先日ドイツのテレビでは映画「モニュメンツ・メン」が放映されました。
2015年秋に「ミケランジェロ・プロジェクト」として日本で公開されたのでご覧になった方がいるかも知れません。

モニュメンツ・メンとは第二次世界大戦中、記念建造物や美術品を爆撃から守ろうとした連合軍の兵士たちのことです。
邦題が「ミケランジェロ・プロジェクト」になっているのは救出した美術品の中にベルギーのブリュージュの聖母教会のミケランジェロ作「聖母像」があったからです。
第二次世界大戦中、ナチス・ドイツは侵攻地域で美術品を略奪し、それを「(ヒトラー)総統美術館」で公開することを計画していました。
しかし戦争末期、ドイツの敗戦があきらかになるとヒトラーはドイツ国内の資源、産業施設等について、敵が入手する前に破壊することを命令します。
それまでに略奪した多数(ほぼ20万点?)の美術品も破壊の対象になりました。
それ以前から(戦争勃発直後以来)欧州では貴重な美術品が戦火にあったり、ナチスは略奪しなかった美術品も撤退する際には故意に破壊したので、多くの文化財が失われてしまっていました。
これを憂慮したのが当時ハーバード大学付属美術館長だったフランク・ストークスで、ジョージ・クルーニーが演じています。
ストークスはモニュメンツ・メンとして美術館の館長、学芸員、建築家などに声をかけます。
中に後にNYのメトロポリタン美術館の館長となるジェームズ・グレンジャーもいます。この人物を演じているのはマット・デイモンです。
あるプロジェクトのために優秀な友人に声をかけるというのは映画「オーシャンズ」に似ていますが、「モニュメンツ・メン」は史実に基づく映画です。
主演ばかりでなく監督も務めたジョージ・クルーニーは映画の80%までは本当にあったことと語っています。
略奪された美術品の隠し場所に重要なヒントを与えたのが当時、ジュ・ド・ポーム国立美術館(オルセー美術館の前身)で美術品の強奪を指揮するナチ親衛隊の秘書をしていたフランス人のクレール・シモーヌで、ケイト・ブランシェットが演じています。
映画のポスターにも記されているように、「モニュメンツ・メン」のメンバーは「芸術はプロ、戦争はド素人」でそれまでは銃を持ったことのないような人々でした。でも芸術品は人類の宝だと救出のために戦地に向かうのです。メンバーのうち2名が活動中、命をおとしてしまいます。
戦後、ジョージ・クルーニー演じるストークスが彼らの活動の事後報告を行うのですが、亡くなった2名について、聴いていた政府関係者から
「命を失っても守る価値のあるものだったか」(うろ覚えですが、多分このような問いかけだったと思います)との問いに、ストークスが即座に
「イエス」と答えるのは感動的でした。
映画に登場する救出された名画や美術品を巡る旅にいつか出かけられたら良いなと思っています。