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私大定員抑制方針撤回を

2017-09-19 04:00:00 | 気になる 大学進学

 小池都知事、文科相に要請(9/11,産経新聞他)

 東京都の小池百合子知事は11日、林芳正文部科学相と文科省で会い、東京23区内の私立大などの定員増を平成30年度以降、認めないとする政府方針の撤回を要請した。
 定員抑制は東京の一極集中是正が目的で、政府が6月に方針を閣議決定。これを受けて文科省は8月、30~31年度は定員増を認めないとする告示改正案を公表した。パブリックコメント(意見公募)の手続きを経て、今月中に正式決定する予定で、32年度以降は新たな立法措置を検討する。

 これについて、小池百合子知事は異議を唱えたことになる。
 彼女の考え方には共感できない部分は多々あるが、東京都という地域の行政責任者としてこの件に関しては、何も言わないことは許されない。抑制方針撤回を求めることは当然である。

 この規制方針、僕は間違いだと思う。

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 以下文科省サイトより引用。

 中央教育審議会大学分科会(2001/11/07議事録)

 中央教育審議会大学分科会将来構想部会(特別会)
 資料8 大学等の設置に係る制限及び抑制方針について

 大学等の設置に係る制限及び抑制方針について
 (1)工業(場)等制限法により、首都圏及び近畿圏の一部区域においては、大学等の教室の新設・増設が制限されている。
 (2)大学審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」(H9.1)の提言に基づき、大学等の全体規模及び新増設については、基本的に抑制的に対応している。


 根拠法
 工業(場)等制限法
 〇首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律
 〇近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律

 工業(場)等制限法により、工場等制限区域内*においては、下記(1)(2)の場合を除き、制限施設(1500㎡以上の床面積を持つ大学の教室)を新設又は増設してはならないこととされている。

 *全域: 東京都区部、武蔵野市
 一部: 川口市、三鷹市、横浜市、川崎市、京都市、大阪市、守口市、東大阪市、堺市、神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市

 下記(1)と(2)の場合とは以下の通りである。

(1)そもそも制限施設に該当しないもの
  ・・・政令で規定
 ①大学院の場合
 ②専ら夜間において授業を行う大学の場合
 
(2)下記の場合で知事等の許可を受けたもの
  ・・・国土庁大都市圏整備局長通知
 ①収容定員の増加を伴わない場合であって、カリキュラムの改善や学部・学科の改組転換等に伴う授業科目数の増加、各科目ごとの受講者数の少人数化、教室使用率の適正化、新たな教育機器の導入、学生・生徒の体位の向上等に対応する場合
 ②社会人、留学生又は帰国生徒の受入れに係る収容定員の増加に対応する場合
 ③夜間教育(専ら夜間において授業を行う大学を除く)又は通信教育に係る収容定員の増加に対応する場合

 上記②及び③に該当する場合のほか、収容定員が増加する場合については、当該学校における教育及び研究のために密接不可分な既存の関連施設と近接して必要な教室の新設又は増設を行う場合
(例:病院等における実習が義務づけられており、実習を行う既存の病院等に近接して教室を設置する必要がある場合)
(注)公開講座は制限施設に該当しない旨、同通知に記載あり。

 工場等制限法
 正式には、「首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律」(1959年制定)と、「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」(1964年制定)の2つを「工場等制限法」と総称している。また、それぞれの略称でもある。この法律の目的は、都市部に制限区域を設け、その制限区域内に人口・産業の過度の集中を防ぐことであった。具体的には、その区域での一定面積以上の工場(原則1,000㎡以上)、大学の新設・増設などを制限していた。共に2002年7月に廃止された。


 「首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律」の「第一章 総則」を読んでみる。

(目的)
 第一条 この法律は、工業等制限区域について、工場及び大学等の新設及び増設を制限し、もつて既成市街地への産業及び人口の過度の集中を防止し都市環境の整備及び改善を図ることを目的とする。

 既成市街地(大都市圏)への人口の過度の集中を防止し都市環境の整備及び改善を図るため、18歳前後の若者が既成市街地で働いたり、学ぶことを制限する(=妨げる)ことを目的とする法律により実施された、上記の工場等制限法による規制(網掛け部分)のようなことは、第一条にある目的を達成することに有効だったのか。規制は成功したと言えるか。ここは、よく考えなくてはいけない。

 何も都会だけが栄え、それ以外はどうでもいいなんて決して言わない。しかし、過去に上記法律により実行した規制も、政府方針により計画中の規制も、何か不自然、理不尽な感じがする。
 真に一極集中を解消することを目指すのならば、中央省庁・民間企業本社機能を東京23区外に移動させ、就職により東京23区に転入する新規採用者数に制限をかける方が効果的ではないか。それができないから大学に規制をかける。それが透けて見えるから、不自然さ理不尽を感じるのだ。
 過去の規制による「現在の東京の状態」を失敗と見なすのか、したからこそ「現在の東京の状況」でとどまっており、規制は成功と見なすのか。いずれにしても、大学の設置等を規制に加えるのは、東京への一極集中を抑える or さけることに資するとは思えない。

 ・・・東京23区は島ではない。

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 参考資料

 2015年3月2日 No.2014-054
 「数字を追う ~地方創生・東京一極集中是正に関連する論点の再検証」 日本総研調査部 主席研究員 吉本澄司


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