
これは昨年11月に出版された皇后さまのお歌をドイツ語に翻訳した歌集です。
歌集はドイツのヘルダー社から出版されたのですが、この出版社の社長ヘルダー氏が皇后さまのお歌をドイツ語に訳してご紹介したいと思われた人物です。
ヘルダー氏は大学で日本学を学んだ親日家で、東日本大震災の後、被災地を訪問される両陛下に感動し、皇后さまがお歌を詠まれることも知り、是非歌集として出版したいと思われたのだそうです。
それでドイツ語訳と解説を彼の日本学の先生パンツァー氏に依頼し、構想から8年目で出版にこぎつけたということです。
何首かご紹介します。
まず宮家に嫁がれ、皇太子妃としての責務の重さを思って詠まれたお歌は歌集のタイトルにもなっています。
てのひらに君のせましし桑の美の
その一粒に重みのありて
その一粒に重みのありて
ご三人の宮様のご誕生のことや、昭和天皇崩御、ご成婚50周年目のことなど身辺の出来事や国内各地をご訪問された時のお歌の他に海外に目を向けたお歌もあります。
ベルリンの壁崩壊のお歌は今回の歌集がドイツ人向けの出版ということを配慮して歌集に収められたのかもしれません。
われらこの秋を記憶せむ
朝の日に
ブランデンブルク門明るかりしを
朝の日に
ブランデンブルク門明るかりしを
1989年11月10日の夜半ベルリンの壁が崩壊し東西ベルリン市民が歓喜に沸いていた頃、時差の関係で日本はすでに夜明けの日が射していたが、ただここで詠まれている「ブランデンブルク門の明かり」は「自由の光」であるとパンツァ先生は解説に記しています。
ヘルダー氏が感動したというお二人の被災地ご訪問ですが、皇后さまが詠まれた震災のお歌です。
草むらに白き十字の花咲きて
罪なく人の死にし春逝く
罪なく人の死にし春逝く
最後は1972年5月15日の沖縄復帰を詠まれたお歌です。
沖縄の基地問題が速やかに解決するようにとの願いをこめてご紹介します。
この夜半を子らの眠りも運びつつ
デイゴ咲きつぐ島還り来ぬ
デイゴ咲きつぐ島還り来ぬ