あゝ青春に花よ咲け

2023-04-09 12:50:26 | 青春歌謡
あゝ青春に花よ咲け  松島アキラ



流れる雲は 風に乗り
小鳥は唄う 青い空
花よ、咲け咲け
青春の
夢を彩る 赤い花
涙も甘き 恋の花

やさしき君を 一目見て
ほのかに燃えし 恋ごころ
誰に、語らん
この嘆き
君は命の花なのと
しのべどつきぬこの想い

夢見るために 夢に酔い
恋するために 恋に酔う
花よ、咲け咲け
青春の胸に火ともす 赤い花
あこがれもやす 恋の花


何といってもこの一番の歌詞。

空は青く、雲は流れ、小鳥は唄い、花は咲く。

花は夢を彩り恋を彩り涙を彩る。

これぞまさしく青春歌謡。(笑)
 
ところで、「花よ咲け咲け」と歌われるこの花は、個別のどれかの花というより、むしろどの花でもないすべての花、「花」一般です。

言い換えれば、実在の花というよりメタファーの花、イマージュ(イメージ)の花。

さらに言いますと、本質としての花、観念(イデア)としての花。
 
フランスの詩人、マラルメはエッセイ「詩の危機」で、こんな意味のことを言いました。
 
私が「花」と言うと、現実のどんな花束にもない「花」の観念そのものが立ちのぼる。
 
敢えていえば、青春歌謡の「花」もマラルメ的。
 
三番冒頭、「夢見るために夢に酔い/恋するために恋に酔う」。

夢想と陶酔は青春の本質。

その本質を見事に言い留めてみせています。
 
ただ、ちょっと残念なのは二番。

「君は命の花なのと/しのべどつきぬこの想い」
 
一目見た「やさしき君」に「恋ごころ」を燃やしながら、実ることなく嘆き偲んで想いは尽きぬ。

省略されている主語は語り手。

語り手は歌手本人と重なるので男。

文脈上からも、相手の「やさしき君」は「やさしき」からして女のイメージ。

ならば「君」に恋した語り手はやっぱり男のはず。
 
にもかかわらず、「君は命の花なの」と偲ぶのです。

「君は命の花なの」は語り手の心内語。

しかし、これはまぎれもない女口調。

たぶん曲の旋律に合わせた結果でしょうが、不自然で違和感が残ります。
 
ビクターの青春歌謡は時々こういう雑な詞を書きます。

コロムビアの青春歌謡にはこんなことはありません。

コロムビア作詞家の長老・西條八十とビクターの長老・佐伯孝夫の文学的教養や作詞姿勢の違いがこんなところにも表れています。

(歌詞へのツッコミ、人生幸朗師匠のまね)






























































































































































































 




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