A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

満天に輝く星空の中で見失われないように・・・・・

2007-10-15 | CONCORD
Lost in the Stars / ROSS TOMPKINS

「星の数ほど」という物の例えがある。
満天の空の無数の星の中から特徴あるものが名前を得、そして誰もが知るところとなる。
同じように見える空でも、日によってその姿が微妙に変わっていく。それは一定の周期で廻るもであるが、長い歴史の中では星自体の存在も入れ替わっている。

音楽を好み、自ら演奏もし、それを仕事としていく人はそれこそ「星の数ほど」いる。
しかし、その中から人からお金をとって演奏を聴かせ、さらにレコードやCDを通じて世に広めていくことの出来る人はほんの一握りだ。
さらに、メジャーレーベルでタレントして育っていくのはごく一部の例外だ。コマーシャリズムに乗せられ、そこに生まれるものは脚色の中で音楽家が本来持っているものをすべて出し切れないこともあるし、反対に実力以上の評判を生んでしまうこともある。
これ自体は悪いことでもなく、時代時代の表面的な文化を作り出すためのひとつの側面である。一方で、その時代の本当の文化を支えているのは、いつの世でもパトロンや一部のファンであり、彼らによって作り出されている。

ジャズはそもそもその発生の経緯自体が人々それも一般市民の生活に根ざした文化であり、宮廷文化でもなければ、富裕層の道楽でもない。したがってその発展の中、記録として残されたレコードの世界では、マイナーレーベルの果たした役割が大きい。
ミルト・ゲイブラーのコモドア、ハーマン・ルビンスキーのSAVOY、アルフレッドライオンのブルーノート、オリンキープニュースのリバーサイド、ノーマングランツのクレフ・Verve・・・・・・などなど。
名盤といえるものの多くがこれらマイナーレーベルから生まれている。ビジネスとして成功した人もいれば失敗した人もいるが、いずれも設立の時期は商業主義とは無縁であった。オーナーやプロデューサーの独断と偏見でミュージシャンや曲が選ばれ、演奏の内容も作られていったのだ。

Concordレーベルも設立当初はまさにその「マイナーレベル」としての役割と使命を果たした。
コンコルドはサンフランシスの郊外にある小さな町。ジャズの本場のNew Yorkでも、L.Aでもない。
そのコンコルドの町で車のディーラーをしていた、カールジェファーソンが、趣味が嵩じて自分の町でジャズフェスティバルを始めたそもそものきっかけだ。
最初は、その記録ともいえるライブアルバムの発売からスタートしたが、徐々にそこに出演する日頃録音する機会のないミュージシャンに、自分のやりたいジャズを自由に演奏する場を徐々に与えていった。
過去に名声のあるプレーヤーだけでなく、新人の発掘にも積極的に行っていった。新人といっても、若手だけでなく、実力があり、レコーディングに機会が無かったプレーヤーに対しても。

ピアニストのロストンプキンスもそのような一人だった。
先に発売された”SCRIMSHAW“が、彼にとってのデビューアルバムになる。40歳近くになってのファーストアルバムだった。エリックドルフィーやズートシムスなどとの共演暦もあったらしいが、経歴で一番有名なのはテレビのツゥナイトショーでのレギュラー出演。
その彼のデビュー作となれば、普通であれば、今風の曲を、今風のアレンジを施し、その当時の流行のフュージョン仕立てをするのがアルバム作りの常識であろう。
ところが、このアルバムは「ソロアルバム」。有名になったプレーヤーでもソロアルバムは、その内容や制作のタイミングが難しい。
ソロは、ある意味ミュージシャンの本質そのもの。何の小細工も効かない一発勝負となってしまうものである。商業ベースで考えれば、こんなリスクのあるアルバム作りはありえない。
それができたのが、Concordであったのだ。

ソロが出れば、次はトリオ演奏。ピアノであれば、常識的な展開だ。
パートナーとしては、お馴染みRay Brown とJake Hannaが選ばれた。
商業的に捉えれば、この2人はテレビの競合番組に出ていたメンバー。そのような商業主義の視点で見れば共演のいうのも難しい側面になるが、Concordではこれもお構いなし。プライベートを含めて地元のセッションで顔を合わせていた両者の仲を優先した。

とはいうものの普段レギュラーで演奏している関係ではなく、録音に際しては初顔合わせに近いもの。たまたまトンプキンスの選んだ曲2人は良く知っていたらしい。
早速演奏に入り、この録音は一日で終わる。Concordの特徴である、オーバーダビングや編集などは何もせずに。さらに3人でのトリオ演奏に加え、一作目の延長ともいえるソロも交えている。演奏家としての自信だろう。
2人に共演者を得てピアニストとしてトンプキンスがさらに一段とクローズアップされた一枚だ。

これによりトンプソンが星空の中で見失われること無く、輝く場所を確保できた一枚だ。


1. Lost in the Stars               Weill, Anderson 5:57
2. Wait Till You See Her            Rodgers, Hart 3:55
3. I've Got a Crush on You          Gershwin, Gershwin 4:55
4. Indian Summer                Herbert, Dubin 4:51
5. What Am I Here For?            Laine, Ellington 5:59
6. Lush Life                   Strayhorn 4:12
7. Liza (All the Clouds'll Roll Away)     Gershwin, Gershwin, Kahn 5:24
8. Boy Next Door                Martin, Blane 5:29

Ross Tompkins (p)
Ray Brown (b)
Jake Hanna (ds)

Recorded in 1977
Originally released on Concord CJ-46
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