ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

元気な日本企業の海外進出   アイデア広場 その487

2019-08-02 23:08:54 | 日記

 訪日した中国人の方も、本当の和食を食べたいという希望が増えています。香港で展開しているワタミは、各テーブルにおかれる醤油も日本製にするほど、日本風に徹しています。その結果、ワタミは「本物」の日本料理が食べられる店として、認知されるようになっています。訪日を経験した人達は、日本の良さを見直しているようです。一時は、爆買いでその良さを自国に持ち帰りました。その次に取られた方法は、代理者を通じたネット通販でした。この方法は、中国政府による規制でやや下火になっています。そんな中で、規制や制約にもかかわらず、元気な会社が日本にもありました。
 そこで、そんな元気な日本企業の秘密を調べてみました。中国の消費者のスピードに付いていくことは、なかなかできない企業が多いようです。でも、移り気で多様化した変化の激しい消費者のニーズに素早く応えることができれば、大きなビジネスチャンスになります。このチャンスをものにしている企業のお話です。宮城県の仙台市に本社があるアイリスオオヤマは、中国ネットの通販の売上高が2018年までの5年間で10倍になりました。アイリスの生産ラインは、中国にあります。中国の訪日の方は、ドラッグストアや家電量販店で多くの買い物をします。その品物を日本からネット取引しようとすると、いくつかの規制に抵触するという問題が生じています。これらの規制も、現地生産するアイリスには無縁のものになっています。家電を現地生産するアイリスは、規制で沈静化した訪日爆買いの需要を再び呼び起こすかもしれないのです。
 アイリスは、プラスティックの収納ケースの製造を行っていました。これに電化製品の製造が加わってきたのです。プラスティックの収納ケースの生産ラインは、主に成形と組み立て、そして梱包の3工程と短いものです。シンプルな生産工程のために、この収納ケースの生産ラインは金型を変えれば様々な商品を作ることが可能なのです。電化製品の外装は、大部分がプラスチックで作られています。そのために、外注せずにアイリスの工場で内製化することができます。外装を外注せずに同じ工場で内製化できることで、製造原価を抑えられました。これは、古い生産設備を有効利用しているともいえます。古い施設を利用しながら、新しい設備の拡張も行っています。アイリスは、「経常利益の50%は投資に回す」という方針を堅持しているのです。
 この会社は、毎週月曜日の開発会議では経営陣や企画担当者が一堂に会し議論を戦わせます。どんな機能を搭載するか、価格帯や想定する消費者など、3~4回のこの会議で決まるのです。年間1000アイテムの新商品を出す原動力は、この会議の意思決定の早さによるものです。他社であれば企画や製造、販売を別々の部門で積み上げながら決定されていく方式が一般的です。担当者が細分化されているために、いくつもの「決裁印」が必要になります。企画段階からトップが関与し、意思決定のスピードを速くし、商品開発を瞬時に行っているわけです。
 日本の大手家電メーカーは「選択と集中」で相次いで家電分野から撤退しています。撤退に伴って、優秀な家電の技術者もリストラされています。アイリスは、撤退した家電技術者の受け皿になっています。転職してきた技術者は、細かいレべルで画質を調整しジャパン製品の品質を維持することに貢献しています。訪日する中国人が、争って購入する電化製品があります。彼らは、この日本様式の細かに配慮された電化製品を開発できます。転職してきた技術者が、中国の消費者ニーズに沿った商品開発力を磨いているのです。日本で買わなくとも、中国で日本製品が作られ、購入する道が開けているわけです。毎年、1000点のアイテムが開発されています。ものづくりの魅力が体に染みている技術者には、やりがいのある開発現場になっています。アイリスの液晶テレビは、大手家電メーカーから転職してきた技術者の活躍によって生産されています。変化の激しい中国中間層のニーズを、確実につかむ商品開発をしているわけです。大手メーカーを離れた技術者が、再雇用されて成功している事例になります。
 この会社は、経常利益の50%を投資に回しています。今では、アメリカに4ヵ所、中国に4ヵ所、EUに2ヵ所の製造と流通の拠点を持つまでになっています。その中国の個人消費に陰りが出ています。住宅ローンの債務が増えているのです。ローンの支払いが増えて、食費や衣類に使うお金が減ってきています。日本のバブルのレベルまで個人の債務は悪化しているといわれています。とすれば、次の狙いは東南アジアということになります。アジア各地の中間層内部には、多様な嗜好を持った人達が現れています。画一的な消費行動が徐々に姿を消して、消費の方向性が読みにくくなっています。でも、アジアの各市場の中間層は、消費意欲は根強いのです。
 もし、アイリスの方式で東南アジアの市場に打って出れば、どうでしょうか。日本人の厳しい目に合格した商品が、企画・開発・販売されます。年間1000のアイテムが、アジアの消費者のニーズに基づいて開発されることでしょう。その生産ラインは、古い設備と最新鋭の設備を融合した効率的なものになります。日本や中国でリストラされた優秀な技術者を、東南アジアの工場で再雇用する手法も取り入れられるでしょう。そして、これまでのようにスピードのある決断で進めていくことができれば、中国より複雑な市場をスムーズに開発することができるかもしれません。