goo

社会保険庁不祥事の根本にある問題

社会保険庁の不祥事が止まらない。今度の国民年金の勝手免除は明らかな法律違反だし、大規模である。しかも、事実が徐々に露見するところからも分かるように、違反を隠蔽しようとする体質は治っていない。

この問題は、国民年金保険料の収納率向上を大方針に掲げた村瀬長官の最大の施策に関わるものでもあり、村瀬長官は、さっさと辞めるべきだろう。事実の解明は大事だが、悪事の責任者は「利害関係者」であるから、事実解明に不適任であることを謙虚に認めるべきだ。小泉首相の任命責任を問う声につながることを恐れたものか、罷免の声が上がらないが、川崎厚生労働大臣は彼をさっさと解任して、第三者による事態の解明にあたるべきだろう。

ところで、この問題の根源には、そもそも、国民年金の保険料徴収を社会保険庁がやることのおかしさがある。年金保険料の不払いがいけないなら、これは税金と同じ性格のものだし、何よりも、フェアに集めて、かつ低コストで集めるためには、保険料として徴収するのであっても(「国民年金税」でもいいと思うが)、国税庁が集めるのが合理的だ。もう一歩進めて、国民年金の財源を全額税金化するのも手だろう。

何はともあれ、年金は社会保険庁がやらなくてもいいし、もっとハッキリ言うなら、厚生労働省にやらせない方がいい。「コスト」という大きな理由に加えて、かつて、銀行が自らの不良債権を正確に調べて申告できなかったように、現在の年金問題に主たる責任がある厚労省には、現実をふまえた年金改革は無理なのだ。

上記の議論は前からあった。社会保険庁に関しては、解体論(国民年金と政府管掌健保のうち、少なくとも前者を解体する)があったのだが、結局、官僚の組織温存のパワーが勝り、社保庁長官だけ民間からトップを持って来てお茶を濁したことが、今回の不祥事の底流にある。トップだけ、民間から持ってきて、実質は親官庁と官僚が牛耳るというのは、他の組織にもある「インチキ改革」のパターンだ。

何はともあれ、国民年金は社会保険庁ではなく、国税庁に徴収と支払いをやらせるべきだ。「払わなくても済む、国民の義務」はおかしいし、「請求しなければ給付が貰えない」というような不親切な「保険」は願い下げだ。「よりフェア」で「遙かに低コスト」なのだから、社保庁を早く外して、国税庁に当たらせるべきだろう。「年金は保険であり、加入者が自分で掛けるという参加意識を持って貰うことが必要だ」という、長らく続いた無意味な精神論にまたごまかされてはいけない。国民年金の実態は強制的な(たとえば、同一納税額なら、若者は「不利」だ)社会保険であり、しかし、その強制の適用が不公平・非効率になされているのが現状なのだ。
コメント ( 20 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

村上ファンドと阪急電鉄の帳尻

阪急電鉄が、ついに阪神電鉄株のTOBを決定した。価格は930円だという。投資ファンドという性格上、結局のところ、こういった形でまとめて持ち株を引き取って貰いたい村上ファンドとしては、「これで、最低限の出口は確保した」と思ってホッとしているだろう。

なお、今回のTOB(45%以上が成立条件)にあっては、事実上、村上ファンドだけがTOBの成否を知ることになり、彼らは、非常に有利な立場に立つ。彼らがTOBに「応じるか」「応じないか」は、彼が持っているオプションだから、経済合理的には、ぎりぎりまで態度を表明せずに各種の駆け引きを行うはずだ。

巷間言われていた1200円(村上側)と800円(阪急側)の中間よりも安いとはいえ、この株価は決して安くはないと思う。阪急側は、資産査定をマジメにやった結果だというが、マジメすぎたのではないかと、他人事ながら心配だ。筆者は、阪急は、「明らかに安い」株価で(たとえば600円~700円くらいで)買うのでなければ、阪神電鉄を買うことは経営的に正当化しにくいと思っていた。

しかし、(1)国交省の意向、(2)銀行の利害、(3)関西財界の気分、を考えると、ここは少々高いお金を払っても、阪神の救世主になっておくことが得だ、という別次元の判断が、阪急電鉄の経営者には、あったのかも知れない(単なる、個人的な功名心かも知れないが)。

この推測に立つ場合に、心配なのは、ズバリ言って、阪急電鉄または阪神電鉄の鉄道料金の近い将来の値上げだ。

阪急が、これだけ高い株価で阪神電鉄を買うのは、「経営統合による利益が見込めるから」(本当かな?)ということなのだから、二、三年のうちに、料金値上げがあるということになるのはおかしい。しかし、仮に、あくまでも「仮に」だけれど、今回のTOBが国交省の意を受けたものだとすると、国交省は、見返りに両電鉄何れかの料金値上げを簡単に認める可能性がある。この場合、いわば、両電鉄の利用者が阪神電鉄株のプレミアムを払わされたことになるのだが、そうならないという保証はない。

阪急電鉄が、驚異的に素晴らしい経営を行って、利用者が上記のようなバカを見ることがないよう、「結果オーライ!」を祈りたい。
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする