明治の食事情合成化学工業の発展

石炭化学
１８世紀後半は石炭文明の時代で、燃料・動力源がすべて石炭でした。 石炭を熱すると、石炭ガスというガス燃料が出た後、どろりとした黒い液体のコールタールが出てきます。コールタールを蒸留した液体から ベンゼンが出てきます。このベンゼンに硝酸と反応させるとニトロベンゼンというものが出来ますが、このニトロベンゼンに金属の錫を加えて水蒸気蒸留すると、還元という化学反応が起こってアニリンという物質が出て来ます。 アニリンがコールタールからとれたので、インジコもとれるだろうと思われました。
当時、天然インジゴは大変高価で取り引きされておりました。科学者はアニリンから天然インジゴ（藍）と同じ色を出す研究をしました。やがて、化学者達の努力が実り、コールタールを原料とする合成色素がヨーロッパで生まれることになります。また、石炭化学からサッカリンが工業化されました。
　合成色素のことをタール色素とよぶことがあるのは、コールタールを原料とした合成色素が生まれたからなのです。初期のサッカリンが石炭化学から合成されたので、タール色素が食品に使用すると人体に有害であることが判明すると、サッカリンも同様な疑いがかけられました。明治時代にサッカリンが禁止になったのはタール着色料禁止の巻き添えであり、政治・財政・税収の都合でありました。
　アメリカ産牛肉の輸入禁止が政治状況で解禁されと同じです。サッカリンは120年以上の使用の歴史があります。特に日本では終戦直後ほとんどの国民は甘味はサッカリンで取っていました。日本で膀胱ガンの発生が増えたということは無く、世界で一番長寿です。砂糖（甘味）は世界史の中でも政治で左右されます。表向きは食の安全・安心ですが。
日本に化学染料が明治の後半に輸入されると藍栽培は打撃を受け、徳島県では大根栽培に転換し、阿波タクワンの産地となりました。

サッカリン日本に輸入した時の状況　
１８８６年（明治１９年）　
　東京下谷池ノ端「酒悦」野田津右衛門、「福神漬」を創製。　
　ドイツで発明されたサッカリン、砂糖の代用品として輸入販売。