A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

有終の美は、他のグラウンドを借りて・・・・・

2007-06-28 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
The Quintessence  / Quincy Jones and His Orchestra

会社勤めをしていると自分のやりたいことを自由にやれることは少ない。
世の中の動きや気配を敏感に察知して「こういうことをやったらどうか?」と提案してもすんなり採用されることなどはめったにない。
サラリーマンでは、だからといって外で勝手にやる訳にもいかず。
よくフラストレーションが溜まるパターンだ。

ジャズの世界ではどうだろう。
やりたいことができるかどうかは自分の意思しだい。誰かのバンドに所属して自分のやりたいことができなければ、別に自分のバンドを勝手に作ればいい。
時間が許せば2股をかけても問題ない。
自分の意思で自由にできるところが会社勤めとは大違いだ。

1961年のNewport Jazz Festivalへの出演をピークとして、QUINCY JONESのオーケストラはレギュラーバンドとしての活動の終わりに向かっていった。
クインシー自身がMercry RecordのA&Rマンとして、そしてプロデューサーとしての活動はますます忙しくなっていた。
でも、自分のBig Bandを維持していくのは難しくなっていた。ただでさえお金が掛かるし、ヨーロッパツアーの借金も残っていたし。

所属するレコード会社から売れるレコード作りを要請され、自分自身のアルバムどころか売れないJAZZアルバム作りをしていることさえ周囲からは冷ややかな目で見られていた。
所属するMercuryからのアルバムも、この年以降は「もっとポピュラーな曲」を、「より聴きやすいサウンド」の演奏スタイルになっていってしまった。
時代の変わり目でMODERN BIG BANDとして登場したQUINCY JONESのオーケストラは、疾風のように現れて、疾風のように去っていったのだ。

ちょうどその節目となったアルバムが、多分このアルバム“QUINTESSENCE”だろう。

アルバムを出したのは ”Impulse"。所属の“Mercury”からではない。
一方で、Impulseは新興のJAZZ専門レーベルとして前年に登場したばかり。
ラインナップにも気合が入って来た時だ。

ジャケットを見ると、QuincuyのクレジットにCourtesy of Mercury Recordと記されている。JAZZの世界では良くあることだ。
しかし、自らアルバム作りに携わっている人間のアルバムが別レーベルから出るのは尋常とは言えない。本来であればQuincyのやりたいことを、自分の所属するレコード会社で自由にできて、それがアルバムになるのが理想的だが。
こればかりは、Blue noteのようなJAZZ好きが始めた老舗のレーベルや、Concordのようにオーナーが趣味で始めたようなところでなければ難しい。
いわゆるメジャーレベールでは会社の意向にどうしても従わざるを得ない。

アルバムを聴くとこれが実に素晴らしい。
まさにQuincyのオーケストラのここ数年の活動の集大成といった内容だ。
これを、所属元のMercuryからではなく、他のレーベルから出さざるを得なかったとうのが、まさにQuincyがその時置かれていた状況だったのだろう。
クインシーも、このころは会社勤めのサラリーマンだったのだ。

折り合いが付かなければ、他のレーベルに許可を貰って単発で吹き込むというのが常であったが、これを許可してもらっただけでもラッキーだった。普通のサラリーマンだったら「兼業禁止」の就業規則で身動きがとれないものだ。

この名盤が生まれたのも、Mercuryのこの時期のコンセプトや基本方針とずれていたのが幸いしたのかもしれない。

内容的にはQuinyのオリジナルを含め、選曲もそして演奏も素晴らしい。
つい最近紹介したPHIL WOODSのアルバムに入っていた曲も何曲かある。
その時から、“For Lena and Lennie”が妙に印象に残っている。実に、いい曲だ。

そして、このアルバムでエポックメーキングなことがある。
全体が3つのセッションに分かれているが、Phil WoodsやJerome Richardsonのように、それまでのクインシーオーケストラのメンバーも勿論いるが、2人のプレーヤーの存在が目を引く。
一人はThad Jones。そして、もう一人がOliver Nelson。
ThadとQincyは、ベイシーのオーケストラを通じて旧知の仲。一緒にアルバムも作っている。でもクインシーのオーケストラに参加したのは、多分これは初めてだろう。
Quincyが自分の想いを、このアルバムを通じて2人に託したように思えてならない。
2人はプレーヤーだけではなく、アレンジャーとしても一流。
間違いなく、クインシーのオーケストラへのこだわりを、その後2人が引き継いで自分のオーケストラやアレンジで大活躍することになるのだが。

真相は如何に?

●For Lena And Lennie
●The Twitch

Jerry Kail, Joe Newman, Clyde Reasinger, Clark Terry (tp)
Billy Byers, Paul Faulise, Melba Liston (tb)
Julius Watkins (frh)
Phil Woods (as)
Eric Dixon, Jerome Richardson (ts)
Bobby Scott (p)
Buddy Catlett (b)
Stu Martin (d)
Quincy Jones (arr, cond)

Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, November 29, 1961

●Robot Portrait
●Little Karen
●Hard Sock Dance

Al DeRisi, Freddie Hubbard, Thad Jones, Snooky Young (tp)
Billy Byers, Paul Faulise, Rod Levitt, Melba Liston (tb)
Julius Watkins (frh)
Jerome Richardson, Phil Woods (as)
Eric Dixon, Oliver Nelson (ts)
Patti Bown (p)
Milt Hinton (b)
Bill English (d)
Quincy Jones (arr, cond)

Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, December 18, 1961


●The Quintessence
●Straight, No Chaser
●Invitation

Thad Jones, Joe Newman, Ernie Royal, Snooky Young (tp)
Billy Byers, Paul Faulise, Curtis Fuller, Melba Liston, Tom Mitchell (tb)
Ray Alonge, Jim Buffington, Earl Chapin, Julius Watkins (frh)
Harvey Phillips (tu)
Phil Woods (as)

Jerome Richardson (as, ts) Oliver Nelson (ts)
Gloria Agostini (harp)
Patti Bown (p)
Milt Hinton (b)
Osie Johnson (d)
Quincy Jones (arr, cond)

Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, December 22, 1961

コメント
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