政権公約(2)-民主党の経済政策-
民主党は11月27日に,ようやくマニフェストを発表しました。
民主党の経済施策には自民党と似たところも,異なる面もあります。
似ている点は,民主党も金融緩和,デフレ克服(インフレ誘導),経済成長名目3%(実質2%)を目指すことなどを目標と
していることです。
しかし,自民党の場合と同様,金融緩和をどこまで進めるのかは簡単ではありません。
これは金融緩和は劇薬ですから,用法を誤れば,むしろ国民経済を混乱させます。
また,経済成長名目3%も,現在のデフレ経済の中で実現することはかなり困難です。
民主党の経済政策が自民党の政策と大きく異なるのは,民主党は,新たな成長産業として具体的に分野を挙げている点です。
前回にも書いたように,自民党は大胆な金融緩和(紙幣を大量に刷って市中に放出する)と公共事業の拡大以外,具体策は示
していません。
たとえば,「成長戦略の推進」,「ニッポン産業再興プラン」,「国際転換戦略」などは具体的な産業分野も中身には一切触
れていません。
これに対して,民主党は具体的に3つの成長産業分野を挙げています。
一つは,「グリーンエネルギー革命」のために新エネルギー産業(環境・エネルー分野)です。
この産業分野で,国内的だけでなく,海外市場の需要をも取り込むことを目指している,と記されています。
たとえば,太陽エネルギー,風力,小水力,それらによって作られた電気を貯める高性能蓄電池の開発は確かに成長産業になる
可能性をもっています。
現在,脱原発,卒原発の機運が高まっていることを考えると,この分野の研究・開発は経済の根幹に関わる重要産業であること
は間違いありません。
二つは,医療・介護分野の研究体制を強化し,成長産業に育成することです。
この分野では,再生医療,特にiPS 細胞などの研究に集中的な支援を行うとしています。
これは,中山教授のノーベル賞にあやかった感じがしないでもありません。
しかし,これを別にしても,医療・介護技術の研究は,日本の高い技術力を考えれば,十分成長産業として期待できるでしょう。
さらに,介護の分野では,もっと多くの雇用が生まれる可能性があります。
三つは,農林業を6次産業へ転換し,2015年度までに3兆円産業に育成することです。
この分野に関しては,突然,数値目標が掲げられています。
あと3年で,農林業を6次産業に成長させることは簡単ではありません。
しかし,私個人としては,農業の再生こそが,日本の将来にとって,死活の問題になると考えています。
なぜなら,日本は一方で,広大な面積の耕作放棄農地を抱えているのに,食糧の6割以上を輸入に頼っているからです。
日本は,鉱物資源こそ少ないものの,日照,気温,水という農業に必要な3要素を全て備えている,先進国としては希な農業
資源大国なのです。
以上の3分野はこれまでの民主党,あるいはその他の政党が正面から取り上げてこなかった分野で,これからの成長産業とし
て大いに期待されます。
ただ,グリーンエネルギー革命も,医療・介護も,その技術開発には成果がでるまでには多額の研究開発費と時間がかかります。
さらに,成果が出ないかもしれないという大きなリスクが伴います。
とりわけ農林業の活性化には,たんに生産性や国際競争力の問題だけでなく,農業従事者の絶対的な減少と高齢化という,
人的な要素が関わっています。
なお,特定の産業分野ではありませんが,中小企業の支援も掲げています。
この点で,どちらかとえば大企業中心である自民党とは異なります。
以上見たように,民主党のマニフェストに現れた経済政策は,自民党の政権公約より具体的で,納得できる内容を含んでいます。
もし,このような政策をもっていたのなら,なぜ,今まで推進してこなかったのか,その点が疑問です。
民主党は,自民党や日本維新の会と同様,日本を貿易立国と考え,TPPへの交渉参加を表明しています。
しかし,日本経済にとって貿易だけでなく国内経済を活性化することも重要です。
現在の円高・デフレは不況の原因であると同時に,あるいはむしろ,結果でもあります。
まず,円高は日本の事情というより欧米の金融不安が原因です。
デフレは需要の低迷から物が売れない状態です。
この問題につては,前回,自民党の政権公約と同じことがいえます。
つまり,国民の所得が低く抑えられているため,購買力が減少しているのです。
企業は利益を確保するため,あるいは輸出企業は国際競争に勝つため,賃金をずっと低く抑えています。
このことが,巡りめぐって国内市場を狭くしているのです。
いわば,自分で自分の首を絞めている面があります。
日本維新の会が,最低賃金制度を廃止し,さらなる低賃金を誘導しようとしています。
これは,企業にとっては短期的な利益をもたらすかも知れません。
しかし,長期的には国内景気を一層低下させ,経済を破綻させる可能性さえあります。
以上,総合的に考えて,民主党の経済政策の方向は間違ってはいないように見えます。
しかし,消費税増税は,せっかく国内経済を活性化させる諸政策の良さを帳消しにしてしまう要素ももっています。
現在の日本経済の低迷は根が深く,一発逆転という博打的な政策では回復しません。
金融緩和で無理に引き上げようとすれば,かえって不況の値を深めることになりかねません。
むしろ,地道に内需を拡大することから始めるほうが,結局は近道なのです。
そのためには,雇用の安定と賃金の上昇が是非必要です。
これらは企業の利益を損なうことのように見えますが,国民の所得が増えれば,これは巡りめぐって,消費が増え
企業業績の向上につながります。
これは企業にとって容易なことではないかも知れませんが,雇用不安と低賃金によって景気が回復することはあり
得ません。
民主党は11月27日に,ようやくマニフェストを発表しました。
民主党の経済施策には自民党と似たところも,異なる面もあります。
似ている点は,民主党も金融緩和,デフレ克服(インフレ誘導),経済成長名目3%(実質2%)を目指すことなどを目標と
していることです。
しかし,自民党の場合と同様,金融緩和をどこまで進めるのかは簡単ではありません。
これは金融緩和は劇薬ですから,用法を誤れば,むしろ国民経済を混乱させます。
また,経済成長名目3%も,現在のデフレ経済の中で実現することはかなり困難です。
民主党の経済政策が自民党の政策と大きく異なるのは,民主党は,新たな成長産業として具体的に分野を挙げている点です。
前回にも書いたように,自民党は大胆な金融緩和(紙幣を大量に刷って市中に放出する)と公共事業の拡大以外,具体策は示
していません。
たとえば,「成長戦略の推進」,「ニッポン産業再興プラン」,「国際転換戦略」などは具体的な産業分野も中身には一切触
れていません。
これに対して,民主党は具体的に3つの成長産業分野を挙げています。
一つは,「グリーンエネルギー革命」のために新エネルギー産業(環境・エネルー分野)です。
この産業分野で,国内的だけでなく,海外市場の需要をも取り込むことを目指している,と記されています。
たとえば,太陽エネルギー,風力,小水力,それらによって作られた電気を貯める高性能蓄電池の開発は確かに成長産業になる
可能性をもっています。
現在,脱原発,卒原発の機運が高まっていることを考えると,この分野の研究・開発は経済の根幹に関わる重要産業であること
は間違いありません。
二つは,医療・介護分野の研究体制を強化し,成長産業に育成することです。
この分野では,再生医療,特にiPS 細胞などの研究に集中的な支援を行うとしています。
これは,中山教授のノーベル賞にあやかった感じがしないでもありません。
しかし,これを別にしても,医療・介護技術の研究は,日本の高い技術力を考えれば,十分成長産業として期待できるでしょう。
さらに,介護の分野では,もっと多くの雇用が生まれる可能性があります。
三つは,農林業を6次産業へ転換し,2015年度までに3兆円産業に育成することです。
この分野に関しては,突然,数値目標が掲げられています。
あと3年で,農林業を6次産業に成長させることは簡単ではありません。
しかし,私個人としては,農業の再生こそが,日本の将来にとって,死活の問題になると考えています。
なぜなら,日本は一方で,広大な面積の耕作放棄農地を抱えているのに,食糧の6割以上を輸入に頼っているからです。
日本は,鉱物資源こそ少ないものの,日照,気温,水という農業に必要な3要素を全て備えている,先進国としては希な農業
資源大国なのです。
以上の3分野はこれまでの民主党,あるいはその他の政党が正面から取り上げてこなかった分野で,これからの成長産業とし
て大いに期待されます。
ただ,グリーンエネルギー革命も,医療・介護も,その技術開発には成果がでるまでには多額の研究開発費と時間がかかります。
さらに,成果が出ないかもしれないという大きなリスクが伴います。
とりわけ農林業の活性化には,たんに生産性や国際競争力の問題だけでなく,農業従事者の絶対的な減少と高齢化という,
人的な要素が関わっています。
なお,特定の産業分野ではありませんが,中小企業の支援も掲げています。
この点で,どちらかとえば大企業中心である自民党とは異なります。
以上見たように,民主党のマニフェストに現れた経済政策は,自民党の政権公約より具体的で,納得できる内容を含んでいます。
もし,このような政策をもっていたのなら,なぜ,今まで推進してこなかったのか,その点が疑問です。
民主党は,自民党や日本維新の会と同様,日本を貿易立国と考え,TPPへの交渉参加を表明しています。
しかし,日本経済にとって貿易だけでなく国内経済を活性化することも重要です。
現在の円高・デフレは不況の原因であると同時に,あるいはむしろ,結果でもあります。
まず,円高は日本の事情というより欧米の金融不安が原因です。
デフレは需要の低迷から物が売れない状態です。
この問題につては,前回,自民党の政権公約と同じことがいえます。
つまり,国民の所得が低く抑えられているため,購買力が減少しているのです。
企業は利益を確保するため,あるいは輸出企業は国際競争に勝つため,賃金をずっと低く抑えています。
このことが,巡りめぐって国内市場を狭くしているのです。
いわば,自分で自分の首を絞めている面があります。
日本維新の会が,最低賃金制度を廃止し,さらなる低賃金を誘導しようとしています。
これは,企業にとっては短期的な利益をもたらすかも知れません。
しかし,長期的には国内景気を一層低下させ,経済を破綻させる可能性さえあります。
以上,総合的に考えて,民主党の経済政策の方向は間違ってはいないように見えます。
しかし,消費税増税は,せっかく国内経済を活性化させる諸政策の良さを帳消しにしてしまう要素ももっています。
現在の日本経済の低迷は根が深く,一発逆転という博打的な政策では回復しません。
金融緩和で無理に引き上げようとすれば,かえって不況の値を深めることになりかねません。
むしろ,地道に内需を拡大することから始めるほうが,結局は近道なのです。
そのためには,雇用の安定と賃金の上昇が是非必要です。
これらは企業の利益を損なうことのように見えますが,国民の所得が増えれば,これは巡りめぐって,消費が増え
企業業績の向上につながります。
これは企業にとって容易なことではないかも知れませんが,雇用不安と低賃金によって景気が回復することはあり
得ません。