年寄りの漬物歴史散歩

 東京つけもの史 政治経済に翻弄される
漬物という食品につながるエピソ-ド

サッカリンの表示

2006年10月31日 | 趣味としての漬物
サッカリン サッカリンNa、溶性サッカリン

白色の結晶または白色の粉末でサラサラしていて甘味料として清涼飲料水、冷菓、漬物、しょうゆなどに使用されます。食品以外では矯味料として歯磨用に使用する。
製造方法はトルエンまたは無水フタル酸を原料としてサッカリンを作り、水酸化ナトリウムで中和して製造されます。明治の初めは石炭を乾留してできたトルエンからサッカリン製造されていたので危険性が疑われていた。
特性 砂糖の約300倍の甘さです。
現在日本のサッカリン使用基準は次のようになっています。
こうじ漬、酢漬、たくあん漬 2.0g/kg未満
粉末清涼飲料 1.5g/kg未満  
かす漬、みそ漬、しょうゆ漬の漬物、魚介加工品(魚肉練り製品、つくだ煮、漬物、缶詰または瓶詰食品を除く)1.2g/kg未満  
海藻加工品、しょう油、つくだ煮、煮豆 0.50g/kg未満  
魚肉練り製品、酢、清涼飲料水、シロップ、ソース、乳飲料、乳酸菌飲料、氷菓、0.30g/kg未満(5倍以上に希釈して用いる清涼飲料水及び乳酸菌飲料の原料に供する乳酸菌飲料又は発酵乳にあっては1.5g/kg未満、3倍以上に希釈して用いる酢にあっては0.90g/kg未満)  
アイスクリーム類、あん類、ジャム、漬物(かす漬、こうじ漬、しょう油漬、酢漬、たくあん漬、みそ漬を除く)、発酵乳(乳酸菌飲料の原料に供する発酵乳を除く)、フラワーペースト類、みそ 0.20g/kg未満  
菓子 0.10g/kg未満  
前記の食品以外の食品及び魚介加工品の缶詰又は瓶詰め 0.20g/kg未満となっています。
今ではほとんどの食品にはサッカリンは用いられていませんが、戦争末期から戦後の物資不足の時代に前記の食品に使われたと思います。食品によってサッカリンの使用量が違うのはたくわん等の漬物類は摂取量が少ないためと思われる。  
 使用基準の中に漬物が多いのは塩分との絡みでサッカリンを使用する必要性があったのであり現在でもサッカリン使用の漬物は多い。

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築地市場と銀座ヨットクラブ事件

2006年10月30日 | 築地市場にて
浜離宮と築地市場との間は築地川の名残です。1989年3月10日東京都に撤去されてしまいましたが、ここには銀座ヨットクラブ?とかいう小規模のマリーナがあり、バブルの頃はクルーザーでここまで乗り付けてそのまま銀座へ繰り出す、なんて金持ちもいたとか。美容整形の新橋十仁病院の名前の入ったヨットもあった記憶があります。十数隻以上あった気がします。狭い築地川は本当に専有していたと思われていて会員権(ゴルフ会員権のようなもの)もあったといわれます。

撤去のことは今でもはっきりと覚えています・豊洲市場の計画ができるまえ、つまり現築地市場を営業しつつ建替えるという案がありました。そして工事を順調に行なうため工事用通路を確保する必要がありました。そのため築地川を不法占拠していた銀座ヨットクラブを排除する必要がありました。都の職員は外部の横槍をとても恐れていた記憶がありました。銀座ヨットクラブを撤去後次は埋め立てか桟橋でもめ、桟橋案が通りましたが常時通行できたのはほんの1年ほど前からで、中央区が工事用の通路として作ったのだからといって常時開通を阻止していたと聞いています。どうなのでしょうか?事実確認はできていません。
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築地市場のハロウィーン

2006年10月29日 | 築地市場にて
築地市場のハロウィーン
昨年はハロウィーン用のかぼちゃ?11月末まで青果部隅にパレットに積んだまま飼料用の巨大なかぼちゃが置いてありました。今年は昨年より一回り小さなかぼちゃが青果部より波除神社に出かけたみたいです。それでも直径は50センチを超えていましたよ。
 かぼちゃの漬物の旬は終わりました。熊本県からやってきます。漬物用のかぼちゃと青果のかぼちゃは少し品種が違っていて、色が鮮やかです。糖度たっぷり自然の甘味。
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サッカリン 昭和18年

2006年10月28日 | 趣味としての漬物
昭和18年3月11日朝日新聞
最近砂糖の不足を補うためサッカリンを煮物に使っている家庭も少なくない。サッカリンは果たして栄養的に見て薦められる物かどうか。
理化学研究所xx氏談
元来サッカリンは糖尿病の人や肥満しすぎた人などが口にするために用いるもので普通の人は砂糖をとると炭酸ガスと水に分解して熱量を発生し活動力の源泉となるがサッカリンは分解しないからその作用は起こらない。
 家庭では煮物する場合は全然甘味がないと女子供などは食欲が進まないし、ことに都会人は塩味だけではなかなか食べられないから全然砂糖がないときは栄養にはならないが味覚を刺激するくらいの効用はあろう。
またサッカリンは防腐作用にもなるか、欠点はサッカリンを使った煮物などは食べた後苦味があることで少しくらい使ったのでは解らないか相当使うと苦味があるのでサッカリンを使ったことが解る。
警視庁衛生課xx技師談
サッカリンは販売に供する飲食物に使うことは禁止しているが家庭で自家用に使うには禁止していない。
 しかし、販売用の飲食物に使うのを禁止している位だから栄養的に言って決して良いとは言えない。砂糖が全然ないときはともかくとして家庭ではなるべく使わないほうが良い。

今、サッカリンの危険性の論議は
 発ガン性(膀胱癌)、発ガン補助、胎児に強い毒性、網膜に奇形、アレルギー(光過敏症)といわれています。戦前と同じ物質なのに随分違っています。日本では100年以上の人体実験済で特に戦争末期から戦後の混乱期に多量サッカリンを摂取していて、いわゆる団塊の世代人で親からのサッカリンの影響を受けていたという話はまだ聞いていません。
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サッカリン 昭和16年 沢庵漬に使用許可

2006年10月27日 | タクワン
昭和16年7月9日朝日新聞
沢庵に甘味の“解禁”
サッカリンは腎臓病やその他の医療用とは別として販売する飲食物への使用は「人工甘味質取締規則」によって固く禁止されていたが、厚生省衛生局では8月から同規則の一部を改正し、特に「沢庵漬」に限り一定量のサッカリン使用を許すこととなった。
 沢庵漬は都市の好みで段々と甘くなる傾向にあり業者がまた砂糖を使ったのでは発酵腐敗するので従来密かにサッカリンを混入しているのが実情だが沢庵に必要な甘味量4000分の1程度のサッカリン使用なら衛生上害がないので今度は許すとしたもの。

なぜ沢庵漬だけがサッカリン使用の解禁となったかはまだ不明。しかし、このことが戦後の添加物問題が生じると漬物が指摘される原因であったかもしれない。想像だが戦地に送る沢庵漬は故郷を偲ぶ軍需物資として重要視されていてサッカリンを加えた甘味が必要だった。なお、砂糖では暖かい地方では腐敗するので塩分が強くなりすぎる沢庵漬となる。
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サッカリン 昭和15年④警察と庶民の間で

2006年10月25日 | 趣味としての漬物
昭和15年12月28日朝日新聞
正月料理の伊達巻の調味料として禁制のサッカリンを用いたのが発覚し、保存していたサッカリン1万gはその筋は押収され廃棄処分に付されたという。甘味欠乏の今日、さりとて惜しいものである。1gのサッカリンは砂糖の800gに匹敵する甘味量を有するから1万gのサッカリンは1万8千斤の砂糖、これを現今の配給量一人一日あたり0.6斤の割りにすると3万人分に相当する。
 私は化学技術者で10年ほど前研究用として入手した10gのサッカリンの残余を探し、これを家庭調理用として使っている。新体制下甘味不足の嘆声あるところに紅茶に、煮物に、お汁粉に充分に味覚を満足させ、しかもその所要量は一ヶ月に2gも出ない。元来砂糖は含水炭素の一種として栄養を有しているがサッカリンにはそれがない。しかし砂糖を用いるのが栄養を取るのが主たる目的でなく、味覚を満足させるための調味料として用いられていると言って差し支えない。
 しからば栄養価無く、無害にして調味効果は絶大なサッカリンを商品として食料品に使用禁止されたのはなぜか?
 それは平時の砂糖の生産量が豊富な時代に砂糖の販路を保護し,税源を保持せんがためであったことは周知の事実である。今や甘味不足に悩む時政府は速やかにサッカリン使用を解禁して砂糖を節約と甘味満足の一石二鳥の妙策を取られたい。これほど代用の価値の大きいサッカリンが古い法規の犠牲となって廃棄処分になされること悲しむ。

時局が切迫し、日常の必要欠くべからざる砂糖の不足はサッカリンを使用するように暗に誘導しているようである。法を守らせようとする警視庁衛生課と庶民の間に報道は板ばさみとなる。
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サッカリン 昭和15年③菓子は贅沢品

2006年10月24日 | 趣味としての漬物
昭和15年7月27日東京朝日新聞
高級菓子に贅沢品禁止令
商工省は砂糖の戦時規格の確立で贅沢に砂糖を使った菓子の禁止。

風月堂本店の談
公定価格は店の暖簾とか所在地が一切考慮がなされておらず、費用のかかる銀座と場末の店も同じ、老舗の品も無責任な店も同じというわけですのでこの点を何とかしてもらいたいと思います。
昭和15年7月28日東京朝日新聞
サッカリン擁護論台頭
 高級菓子追放令とこの頃の砂糖不足からサッカリン使用是非が学者の話題を賑わしている。提案者はこの間亡くなった東大医学部の呉教授で絶筆となった「サッカリンは有害か否か」の論文をかいつまんでご披露すると
 サッカリンの使用禁止は昭和3年同7年の内務省令に規定されているのだが、これは大日本精糖株式会社の故重役鈴木藤三郎氏あたりが奔走して「糖業保護」政策というのが第一。第二は同じ甘味料でただ甘いだけで砂糖と異なって栄養分の含水炭素を含まないからそれは「羊頭苦肉」となるという扇情的原理から作られたという。ところで呉博士は30年の臨床経験で未だ一回もサッカリン中毒患者を見たこともないし、また20年余博士自身使用したが何も異常はないという。
 法規は時代と共に変わっていく。死せる法規は廃棄すべしという意見だが厚生省あたりでも「砂糖不足時代だ。味覚の戦時体制版」として無害なサッカリンを許可し、その代わりに税金を掛けて砂糖増産を図れば一石二鳥の名案だ」という意見がポツポツと台頭しているようである。

サッカリンの使用禁止は昭和3年同7年の内務省令は誤りで実際は明治34年の人工甘味質取締規則のこと。
砂糖はごく最近まで贈答品やスーパーの開店の特売品として使われ高価と言うイメージが残っていた。明治以前の菓子は今とは違っていて砂糖使用は少なく自然の甘味だけであった。

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サッカリン 昭和15年②

2006年10月23日 | 趣味としての漬物
昭和15年6月7日 朝日新聞
サッカリン使用に厳重な処分
最近砂糖の入手難からサッカリンとズルチンを使用する料理店があるとの報を受け警視庁保健課で監視の目を光らせていたが偶然浅草区料理店XXXの調理場でサッカリンの使い古し発見押収した。サッカリン・ズルチンは人工甘味質取締規則により使用禁止となっており、しかも同店は東京料理飲食店組合長として指導的立場にあるので当局は厳重な処分をするという意向である。今後は市民の保健衛生上この種の違反は厳重に取締まるという。

昭和16年1月15日朝日新聞
警視庁衛生課の取締まり
浅草の料理店のサッカリン使用の処分
営業停止20日間

砂糖の不足とサッカリンの取締りの強化 やせ我慢の考え・欲しがりません勝つまでは。
 この後間もなく、沢庵漬にサッカリンの使用が許可されている。
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サッカリン 昭和15年①

2006年10月22日 | 趣味としての漬物
昭和15年3月8日朝日新聞
投書
砂糖の甘味が減ってか効き目がない・
回答
砂糖の甘味が不足する時はサッカリンをごく少量使うのです。人体には害はありません。普通サッカリンは水に溶けやすいものですから薬屋から局方溶性サッカリン(25gで30銭位)買ってきて水500匁に対して1匁,即ち直径12~13センチのなべに耳掻き一杯位のサッカリンを混ぜて、味加減をみて足りない分砂糖で補っていきます。多量に入れると後味の悪い甘味がいつまでも口に残って気持ち悪い物です。
サッカリンは石炭のタールから合成して作るもので消毒剤クロラミンと兄弟分ですか殺菌もあるから防腐の目的がかなうのです。現在サッカリンは沢庵漬・ベッタラ漬に使われ、糖尿病で砂糖を禁じている病人の食事にも使われているのはご承知の通りです。ただ,製菓用に多量に使用することは日本では禁じていますが家庭でごくわずか使用するならば差し支えありません。
東京市衛生試験所 OO氏談

昭和15年は長い日中戦争で砂糖も不足していたのでしょうかサッカリンで甘味を取るように、サッカリンの購入方法が記事になってます。明治34年に販売する食品にサッカリンを添加することは禁止になりました。しかし、明治の終わり頃からべったら市の報道で姦商がサッカリンを使用して甘味を付け販売していました。どの様な方法でサッカリンを手に入れたかというと、結局医薬用に販売されたものを個人使用(つまり販売目的の食品に使用しない)という口実で手に入れたのだろう。べったら市の浅漬大根は個人製造のもあったのである。いや、戦争前は農家や八百屋の個人製造の方が多かったかも知れません。
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べったら市の切山椒

2006年10月21日 | べったら市
べったら市と梅花亭の切山椒
昨19日と20日のみ小伝馬町の梅花亭で販売されているといわれている切山椒を求めるため、べったら市に行きました。もちろんベッタラ漬は買いません。販売しているので。
 明治時代の新聞記事に必ずといってよい位梅花亭の切山椒の売れ行き状況が載っていました。地下鉄日比谷線小伝馬町駅の真上といってよい位置に梅花亭はありました。5百円と千円の切山椒がありました。
 原材料表示では砂糖・新粉・山椒・赤色3号・青色4号でした。明治時代の甘さともいえる砂糖の味がほんのりとしていて、昔懐かしい菓子でした。さて、着色料の赤色3号・青色4号は本町の薬種問屋の影響があったのでしょうか。明治時代の色について聞いてみたいと思いました。長谷川時雨が食べた切山椒は宝田神社と同じくらい小さな店で販売していました。
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べったら市の歴史 総まとめ

2006年10月20日 | べったら市
べったら市 総まとめ
日本橋区史第3巻508ページ
ベッタラ市の復興
1947(昭和22年)10月19日より再開
戦後初めて宝田神社の例大祭が行なわれ、恵比寿講べったら市開く。以後年中行事となる。
 日本橋二之部町会史より
この当時はまだ物資が不足していて、新聞記事には“べったら市”記事はない。砂糖の状況から当然べったら漬は“サッカリン”入りしかない。

べったら市は知れば知るほど日本の近代史に翻弄されそのしわ寄せが市の商材に現れた。明治の時代は日米和親条約が不平等条約であったため、砂糖が安く出回り、検疫権がないために、船舶の高速化により海外からコレラ等の病気が蔓延した。大伝馬町界隈は江戸の木綿問屋や薬問屋の集積地であり、さらに日本橋の魚河岸は隣の町であった。それらが恵比寿講の市を発展させ、恵比寿講の掛鯛(くされ市)から浅漬大根のベッタラ市に変えた。それらは江戸時代のことでなく、明治20年代から始まり,大正の関東大震災で終わった。もちろん今でもべったら市は続いているが形だけ続いていて,明治の歴史の証人としての役割は終わった。
 大正時代は農会(今の農業協同組合の前身・JA)の指導により大根の品種改良・第一次世界大戦による好況と反動不況と日本橋周辺の問屋街の変貌と祭りのイベント化、明治末期からの路面電車等による人形町付近の興行街化による更に人出の増加が市を大規模化し最盛期は露店の浅漬大根を商う店が600店を超え、べったら市全体でも2000軒の露店が店を開いていた。
 大伝馬町は薬種問屋の本町とは隣町で江戸時代には砂糖を商う問屋があった。平成の現在でも本町には製薬会社関連の会社が多く、大伝馬町付近には砂糖会社がある。
明治6年には暦の改変によってベッタラ市が約一ヶ月早くなり、大根の自然の甘味不足を補うため明治の中頃から安価になった砂糖を使うのは当然の結果となる。さらに、本町の薬問屋で扱っていたと思われるサッカリンは明治19年にドイツから日本に輸入され、甘味料としてサッカリンの使用に向かった。明治の終わりごろにはすでに新聞記事にサッカリン使用の記事が現れている。
 日清戦争後、台湾を領土化した明治政府は台湾糖業を振興保護した。そのためサッカリンを販売目的の食品に使用することを禁止した。しかし、当時はサッカリンの人体に対する危険性は十分に確認されておらず、サッカリンが石炭から出来たタールから抽出したトルエンで作られていて、トルエンの危険性は明治の初めでも知られていて、明治33年頃たびたび起こった食品事故のドサクサで食品衛生法規が作られ、サッカリンもその巻き添えで明治34年人工甘味質取締規則が制定された。
 戦後、砂糖の産地であった台湾と沖縄を失った日本は、昭和20年代は極端な砂糖不足となり、サッカリンが国による専売となって国民に提供した。しかし、サッカリン製造知識が普及していたので密造がさかんとなり、脱税が行なわれた。このことは違法製造のサッカリンは砂糖が徐々に輸入されると危険性報道が盛んになされ縮小に向かっていった。景気が良くなると砂糖は味の良さでサッカリンを勝り、更に砂糖消費量が増えていった。沖縄の蔗糖や北海道の甜菜の保護は今でも続いている。
 冷蔵製造でなかった時代、べったら漬にはサッカリンが必要であった。今では砂糖だけで作れるが大正時代のベッタラ漬はチョット入ったサッカリンの甘味が浅漬露店600軒の原因かもしれない。
 明治34年に制定された「人工甘味質取締規則」は不備の多い法律であったが次々と合成された甘味料を包括的に制限したのは当時としては画期的な法律で、今年から始まった農薬のポジティブリストと合い通じる先進的な法律であったとも言える。しかし、抜け道の多い法を安価な商品を求める消費者と業者によって法規が守られなかったのは残念である。このことはベッタラ漬を製造する良心的な漬物業者が長続きしない原因である。
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安物 昭和11年

2006年10月19日 | 宅老のグチ
昭和11年12月29日朝日新聞
安い(だけで)買うは感心しない
警視庁衛生技師談
昨今食品の安い物を求めるという傾向が一般主婦の間に見受けられますがこの傾向も業者も感じて、だた単に売らんがための品を作るといったところに違反が生じるようです。砂糖代用のサッカリンは飲食物取締令で販売に供する飲食物には使用することを禁じていますがそれでも砂糖の代わりにサッカリンを使用するのは売値があわぬような食料品で原料も推して知るべしで安い原料を使用しているわけですから傷む足が早く、むしろその害が多いと思われます。

平成の今でも激安が売れるとなれば、売れる値段で製品を作る傾向があります。安物買いの銭失い。
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サッカリン 昭和11年

2006年10月18日 | 趣味としての漬物
昭和11年12月4日朝日新聞夕刊
投書
砂糖が高くなっていますので砂糖の変わりにサッカリンを家庭で使ってもよろしいのですか?
回答
サッカリンは一般家庭で自家用に使用する分には自由で構わないことになっていますがしかし飲食物取締令では販売に供する飲食物中にサッカリンを使用する禁止しています。砂糖業の保護という意味がありますがサッカリンを使用した飲食物は一般にとにかく腐りやすいといった点がなどからこれを有害な物としているわけですから、甘さといった点ではサッカリンは砂糖の約300倍も甘い物ですから砂糖の約300分の1の使用量ですみますので結構間に合います。
 サッカリンを多量に使用した飲食物の味はいやに甘ったるくしかも苦味が出てきて砂糖の甘さと比較にならないほどの不味い物です。
 しかも砂糖は糖分を始めとして栄養があるのですからサッカリンは栄養価がゼロですから体に入ったサッカリンは殆ど体を素通りして排泄されます。更に砂糖は一種の防腐作用があり長持ちしますが甘さの点だけで砂糖の代用となります。その他の点では砂糖の代用品とはなりません。
 警視庁衛生検査所 xx技師談
昭和11年12月23日朝日新聞によると警視庁衛生検査所は総勢22名である。
回答の間違え
『サッカリンを使用した飲食物は一般にとにかく腐りやすい』というのは間違いで、サッカリンを使用した飲食物はとにかく安い(=悪い)材料を使用しているので腐りやすい。別の記事でサッカリンは防腐効果ありと出ている。平成の今ではサッカリンの保存料としての意味はない。砂糖を使用していないので漬物において発酵しにくく腐りにくいだけである。
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たくわんとサッカリン

2006年10月17日 | タクワン
昭和10年11月18日朝日新聞
たくわんとサッカリン
今の程度なら食べても心配なく、ただし業者から目を離すな
前述したのは急性中毒を起こす極量を定めるため作為的に行った実験であるが、これに反して希釈溶液による慢性中毒の方はどうのと言えば、家兎に毎日0.12g与えたのはかえって好影響を示すのではないかと疑う位であって、試験中では生活状態はなんら通常と異なるところなく、91日目に解剖したところ内臓の臓器に全く異常がなかった。
 つまりサッカリンは前記程度の濃度で連日与えても慢性中毒を起こす懸念がない訳である。
 またサッカリンは消化酵素に抑圧的に作用する説を確かめるために、ジアステーゼ・ペプシン・パンクレアチン等の消化器官中に存する諸種の酵素に対して実験してみたところが0.1%以下の濃度では全く影響は認められていないのである。
 以上の諸種の結果は、これを要するにサッカリンはその毒性が弱いものであっても,濃厚液の場合においても局所を刺激する性を現すものであるから、その使用濃度を注意さえすればよいと言う結論に達するのである。
 それは今日各家庭における実際問題として市場で販売されている沢庵漬や奈良漬は果たして毎日食用に供していても慢性中毒を起こす恐れがないのかというのかどうか、これは我々の日常生活と切り離すことの出来ない重大事であって、この点を明確にしておかねば気苦労で消化器系に及ぼす精神作用からして確かに悪影響を与える恐れがある。
 ところで我々の舌はサッカリンに対してどの位の判別があるか先ず試験してみることにする。
 これを試験するには食塩とサッカリンと色々な割合の濃度に調合してなめてみてその甘味濃度と実際沢庵を絞って出た液の甘味と比較してみるのである。
 この実験は我々が心配するほど不正確なものでなく実際定量分析した結果と照合してもまずたいした誤りがないのである。例えば食塩1%の溶液に一万分の一のサッカリンを混和しても舌頭試験をしてみると即時には甘味を感じないがしばらくするとこれを感じるのである。それ故これと同じ舌感覚が沢庵漬の搾り汁にあれば一万分の一程度のサッカリンが含まれていると見てよい。
 ところで我々が食膳のだす沢庵漬の輪切り一片は一体どのくらいかをいうと重量が約14g大きさは直径5.1cm厚さ0.4cm。しかもこれを上記の味覚試験で試してみると製造所によって多少は違うが大体五千分の一程度に含まれているのがわかる。
 この事実から逆に勘定すると4斗樽一本中に(大根が20貫目入っているとして・約75kg)サッカリンは15g(4匁)である計算となる。それ故我々が毎日前記の大きさの沢庵漬を五片食用に供すると毎日服用されるサッカリンの量は0.21gとなる。
 これを人体1kgに対する値に換算すると0.0042g。ところが家兎の致死量は前にも述べた如く1kg当たり8gであるから勿論急性中毒は問題ではない。また慢性中毒の方といえば家兎の体重は大抵2kgないし2.5kgであってそれが前の実験では毎日12gのサッカリンを与えても慢性中毒を起こさなかった。つまりkgあたり0.05g与えても大丈夫だというのであるから人間の0.004gは先ず心配ない。仮に一日15片食膳にのせたところで0.012gなるに過ぎないのでのだから沢庵漬も製造者が現在程度にサッカリンを使用しているとすれば口を大きくしてこれを食用に供しても、決して心配無用ということになる。但し、内務省令は依然として設けておかねばならぬ。それはある製造者の如く往々多量のサッカリンを使用するものがある恐れのある場合、十分に怠ってはならないのである。

解説
なぜ、多量のサッカリンを使用するのかといえば急に生大根を製品にすると浸透力の具合でサッカリンの濃い部分が偏り違反となるのだろう。
 戦前はサッカリンの危険性は慢性中毒を心配していたようで消化器系統を検査していた。戦後は膀胱ガンの疑いで一時禁止され、今では使用制限して食品に用いられるのが世界の流れである。それは糖分を制限している人に適当な人工甘味料がないためと思われる。
『たくわんとサッカリン 今の程度なら食べても心配なく、ただし業者から目を離すな』のタイトルにはまいったな。いまでも新聞の人たちは色眼鏡で漬物業者を見ている気がする。ふるさとの味・おふくろの味という先入観で業者の作ったものは添加物だらけという考えが感じられる。当時は家庭でのサッカリン使用は合法使用であった。
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べったら市 昭和10年

2006年10月16日 | べったら市
昭和10年11月16日朝日新聞
浅づけの季節(ベッタラ漬)にまた出るサッカリン問題
果たして害になるかならぬか最後的断定なる。
今は浅漬の季節であるが浅漬のあの甘味は無論多量の白砂糖を使って出さねばならない物である。ところが不正商人は砂糖が高くて使えないのでサッカリンを使用する。砂糖とサッカリン使用のものとでは無論舌触りが違うはずだが、しかし素人にはそれが容易に鑑別できない。ではその不正を見破るにはどうすれば良いのか、またサッカリン使用のものを食べたらマズイばかりでなく、人体にどんな差し障りがあるのか権威者の話を聞く。
 サッカリンは人工甘味料の代表的なものであってその甘味は砂糖の約300倍位であるという。しかも値段も安いのでしばしば使用され、内務省による禁止条項は殆ど有名無実の観を呈している。
 しからば実際問題としてサッカリンは衛生上一体有害でないのかどうか、これは久しく論議が戦われ、研究報道も枚挙にいとまない程あるがその内これを有害であると断定する者はサッカリンが防腐作用を有すると共に消化酵素に対して抑制的に働き,従って食物の消化吸収を妨げ、かつ局所に刺激作用を起こし、ひいては下痢等を招くという。ところが一方サッカリンその物の栄養価はないとしてもおそるに足らぬとされる。という見解をしている学者もある。そこで内務省令があっても官が迷う始末となっている。ところがこの二説の対立が社会に及ぼす影響を考えるとこのまま放任しておく訳にも行かない。
 そこで内務省衛生試験所では諸権威を動員して最後的断定を試みたのである。その主目的は単に一時的にサッカリンを用いる場合の毒作用についてのみだけだなく、それを人工甘味料として連続的に使用した場合も果たして慢性中毒を起こすかどうか。つまり今日、実際に使用されてる濃さの範囲の千倍から一万倍の濃度で使用された場合、わが国民の保健上有害であるかどうか決定することを目的としたのである。
それにはまずわが国において砂糖の消費が全部サッカリンによって置き換えられた場合を想像する必要がある。すなわち農林省農務局の調査によると大正14年から昭和2年の3ヵ年の内地及び樺太における年一人の砂糖の消費量は平均12.468kgで毎日35g舐めていることになる。これを全部サッカリンに置き換えると人は一体どの位の量になるかというと毎日0.12g弱で人体の平均体重を50kgと仮定すると体重1kgあたり0.0025g弱に相当する。それ故この理に従って試験動物に毎日食物と同時に投与した時いかなる結果と出るだろうか。
これはわが国の保健衛生上すべからく大事であるばかりでなく学問上から見ても興味深い問題であるといわねばならぬ。
その結果トノサマカエル
 このカエル対して致死量は体重1kgあたり10g
 ネズミの致死量は体重1kgあたり皮下注射では8g、静脈注射では3g
家兎では致死量は体重1kgあたり口から入れた時は8g、静脈注射では4gで致死量となる。
続く
実験動物としてトノサマカエルが使用されている。この頃は満州事変後の戦争の拡大で砂糖が不足になりつつあった状況だった。サッカリンが安全かどうかなんて科学的データの解釈が時代によって変わること。
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