A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ピアノはそもそもソロで聴かせる楽器であったが・・・

2007-07-18 | CONCORD
SCRIMSHAW / ROSS TOMPKINS

タイトルの“SCRIMSHAW”とは、象牙に施す彫刻のことだそうだ。
ピアノの鍵盤は、白鍵は象牙、黒鍵は黒檀で作られていたのが元々の姿。
今では、そのような物は稀だとは思うが、象牙とピアノは関係が深いということになる。

このアルバムは、まさに、ピアニスト“ROSS TOMPKINS” が、ソロで「鍵盤に彼の全知全霊」を刻み込んだということであろう。
Concordは小編成の演奏はあるが、全編全くソロだけのアルバムはこれが初めてだ。

ジャズの歴史の中で、ピアノはそもそもソロ楽器。
ラグタイムとか、ストライドとか、ブギウギなど奏法は変化していったが、ジャズの歴史の中ではピアノが前面に出てソロ楽器として活躍していた時期もある。
しかし、ジャズバンドが大規模な編成になると、その中でのピアノの役割はリズムセクションの一員に。
だんだん脇役になり管楽器の引き立て役になっていった。
あのカウントベイシーもファッツウォーラーを師と崇め、最初はテクニックを競うようなプレーをしていたが。自分のバンドを持つと、いつの間にかバンドの音の合間を埋める役割に。
いつの間にか、あの特徴ある3本指のプレーに変わっていった。

普段そんな役回りになっているピアノが、ソロになるとどうなるか。
ソロ楽器として思う存分ピアノの魅力を出し切れるかどうかは、プレーヤー次第。腕の見せ所である。

ROSS TOMPKINSという名前は日本ではあまり知られていないと思う。
60年代の後半はNew Yorkに居を構え、AL&ZOOTやClark Terry&Bob Brookmeyerのコンボでハーフノートにも出演していた。この共演盤も探すとあるのだろうが、全く記憶にはない。

そして1972年、テレビのTonight Showに出演していたTompkinsは、テレビ番組が西海岸に移るのと一緒に西海岸に拠点を移すことになる。Bill Berryと同じ境遇だ。この頃のニューヨークのスタジオミュージシャンは同じような境遇であったのだろう。
西海岸に移った後は、引き続き1992年までTonight Showをベースとしていた。コンボや、ルイベルソンのBig Bandにも加わって、地元のクラブ”Donte”などにも出演していた。
この経歴でも分かるように、あらゆる編成のバンドに加わって色々なプレーをしていた。
スタジオミュージシャンの常であるが、このようなキャリアだとそのプレーヤーの本当のプレーの姿がなかなか分からない。

このConcordレーベルにも、すでに、
RHYTHM WILLIE / Herb Ellis & Freddie Green
A PAIR TO DRAW TO / HERB ELLIS & ROSS TOMPKINS
LIVE AT THE CONCORD SUMMER FESTIVAL / LOUIE BELLSONS’S 7
の3枚に加わっているが、それぞれのアルバム(グループ)の個性は微妙に違う。
ピアニストとしてのTompkinsもそれに合わせて色々な顔を見せている。

今回は、ソロピアノ。
さすが、一人でプレーするとなると他人の影響は全く無い。
どう料理するか、相手は曲だけになるが。
今回は、すべてスタンダード曲を取り上げている。いずれも名演が数多くある曲ばかりであるが、一曲目のCheek to Cheekから本領発揮だ。
基本的に原曲を生かしながら、ゆったりとした自由なテンポで始まる。ピーターソンライクのテンポなフレーズに展開していく様は、奇抜さを狙わず、メインストリームジャズのソロピアノの見本のようだ。
素材となる曲の選び方も、特徴あるDJANGOを入れたり変化をもたせている。
自分としては、最後の3曲が特に好きな曲でもあり気に入っている。
久々に聴いたが、特に構える必要も無く、気楽にけれどもじっくり味わいながら聴くことのできるアルバムだ。

CHEEK TO CHEEK
COME RAIN OR COME SHINE
SOON
THE SONG FROM MOULIN ROUGE
LIKE SOMEONE IN LOVE
THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES
GOODBYE
DJANGO
SKYLARK

ROSS TOMPKINS (P)

Recorded in 1976 (CJ-28)

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