富山県のチューリップで有名な砺波市に3泊ほどして、近辺の名所旧跡を訪れました。その日は、北陸一宮の気多大社をまず訪れました。能登の道路は高速道路並に整備されていました。縁結びの神様で知られていましたが、目に付いたものは「入らずの森」でした。この森には、シイやタブなどの照葉樹林が見られるのです。古墳時代以前、日本の国土は照葉樹林に覆われていました。でも、それ以降照葉樹林は焼きものなどの燃料に使われて、その姿はなくなってしまいます。現在、残っている場所は格式の高い神社などわずかになっています。
シイやタブなどの常緑広葉樹を伐採し続けると、コナラなどの落葉広葉樹林にります。さらに、広葉樹を切り倒し続けると落葉広葉樹が、松林になっていきます。松の木が進出した後、数十年経過するとコナラやクヌギの樹木が松の木を押しのけて生育するのです。さらに何十年か過ぎると落葉広葉樹の下でシイやタブなどの照葉樹の稚樹が育ち始めます。照葉樹の稚樹が育ち始めて何十年かすると、落葉広葉樹を抑えて照葉樹が優占種になるという流れです。シイやタブなどの照葉樹林の存在に出会ったことは、本当の生態系を見られる幸運にぶつかったともいえます。罰当たりでなことですが、縁結びで売り出すより、照葉樹林の存在をピーアールした方が、外国人観光客には受け入れられるように思ってしまいました。
入らずの森は、一種の極相林ということができます。人工の手が入らない自然に任せた森林なのです。であれば、生態系のモデルケースとして外国人観光客を誘致することもできます。欧米にはすでに大口径の広葉樹がなくなっています。ましては照葉樹は希少種になっています。工業先進国の日本が希少種である照葉樹を数多く残していること、それ自体が貴重な遺産ともいえるのです。イギリス植物1500種のうち、固有の種は15種しかありありません。日本に自生する5300種のうち、1800種が日本固有の植物なのです。日本の生物の多様性は生物資源としては当然ですが、観光資源として大きな可能性を持っています。外国人観光客は、これからも日本を訪れます。神社には、世界が失ってきた生物資源が豊富にあることを知る外国人が増えることでしょう。知る行動そのものが、外国人観光客に日本の文化を理解してもらうことに繋がります。つまり、多くの神社を持つ日本は、無限にリピート客を獲得し続けることができるわけです。
2030年には、世界の観光旅客数が30億人に達すると予想されています。外国人観光客に対して、どのような商品やサービスを準備するのか、日本が現在持っている経営資源で、どのような付加価値のあるものを提供するのかを常に考えていかなければなりません。特異な生態や生息状況が、常時見られるということになれば、より付加価値の高い自然志向の観光資源になります。蛇足ですが、スイスなどの観光立国は、自然保護に国が資金を提供しています。住民は、その資金を使って自然保護に努めているのです。日本人は、神々を敬うという姿勢で、自然保護活動を住民が自主的に行う形を取っています。話は戻って、その限られた資源を、有効に持続的に使うことが、これからの日本では求められます。日本における森林を中心とした生物多様性は、先進国において稀少性があります。観光資源としては、費用対効果が高いものになるでしょう。
余談ですが、砺波のホテルに滞在したわけですが、朝晩は温泉に浸かり、バイキング料理を適度に食べる生活でした。スタッフの方の仕事ぶりを見ると、非常に合理的なのです私たちが食べた食器を手際よくワゴンに入れていきます。よく見ると、厨房の方が洗いやすいように食器を一定の流れで集めています。私たちが持って行くと、笑顔で受取り、積んでいきます。仕草に無理のない動きに感心してしまいました。もうひとつは、キッド専用に食べたいなと思うビスケットがありました。「このビスケットを食べても良いですか」と尋ねたところ、年配の方が、笑顔で「私はキッド用としか言えません。でも、私は聞いていません」と、年配の方が暗黙の了解のサインをだすのです。レストランスタッフの方には、合理性に加えてユーモアもありました。私たちシニアには、子ども時代に戻りたいときがあります。このスタッフの方のユーモアは、スムーズに子ども時代の雰囲気に入れるものでした。良いサービスは、モノもコトも提供する時代です。心の豊かさを求め、毎日の生活を楽しみたい気持ちがあります。このホテルでの酒量はかなり増え、楽しい夕食になりました。