全英連参加者のブログ

全英連参加者の、言葉やその他諸々についての雑感... 不定期更新です。

「太陽」を見てきました。

2016-05-05 04:00:00 | 全英連参加者 2016

映画「太陽」イメージ 21世紀初頭、バイオテロウイルスによる人口激減から、なんとか生き残った人類。
 心身ともに進化しながらも太陽の光に弱くなり、夜しか生きられなくなった新人類ノクス。ノクスに管理されながら貧しく生きる旧人類キュリオ。ノクスとキュリオは2つの階層に分かれて生活していた。
 キュリオの貧しい村に生まれ、ノクス社会への憧れを隠さず鬱屈した毎日を送る鉄彦。ノクスそのものへの反感を糧に村の復興を前向きに考える結。2人を神木隆之介と門脇麦が演じている。

 見たい作品だったのだが、埼玉県内では21日まで公開がない。中間考査期間で、時間が取れそうにない。4月29日(金)新宿の角川シネマ新宿で見てきた。

+++++ +++++

 SF、ラブストーリー、青春群像劇。カテゴリー分けをするのが難しい作品と思いながら、見に出かけた。予備知識は作品のウェブサイトのみ。主演2人がみたいということもあった。

+++++ +++++

 ▼ものがたり世界について▼
 絶対的な貧富格差、SFとしては古典的な舞台装置だろう。最近の作品ではマット・デイモン主演「エリジウム」がそうだ。
 ものがたり世界で、鉄彦と結は貧しい方に属している。詳細はネタバレになるので、書くことはさけるが、超近代的都市に住むノクスと、昭和初期の寒村ような場所に住まわされているキュリオ。映像比較がすごいと思う。
 鉄彦と結の村は、見ようによってはある国に壁で囲まれた地区、第二次世界大戦後占領下の日本(沖縄)、歴史上世界中に存在している何らかの理由により差別されている人たちの隔離施設、集落、あえて言えばアパルトヘイト的なものにも見える。
 ノクスは太陽光線を浴びることはできない。しかし健康で強靱な肉体を手に入れている。キュリオは隔絶した環境の中で生きることを強いられている。
 キュリオはノクスと接触することを怖れている。キュリオはノクスの血や体液・吐瀉物等を浴びると死んでしまうようだ。キュリオから見るとノクスはある種のゾンビのようでもある。

 ●ものがたりについて●
 キュリオはノクスになれる。
 ノクス転換手術を受けると、ノクスになれるのだ。結がものがたりの最後で、転換手術を受ける。手術後の彼女は、別人である。その変容に絶対的な格差、溝の存在を思い知らされる。そしてそれは、ものがたり世界にこれからも残り続ける。彼女の変容がそれを暗示ではなく、明示している。救いようのないシーンに見えて、印象的だった。

 SFである。実らないラブストーリーである。青春群像劇ではない。群像劇だと思う。

 ◆作品自体について◆
 カット割りや演出に、「舞台色」のようなものが残る作品だと思う。好き嫌いがはっきりする演出だろう。表現は難しいが、何か全国的なシネコンにかかることを前提としない作り方に見えた。監督が覚悟を決めた、やりきった感の伝わる作品である。

 鉄彦(神木)の感情・狂気が爆発するシーン。地団駄を踏む鉄彦。彼の絶望は、ズシリと来た。
 結(門脇)の運命に振り回さながらも必死に生きる。転換手術後の立ち振る舞いの変容。声のトーンの変わり方は、イフェクトかも知れないが、寒気がした。
 どちらも二人の演技力があってのものである。
 (一部敬称略)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする