子
 

 〈内容紹介〉
 
生身の人間がのたうちまわって築き上げる芸。魂が震えるような感動と美がそこにある。世界無形遺産に指定された文楽の世界をキーワードでわかりやすく紹介する。『産経新聞』連載に加筆して単行本化。

 表紙に簑助さんご登場です。「吉田屋」の夕霧です。

 第1章は「キーワードでたどる文楽」で「足遣い」「衣裳」「太夫と三味線」「床山」「人形拵え」等々文楽の言葉を取り上げ、それについて3ページほどの文章が続きます。新聞記者さんなので、非常にわかりやすくコンパクトに説明してあります。

 第2章では太夫・三味線・人形遣いの方たちへのインタビューで、これは一人につき30ページ近く割いてあって、入門から修行、芸談などが語られています。人形遣いでは吉田玉男さんもご登場でした。簑助さんとは名コンビだったそうで、玉男さんが「曾根崎心中」の徳兵衛を1111回勤められたときのセレモニーでは、簑助さんが「いついつまでも添うてください はつ・簑助」と書いたカードをつけて赤いバラのお花を贈られたそうで、「きゃっ、ステキ」でございます。

 この記事を書くために、上の4冊の本をパラパラと見ていたら、実際の文楽を何度か見たからわかる(なんて書くのも厚かましいんですが、スミマセン)という箇所もありそうで、手元に置いて、見るたびにまた見返そうって思っています。とりあえず、日曜までに「忠臣蔵」を中心に…。すっげー、付け焼き刃
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同期生 「りぼん」が生んだ漫画家三人が語る45年

2012-10-14 23:50:23 | 読んだもの
 「同期生『りぼん』が生んだ漫画家三人が語る45年」を読みました。漫画家三人とは一条ゆかり・もりたじゅん・弓月光のことで、このお三方、少女漫画雑誌「りぼん」の「第一回りぼん新人漫画賞」の入賞者だったそうです。

 帯の言葉です。
最強の「同期生」が語る知られざる日本漫画史。
一条「ライバルはもりたじゅんちゃんだった」
もりた「二人が先に成功して、寂しかった」
弓月「ボクはいつでも離れ小島なんだ」

 ↓この表紙、インパクトありますよね。本屋さんで見つけて、ソッコーお買い上げです。タイトルが「三人が語る」とあったので、鼎談かと思っていましたが、それぞれが執筆されたものをまとめたものです。

 お三方が同期生とはこの本で初めて知りました。おかしかったのは3人とも「漫画賞」の賞金につられて応募されていたことです。1位の入選は20万円で、これは当時にしたら非常に高額な賞金です(今でも十分高額です)。これには「りぼん」のほうの事情もあって、「りぼん」は昭和30年創刊、昭和41年には50万部を超えていた人気月刊誌でした。その頃の「りぼん」は、“お母さんが子供に読ませたい漫画”というコンセプトで、読者層も小学生女子を想定し、漫画の主人公も小学生、当然のことながら“恋愛モノ”はほとんどなかったそうですが、昭和37年に「少女フレンド」、38年に「週刊マーガレット」が創刊されると、そちらがどんどん伸びだし、「りぼん」の部数は「週刊マーガレット」に抜かれるようになりました。そんな中で「りぼん」が起死回生を図るための新しい感覚の漫画家を発掘するべく、漫画賞を創設したそうです。

 私が「りぼん」を読んでた頃は、既に“路線変更”が済んでいたので、少女漫画週刊誌と内容的にほとんど違いはありませんでしたが、一条さんたちがデビューした頃は、上にも書いたように小学生が主人公の漫画が大半を占める中で、高校生が主役の学園ロマコメみたいなのを描くのは“冒険”だったそうです。一条さんの代表作の一つでもある「デザイナー」は一条さんが描きたいものを描く、編集者との打ち合わせは一切せずに連載を始めた作品だったそうで、当初は4回で終わる予定が、あまりの反響の大きさに6回になりました。これは連載時は読んでいませんが、コミックスで読みました。それまでにない少女漫画でした。少女漫画らしくない、“大人の小説”のようなストーリーで、「え、こんなこと描いていいんですか?」と思いながら読んでいたのを覚えています。一条さんご自身は、ノリにノリまくって描いたマンガだったとおっしゃっています。

 一条さんのパートは一条さんのことだけが書かれてありましたが、他のお二方は周辺のことも書いていらっしゃって、帯の惹句「少女漫画史」になっていました。このあたりも、それぞれの性格が出ているんでしょうね。

 もりたじゅんさんのパートでは、山岸涼子さんがご登場でした。山岸さんは小さい頃にバレエを習っていて、それでスポーツとして、アスリートとしての「バレエ漫画」を描きたいと「アラベスク」の連載が始まりました。さらに“裏話”として、「森下洋子さんがもう少し早く世に出ていたら日本が舞台のバレエ漫画になっていた。でも、連載当時は日本を舞台に描くのは無理があった」そうです。

 弓月光さんは「りぼん」でデビューされた後に、週刊マーガレットに移っていらっしゃいます。「ベルサイユのバラ」と「エースをねらえ!」という二大人気作品が連載されている時に、「ボクの初体験」の連載が始まりました。『初体験』というタイトルをご本人は心配されたそうですが、意外に人気が高かったそうです。

 三人でいっしょにこういう本を出されるだけあって、公私共に三人は仲良しで、それぞれの漫画に実は他の二人も描いていたことがよくあったそうです。一条さんの背景のメカ関係は弓月さんが描き、弓月さんがどうしても締め切りに間に合わなかったときは、一条さんともりたさんが顔以外の部分を描いたそうで、そんなことができるんですね。

 もっといろいろ面白い楽しい話が満載の本なんですが、いちいちここに書いてもキリがないので、とりあえずこのへんで…。私と同年代で漫画好きだった方ならきっと気に入る本だと思います。でございます。

 
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演劇界11月号

2012-10-12 23:32:04 | 読んだもの
 歌舞伎エンターテイメント誌「演劇界11月号」でございます。表紙は「河内山」の吉右衛門さんです。「演劇界」表紙の写真は篠山紀信さん撮影によるものですが、その紀信さんの写真展が東京オペラシティアートギャラリリーで開かれているそうで、歌舞伎役者さんの写真も何点かあるそうです。再来週、上京するので行ってみたいけれど、夜は20時までだそうで、無理っぽい?

 今月の特別企画は「歌舞伎劇評とは」で、歌舞伎劇評の歴史や、座談会、劇評家へのアンケートなどがありましたが、“字ばかり”で白黒ページとちょっとお地味でまだあまり読めていません。巻頭の「自主公演&勉強会 挑戦の舞台」のほうがカラーの舞台写真に劇評と面白く読みました。

 取り上げられている公演です。
 「大感謝祭!亀治郎の会さよなら公演」
 「第一回 千之会」
 「挑む 外伝」
 「第一回 坂東薪車の会」
 「第十四回 音の会」
 「第十八回 稚魚の会 歌舞伎会合同公演」
 「第二十二回 上方歌舞伎会」

 今月号で8月の「薪車の会」と「上方歌舞伎会」が取り上げられると先月号で見ていたので、買ってまず探したのがそのページです。通常の舞台写真と劇評のところを見ると何も載ってなくて、「えーっ、何で?」と思っていたら、巻頭にカラー写真で載せてもらっていました。「薪車の会」は薪車さんご本人とご養父の竹三郎さんのコメントもありました。2日間で3回の公演、しかもどちらも主役、体力的にも精神的にも非常にハードな公演だったそうです。これからも続けていきたいと書いていらっしゃったので、また来年もあるんでしょうね。楽しみです。

 「薪車の会」も「上方歌舞伎会」も劇評は坂東亜矢子さん、また、通常の劇評の9月松竹座は亀岡典子さんが担当していらっしゃいました。どちらも関西の方で、非常に好意的な文章で、やっぱり“贔屓”ってあるんでしょうね。亀岡さんの劇評は、勘九郎さん襲名披露公演なのに、「三笠山御殿」の壱太郎さんをベタ誉めで、“愛”があふれています。良い劇評でございます。

 表紙になっている吉右衛門さん、染五郎さんのケガ・入院で休演のため、昼夜三役勤められ、まるで「吉右衛門奮闘公演」だったようです。ご覧になった方は(染五郎さんには申し訳ないけれど)ラッキー!だったようです。
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文楽のツボ

2012-09-12 23:56:38 | 読んだもの
 葛西聖司さんの「文楽のツボ」を読みました。葛西さんはNHKアナウンサーで(この本もNHK出版の「生活人新書」です)、古典芸能の舞台中継でよくお見かけします。初春の歌舞伎中継の印象が強く、“歌舞伎の人”かと思っていたら、文楽にも非常に造詣が深い方でした。大阪放送局に3回、合計で10年勤務されたそうで、そのときに文楽、地唄舞などの上方芸能に親しまれたそうです。

 本書と全然関係ありませんが、NHK文化センターで行われる、孝夫さんと葛西アナウンサーの歌舞伎トークショーは早々に満席となり、現在キャンセル待ちだそうです。やっぱり、孝夫さんの人気は絶大です。

 内容紹介です。
文楽は、初めて行ったときも、繰り返し体験したときも、感動するものです。でも本当に理解できたという満足感には、なかなか至りません。本書では、太夫さんが語る浄瑠璃の重要なことばや名文を拾い出し、得心が行く鑑賞のお手伝いをいたします。人形と三味線の見どころ、聞きどころもご紹介し、文楽の楽しさを一層味わっていただけるように工夫しました。

 収録曲数は全部で18、それぞれについてあらすじ、ハイライト、太夫・三味線・人形の「ツボ」、最後に葛西さんの個人的な「ツボ」が書かれてあります。読み始めて思ったのは、この本は初心者入門書ではなく、ある程度文楽の経験がある方が、予習・復習をかねて読む本でした。私のような「文楽実体験が『曾根崎心中』のみ」という者には、ちょっと早かったかもしれません。太夫の語りや人形の動きについて「ここ、ポイント」って書いてあっても、どういう語りか、どういう動きか、全く想像がつかなくて、???でした。

 ということで、私の場合は、文楽と歌舞伎は演目が同じものが多いので、歌舞伎の舞台を思い出しながら、歌舞伎の予習・復習をしておりました。もうちょっと数を見たのちに、ガイドブックとして使いたいと思います。

 
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演劇界 10月号

2012-09-06 23:26:59 | 読んだもの
 演劇界10月号でございます。今月の表紙はエビサンで、8月の演舞場の「伊達の十役」の仁木弾正です。見た目は本当に申し分ない役者さんです。

 今月の特集は「近松座30周年」で、9ページにわたる藤十郎さんのインタビューが巻頭を飾ります。近松座はまだ見たことがありません。今年は壱太郎さんのお初だったので、ぜひ行きたいと思っていましたが、一番近い尼崎は仕事の都合で行けず、その次に近いと思ったのが彦根でしたが、枚方からだと2時間ぐらいかかることがわかり(JR彦根駅から遠いので)、パスしました。

 近松座はてっきり成駒屋さんのお家だけでやっていらっしゃると思っていましたが、けっこういろいろな方が参加されています。平成13年の20周年の時には、玉ちゃんが「心中天網島」の小春でご出演でした。治兵衛はもちろん藤十郎さんです。團十郎さんの「曾根崎心中」の徳兵衛というのもありました。お初はもちろん藤十郎さんです。藤十郎さんがもれなくついてくるんですね。まあ、当然と言えば当然のことですが。

 面白かったのは「松竹大歌舞伎近松座公演密着ルポ」でした。役者さんとスタッフを合わせて90名で動かれます。大道具の搬入、組み立て、楽屋作り、付人さん・狂言方さん・小道具さんの仕事、開演1時間前の楽屋、壱太郎さんの拵え風景、衣裳さん・床山さんのそれぞれのメンテナンス、片付け、次の公演地へ、と90人が混乱することなく動く様子は写真だけでも圧巻です。壱太郎さん、お化粧の手つきも慣れたもので、すっかり女形さんが板についています。

 舞台写真と劇評は8月の新橋演舞場、巡業の近松座と文楽劇場の文楽公演しかなく、少なくさびしかったです。文楽は白黒で、蓑助さんも小さい写真で、ちょっと不満です。劇評は「蓑助が遣うお初が圧倒的である」とありました。さもありなん、当然でございます。「橋上で徳兵衛を見つめる視線に愛があふれ」とあり、お人形なのにねぇ、すごいですよねぇ。

 公演の数が少ないせいか、本のページ数も少なく、本屋さんで手にとったとき「え、こんだけ?」と思いました。でもお値段はいっちょまえに1400円、こんなことしてたらまた倒産するよ~ってちょっと思ってしまいました。

 なお、「上方歌舞伎会」「坂東薪車の会」は来月号に載ります。
 
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仏果を得ず

2012-08-30 23:53:31 | 読んだもの
 「あやつられ文楽鑑賞」に引き続き、三浦しをんさんの「仏果を得ず」を読みました。

 内容紹介です。
高校の修学旅行で人形浄瑠璃・文楽を観劇した健は、義太夫を語る大夫のエネルギーに圧倒されその虜になる。以来、義太夫を極めるため、傍からはバカに見えるほどの情熱を傾ける中、ある女性に恋をする。芸か恋か。悩む健は、人を愛することで義太夫の肝をつかんでいく―。若手大夫の成長を描く青春小説の傑作。

 全ての章が文楽の演目になっています。
   一 幕開き三番叟
   二 女殺油地獄
   三 日高川入相花王
   四 ひらかな盛衰記
   五 本朝二十四考
   六 心中天の網島
   七 妹背山女庭訓
   八 仮名手本忠臣蔵

 もちろん、それぞれの章の中に、その演目は登場します。文楽にはまりまくっている三浦しをんさん、非常に要領よくわかりやすくストーリーを説明してくださっています。ほとんどが歌舞伎とかぶっている演目ですが、改めて「へー、こんな話やってんやん」と思ったところもあり、三浦さんにはぜひ歌舞伎の番附のあらすじも執筆していただきたい、と思いました。特に、健と相方の兎一郎がそれぞれの演目についてディスカッションする場は、読みながらこちらまで役柄について「こんなん?」「あんなん?」といろいろ想像(妄想?)することができて、今後の文楽鑑賞に役立つことと思います。

 ↑内容紹介にあるように、まさしく“青春小説”です。“小説”っていうよりもマンガのノリ、私が昔読んでいた少女フレンドやマーガレットに連載されていたラブコメ系の少女漫画みたい、って思いながら読みました。出てくる人はみんな良い人だけれどキャラが濃い?真面目にやってるのに面白い人ばかりで、悪い(意地悪?)な人は出てこなくて、最後はHappyend…。「こんなに都合よく…」ってちょっとひねくれた気持ちも起こらないではなかったけれど、「あー、よかったねぇ」っていう気持ちのほうが大きく、すっきり気分良く読み終わることができました。

 健の師匠・銀大夫は人間国宝で周りから「名人」と言われている人だけれど、甘いもの好き、ヨーグルト好き、若いおねぇちゃんが好きなんだけれど奥さんもこわい、口より手が先に出る…面白い御仁です。こんな人が上司だったら大変だろうなぁと思いつつ、でも、そばにいたら退屈せんと思います。健が師匠から突然「いっしょに組みぃ」と言われた兎一郎さんは、超がつく変わり者、偏屈なんですが(もちろん、芸には厳しい)大のプリン好き、暇があればプリンを食べている人、やっぱりこの人も奥さんがこわい…。健自身は、下宿がラブホテルの一室、ボランティアで文楽指導に行ってる小学校の女の子の母親を好きになって仲良くなるんだけれど、その女の子のほうから“告白”されたり、本筋の健の“成長物語”もなかなか感動ものだけれど、それ以外にいろいろなサイドストーリーが入れ代わり立ち代わり出てくるので、退屈することなく最後まで読めました。もちろん、こちらもでございます。

 
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あやつられ文楽鑑賞

2012-08-25 23:48:10 | 読んだもの
 三浦しをんさんの「あやつられ文楽鑑賞」を読みました。

 内容紹介です。
「この本は、文楽観劇のド素人であった私が、いかにしてこのとんでもない芸能にはまっていったかの記録である」と著者がかたる、小説『仏果を得ず』とあわせて読みたい文楽エッセイ。文楽の真髄に迫るべく、資料を読み、落語を聞き、技芸員に突撃インタビューを敢行する。直木賞作家が人形浄瑠璃・文楽の魅力に迫る!

 とりあえず文楽の“入門書”を読まなければ!と思って手に取った本です。内容紹介にあるように、著者の三浦さんご自身がどのようにして文楽の世界に飛び込んでいったかを順を追って書いていらっしゃるので、エライ先生の上から目線の入門書と違って、“ワタシ”と同じ目線って感じで、時にゲラゲラ笑い、ふーんと感心し、エッと驚きながらサクサクと読めた本です。

 この本の構成です。
 一章  鶴澤燕二郎さんに聞く
 二章  桐竹勘十郎さんに聞く
 三章  京都南座に行く
 四章  楽屋での過ごしかた
 五章  開演前にお邪魔する
 六章  『仮名手本忠臣蔵』を見る
 七章  歌舞伎を見る
 八章  落語を聞く
 九章  睡魔との戦い「いい脳波が出ていますよ」
 十章  『桂川連理柵』を見る
 十一章 内子座に行く
 十二章 『女殺油地獄』を見る
 十三章 『浄瑠璃素人講釈』を読む
 十四章 豊竹咲大夫さんに聞く
 十五章 襲名披露公演に行く

 劇場の楽屋に行って大夫さんや人形さんに会ったり、人形をさわったり、内子座に行ったりと、さすがに直木賞作家ともなると、そういうことができるんですね。素人と書いていらっしゃいますが、いきなりいいなぁと思いながら読んでおりました。

 落語では枝雀さんの「寝床」を聞いていらっしゃいます。三浦さんは東京のお方なので、枝雀さんはご存じなく、担当の編集者からCDを渡されてお聞きになったそうですが、「生の高座を聞きに行かなかった自分に、アホと言いたい」と書いていらっしゃって、枝雀さんファンのワタクシは「そうでしょう、そうでしょう」と思いました。CDを渡された編集者さんもエライ!です。

 内子座は文楽ファンの間では「聖地」だそうで、毎年夏に文楽公演があって、今年はちょうど今日25日と26日に文楽公演があります。早々にチケットは売り切れるみたいです。ちょっと、来年行ってみたいかも、と思ってしまいました。伝統芸能の深みにずぶずぶと音を立ててはまっていくワタクシでございます。

 各章扉裏に、その章に登場する作品や人物について説明がついているのがとても親切でした。それにしても、演目は歌舞伎とほぼいっしょ、まあ、こちらがご本家のようなものなので当然と言えば当然なんですが、歌舞伎で見ているとどうしても役者さんを中心に見てしまうので、この本でいろいろな演目について読んでいたら、「へ~、こんな話やってんねぇ~」と今さらながらの感想を持ってしまいました。三浦さんは文楽→歌舞伎という順序だったので、歌舞伎をご覧になったとき「大きい!」と思われたそうですが、私はその逆なので「小さい!」と思いました。この前も文楽劇場で8列目なら見えるだろうと思っていたら、もひとつでした。よく考えれば当たり前のことなんですが、何かおかしかったです。

 文楽をご覧にならなくても楽しめる本ですし、文楽をご覧になるのならさらに楽しめる本だと思います。三浦さんの語り口も、結構あちこちでツッコミが入って面白いです。でございます。

 
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英雄の書

2012-08-14 22:32:48 | 読んだもの
 宮部みゆきさんの「英雄の書(上・下)」を読みました。夏の「新潮文庫の100冊」に入っている本です

 内容紹介です。
 
(上巻)
 森崎友理子は小学五年生。ある日、中学生の兄・大樹が同級生を殺傷し、失踪するという事件が起きた。兄の身を心配する妹は、彼の部屋で不思議な声を聞く。「ヒロキは『エルムの書』に触れたため、“英雄”に憑かれてしまった」。大叔父の別荘から彼が持ち出した赤い本がそう囁いていた。友理子は兄を救い出すべくたった一人で、英雄が封印されていた“無名の地”へと果敢に旅立った。
 (下巻)
 友理子は“印を戴く者(オルキャスト)”ユーリとなり、額の印に魔力を授かって無名の地から帰還した。兄を探して、彼女が次に向ったのは『エルムの書』発祥の地ヘイトランドだった。従者として連れ帰った無名僧ソラ、魔法でネズミに化身した赤い本アジュ、謎の“狼”アッシュも同行するが、旅先では幾つもの試練が待ち受けていた──。苛酷な冒険の果て、ユーリが知らされる驚愕の真実と本当の使命とは?

 宮部みゆきさんの本は結構相性がよく、これまで読んだ本は全て読了、しかもさくさくと短時日で読了しておりましたが、これは厳しかったです。読了はしましたが、“さくさく”とはいきませんでした。

 ご本人が書かれた「初刊時あとがき」によれば、「英米の怪奇小説がお好きな方」が、この本を読むと「あ、これはあのことね」「あ、それはあれを指しているのね」とわかるようなんですが、残念ながら私は英米の怪奇小説が好きではないので、出てくる言葉に全くなじみがなく、その言葉に慣れるのに手間取り(って、結局よーわからんのですが)、そのせいかストーリーもよくわからないうちに進んでいるような、そんな感覚で読んでおりました。まあ、もっとちゃんと何度も読めばわかるのかもしれませんが、このテの小説でそこまで真剣に読まないといけないものか?という思いもあって、とりあえず最後まで行き着いた、っていうのが正直なところです。

 「英雄の書」の続編「悲嘆の門」がサンデー毎日で連載が始まっているそうです。南アフリカのアパルトヘイトを扱っているらしく、そういえば、「英雄の書」の最後のほうでアパルトヘイト云々というのが出てきて、かなり唐突な感じがしたのですが、そっちにつながっていくためなんですね。でも、できれば、宮部さんにはそういう“主義・主張”はやめてほしいなぁと、ちょっと思っています。

 ワタクシ的にはYonda?ブックカバーに応募できるプレゼントマークが2枚集められたので、それでいいっちゃいいんですけれど。

 
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演劇界9月号

2012-08-07 23:56:39 | 読んだもの
 「演劇界9月号」です。今月の表紙は二代目市川猿翁丈の「真柴秀吉」でございます。ワタクシ、なぜか猿翁丈のことはすっかり失念しており、ずっと「今月号の表紙は誰だろうか。月は亀ちゃんだったから、今月はないし。中車さん?でもいきなり表紙はないよね。他の役者さん怒らはるし。松竹座の誰か?国立の愛之助さん?」といろいろ考えておりました。8年ぶりに歌舞伎の舞台に立たれたのだから、表紙になるのは当然と言えば当然のことなんですよね。

 巻頭特集は「新装刊五周年記念 特別対談特集 歌舞伎の愉しみ」というタイトルで、「坂東玉三郎 × 真山 仁 」「坂東三津五郎 × 池内 紀」「中村七之助 × 小松成美」の3組の対談なんですが、三津五郎さんと池内紀さんは対談形式の記事ですが、玉ちゃんと七之助さんは対談されたものを文章としてまとめてありました。スペシャルインタビューは橋之助さん、名作案内は三島の「鰯賣戀曳網」で、先月号よりは読むところがいっぱいありそうです。松竹座の劇評は「光る佐吉と知盛」で、孝夫さんと吉右衛門さん大絶賛でした。そりゃそうなんでしょう。

 実はバタバタしていて、まだ全部読めていません。お盆の間にでもゆっくりと読みたいと思います。
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IN

2012-07-28 23:48:17 | 読んだもの
 桐野夏生さんの「IN」を読みました。桐野さん、15年くらい前に「OUT」という小説を書いていらっしゃって(原田美枝子主演の映画にもなったからご存じの方も多いかもしれませんが)、てっきりそれの続編?関連してるん?って思っていましたが、全く違うお話でした。

 内容紹介です。
愛の極みは憎しみなのか。恋愛の涯(はて)にあるものは。
恋愛関係にあった男と形の上では別れたが、愛憎の感情はいつまでも心の奥でざわめく。作家のタマキは恋愛における抹殺を小説のテーマとし、取材を進めるが、最後に見たものとは

 何層にも入り組んだ構造になった小説でした。主人公は鈴木タマキという小説家です。彼女はかつて自分を担当していた編集者と不倫をしていました。そして、もう一人小説家が登場します。緑川未来男という小説家で、彼はかつて愛人の存在に嫉妬した妻の狂乱を「無垢人」という小説に赤裸々に綴りました(←島尾敏雄の「死の棘」がモデルらしい)。「無垢人」の中で愛人は「○子」と呼ばれ、そのモデルが誰なのかは謎です。鈴木タマキはそれを自分の小説「淫」に書こうと、「○子」に迫っていきます。

 小説は七章立てで、それぞれがパキッと独立しているような、何となく関係があるような、慣れるまでは「???」が飛び交います。最初は「○子」が誰なのかをこちらもいっしょになって探っていくようなワクワクドキドキ感があったんですが、途中から、だんだん面倒になってきました。特に、鈴木タマキと編集者の恋愛小説の部分は、桐野さんにしては陳腐なような感じで、「あんましぃ~」って思いながら読んでおりました。

 私の読む力がないからかもしれませんが、桐野さん、どうも最近どこかへ飛んだはるような、違う世界へ行ったはるような、そんな気がしてなりません。昔のずっしりと重い、ガツンとやられるような小説が読みたいですねぇ。

 
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