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「武藤日銀総裁」に反対する理由

 最近の一部の報道では、三月に予定されている日銀総裁の人事で、民主党が与党案に反対して揉めることを牽制する論調がある。たとえば、経済が危機的状況にあるのに、日銀総裁という「司令塔」を欠いていていいのか、というような議論だ(主に、「読売」の論調だ)。与党は、元財務次官の武藤副総裁を昇格させたいようだし、これまでの経緯から見て、彼の昇格は、半ば既定路線だったのかも知れない。
 ただし、民主党はかつて武藤氏が財務省出身であることを理由に副総裁就任に反対した経緯があり、武藤総裁には反対という立場のようだが、「官僚出身者の全てがダメなわけではない」などと、例によって余計なブレを見せている。

 私も、武藤氏の総裁昇格には反対だ。ただし、彼が財務省出身ということも反対理由の一つではあるが、それ以上に重要な理由が二つある。

(1)武藤氏は、総裁在任中にファンドや株式に投資していて、ファンドの解約など運用行為(村上ファンドの解約申し入れは、明らかに運用行為であり、内規違反だろう)を行っていた福井現総裁を無批判に「支えて」いた人だ。少なくとも、表立って、福井氏を批判し、「辞任すべきだ」という正論を吐いた訳ではなかった。こういう根性無しを総裁にしていいことはなかろう。加えて、彼の総裁昇格を認めることには、同時に福井氏が総裁不適任であったことを曖昧にする意味がある。

(2)武藤氏は日銀の政策委員の一人として、現在の日銀の金融政策に責任を負っている一人であり、彼の昇格の可否には、当然、金融政策の当否の評価が反映すべきだろう。日銀は、物価が十分上昇していないにも関わらず、「フォワード・ルッキングな政策」と称して、その後の景気が強いと決めつけて、ゼロ金利を解除し、さらにもう一回金利を引き上げ、その後も金利上昇期待をふりまき続けた。目下の日本及び、これに影響の大きいアメリカの景気状況を見るに、この「フォワード・ルッキング」には間違いがあったのではないか。現行の制度では、総裁も含めた政策委員の人事を通してしか日銀の勤務評定は具体的な形で日銀に反映しないのだから、福井体制の金融政策への評定の反映として、武藤氏の総裁昇格は見送られるべきだ。

 ついでに言えば、民主党は、多くの国民の気持ちが読めていない。多くの国民は、大連立的な自民党との馴れ合いではなく、少なくとも正当な根拠のある「反対」事案に関しては、ブレることなく与党と対決して欲しいと考えている。「日銀総裁に官僚出身者は不適当」というのは十分国民の共感を得られる反対理由だ。

 では、誰がいいか。私は、たとえば、植田和男氏を推す。民主党も、具体的な候補名を出して、与党に、「この人のどこがダメか?」と問うてみてはどうだろうか。もちろん、その場合には、武藤氏がなぜダメかもしっかり説明するといい。国民は、決定過程がよく見えて、且つ、納得の出来る人物が日銀総裁になることを望んでいる。そういう意味では、日銀総裁人事をオープンに議論せざるを得ない、政治の「ねじれ」状態は悪くない。読売新聞も心配していることだし、この問題は、早く決着を付けてはどうか。
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