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平成29年度埼玉県公立高等学校入試 まとめ

2017-09-10 04:00:00 | 教師の仕事 2017

 今年4月発表の「平成29年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施状況」の資料をあらためて読み直してみる。

 Ⅴ 平成29年度埼玉県公立高等学校入学者選抜学力検査結果(全日制の課程)
 受検者平均点【第9表】

標準問題  選択問題
国語 社会 数学 理科 英語 数学 英語
H.29 53.3 60.6 44.4 48.5 52.0 43.2 71.9
46,455 46,455 36,513 46,455 36,513 9,942 9,942
H.28 57.9 63.7 51.1 39.2 57.4 --- ---
46,820 46,820 46,820 46,820 46,820 --- ---

 標準問題がこれまで実施されていた全県統一の学力検査問題、選択問題が平成29年度入試から実施の学校選択問題である。
 年度の上段が平均点、下段が受検者数である。
 *各教科100点を満点とし、各教科の平均点は5教科受検者の得点より算出している。

+++++ +++++

 外見上わかること。ある仮定の下に
 ある学校の受検者の得点から算出される、その学校の5教科の平均点は、大体同じくらいである。
 イヤらしい言い方をする。
 「勉強のできる生徒が集まる学校」の受験データでは、全日制普通科の場合、各教科とも受検者の得点平均にビックリするような差違は出にくい。5教科の学力バランスが取れている。少なくともその可能性が、「普通の学校」より高い。

 平成29年度入試から学校選択問題を導入した県立19校、さいたま市立1校は上記の「勉強のできる生徒が集まる学校」だろう。

 自分は英語の教師なので、数学のことはわからない。選択問題を導入した学校の、特に数学の先生方。数学の平均点と英語の平均点の差はどう感じただろう。【第9表】の英語の標準問題と選択問題の平均点の差(52.0と71.9)をどう見ただろう。選択問題実施校には、5科目500点満点ではなく、英語が傾斜配点に見えたのではないか。英語の点数が合否を決めたとは言わないが、なんだかモヤモヤしなかっただろうか。中学生はどう感じただろう。

 僕はそこが心配である。

+++++ +++++

【第9表】を見ると、標準問題の平均点は52.0、選択問題の平均点は71.9である。単純に得点率として見なせば、前者は52%、後者は71%である。
 ・・・これは5教科受検者の得点から算出した数字である。
 下に作表したものは、標準問題、選択問題それぞれの『Ⅱ 各教科の正答率、問題の内容及び所見・解説』の数値を元に作成したものである。aは配点、bは通過率、cはa✕bであり、抽出答案のデータより算出した数字である。

標準問題 a b c 選択問題 a b c
1 問1 2 0.732 1.5 1 問1 2 0.95 1.9
問2 2 0.721 1.4 問2 2 0.984 2.0
問3 2 0.772 1.5 問3 2 0.963 1.9
問4 2 0.515 1.0 問4 2 0.942 1.9
問5 2 0.488 1.0 問5 2 0.942 1.9
問6(1) 3 0.796 2.4 問6(1) 3 0.958 2.9
問6(2) 3 0.748 2.2 問6(2) 3 0.977 2.9
問6(3) 3 0.479 1.4 問6(3) 3 0.869 2.6
問7(1) 3 0.804 2.4 問7(1) 3 0.976 2.9
問7(2) 3 0.459 1.4 問7(2) 3 0.79 2.4
問7(3) 3 0.623 1.9 問7(3) 3 0.955 2.9
小計  --- 28 --- 18.2 小計 --- 28 --- 26.1
2 A 3 0.674 2.0 2 問1 3 0.679 2.0
B 3 0.562 1.7 問2 4 0.902 3.6
C 3 0.406 1.2 問3 4 0.877 3.5
D 3 0.807 2.4 問4 3 0.91 2.7
小計 --- 12 --- 7.3 問5 4 0.718 2.9
3 問1 3 0.793 2.4 問6 4 0.899 3.6
問2 3 0.474 1.4 問7 4 0.793 3.2
問3 3 0.561 1.7 問8 4 0.587 2.3
問4 3 0.668 2.0 小計 --- 30 --- 23.9
問5 4 0.696 2.8 3 問1A 3 0.785 2.4
問6 4 0.374 1.5 問1B 3 0.164 0.5
小計 --- 20 --- 11.8 問2 4 0.375 1.5
4 問1 3 0.194 0.6 問3 3 0.756 2.3
問2 4 0.525 2.1 問4① 3 0.448 1.3
問3 4 0.281 1.1 問4② 3 0.488 1.5
問4 3 0.286 0.9 問4③ 3 0.491 1.5
問5 4 0.257 1.0 問5 4 0.397 1.6
問6 4 0.347 1.4 問6イ 3 0.706 2.1
問7 4 0.393 1.6 問6オ 3 0.743 2.2
問8 4 0.186 0.7 小計 --- 32 --- 16.8
小計 --- 30 --- 9.4 4 --- 10 0.461 4.6
5 --- 10 0.504 5.0 小計 --- 10 --- 4.6
小計 --- --- --- 5.0 --- --- --- --- ---

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 標準問題と選択問題、受検者はどこができて、どこができなかったのか。

 dは各小問の各問通過率を合計したもの。これを各問題の得点と考えてみた。
 eはdは配点の何パーセントになるかを算出したもの。標準問題1ならば、28点満点で、18.2点。得点率は64.9%とする。dを合計した数値が51.7点なので、総計<問題1である。つまり総計に占める問題1の得点の比率が高いことを表している。

標準問題 選択問題
問題 配点 問題 配点
1 28 18.2 64.9% 1 28 26.1 93.3%
2 12 7.3 61.2% 2 30 23.9 79.6%
3 20 11.8 58.8% 3 32 16.8 52.6%
4 30 9.4 31.3% 4 10 4.6 46.1%
5 10 5.0 50.4% --- --- --- ---
 合計 100 51.7 51.7% 合計 100 71.4 71.4%

 標準問題
 1 リスニング
 2 作文
 3 読解
 4 会話文の読解
 5 作文

 選択問題
 1 リスニング
 2 会話文の読解
 3 読解
 4 作文

 昨年サンプル問題の分析をした。「学校選択問題について」('16-08-17)で、僕はこんなことを書いている。

〔感想〕
 条件がやや違う①の問題4と②の問題2の長文・会話問題よりも、①の問題2と問題3・②の問題③(32点分)で差がでることを目指した構成である。全体として学校選択問題は、それなりに難しい(点数の出にくい)ものになることは予測できる。

 ①は標準問題のこと、②は選択問題のこと。いずれもサンプルのことである。
 ・・・大外れである。

 標準問題1と選択問題1は共通問題。標準問題4と選択問題2は、ほぼ同内容である。合計点に差が出たのは、ここの部分が原因なのだ。標準問題受検者と選択問題受検者の英語の力(もっぱらリスニングと会話文の読解から判断する)を比較するには、この部分をよくみるべきである。

 平均点が高いことが悪いことではないが、標準問題4は受検者には難しすぎ、選択問題2は受検者にはやや易しすぎたと見ることができよう。このあたりが、平成30年度入試ではどうなるか、注目すべきかもしれない。

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 前回(9/4)のエントリはこちら

 「平成29年度埼玉県公立高等学校入試 今回は読解問題を比較してみよう。


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