地元さいたま市の話題である。
12月末、「市報さいたま」が配達された。[特集]のひとつに、こんなものがあった。
ノーマライゼーション条例を制定しました
カタカナ条例はまずいと思ったが、これは通称である。
この条例、正式には、さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例という。条例を読めば、ノーマライゼーションという考え方をどのように定義しているかわかると考えて、さいたま市例規集で条例をさがした。
最初キーワード検索を欠けたが、見つからず、条例名をそのまま入力したら見つかった。(ちょっと困った。)
条例を読んで考えたこと、通称についての意見を書いてみようと思う。
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条例そのものは昨年3月9日(条例第6号)、同施行規則は平成23年3月31日(規則第35号)として例規集に載っていた。
条例を読んでみた。こんな構成である。
前文
第1章 総則(第1条-第8条)
第2章 障害者の権利の擁護
第1節 障害者への差別の禁止等(第9条-第15条)
第2節 障害者への虐待の禁止等(第16条-第21条)
第3章 障害者の自立及び社会参加のための支援(第22条-第31条)
第4章 補則(第32条)
附則
第1章 総則
第1条(目的)
この条例は、障害者への差別及び虐待を禁止するとともに、障害者の自立及び社会参加を支援するための措置を講じることにより、障害者が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、権利の主体として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加する機会を得られるよう、地域福祉の推進を図り、もって市民が障害の有無にかかわらず、等しく市民として個人の尊厳と権利が尊重され、その権利を享受することができる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
第2条(定義)
(ここは条例に使われる用語の定義)
第3条(基本理念)
障害者への差別をなくし、及び虐待を防止するための取組は、市、市民及び事業者並びに障害者の医療、保健、福祉、教育、就労等に関係する機関(以下「関係機関」という。)が障害者を権利の主体であると認識し、その権利を尊重し、それぞれの障害に対する理解を深めることにより行われなければならない。
2 障害者の権利の擁護並びに障害者の自立及び社会参加の支援に関する施策の推進は、市、市民、事業者及び関係機関が相互に連携し、並びに障害者の選択を尊重することにより行われなければならない。
3 障害者の権利の擁護並びに障害者の自立及び社会参加の支援に関する施策の推進は、障害者が市民の一員として地域において生活し、それぞれにふさわしい役割を果たすことができるよう行われなければならない。
第4条(市の責務)
第5条(市民等の責務)
第6条(計画の策定等)
第7条(市民相互の意見交換等)
第8条(顕彰)
市は、障害者に対する理解の促進に寄与したと認められる者の顕彰に努めるものとする。
第2章 障害者の権利の擁護
第1節 障害者への差別の禁止等
第9条(差別の禁止)
何人も、障害者に対し、差別をしてはならない。
~中略~
第2節 障害者への虐待の禁止等
第16条(虐待の禁止)
何人も、障害者に対し、虐待をしてはならない。
第3章 障害者の自立及び社会参加のための支援
第22条(障害者等への総合的な支援等)
市は、障害者が地域の中で安心して自立した生活を営むことができるようにするため、日常生活等を営む上での課題及び障害の特性を理解し、当該障害者の自立の助長及びその家族の負担の軽減のための総合的な支援を行わなければならない。
2 障害者自立支援法第29条第1項に規定する指定障害福祉サービス事業者、市の委託を受けて同法第77条第1項に規定する地域生活支援事業又は同条第3項に規定する事業を行う事業者及び社会福祉法第4条に規定する社会福祉を目的とする事業を経営する者は、サービスの提供に当たっては、福祉サービスの質の向上並びに障害者及びその家族が地域の中で安心して自立した生活を営む上で必要な福祉サービスの実施に努めなければならない。
3 市及び相談支援事業者は、相談及び支援の実施に当たっては、専門技術及び職業倫理の向上並びに障害者及びその家族が地域の中で安心して自立した生活を営む上で必要な福祉サービスの把握及び充実に努めるとともに、別に定める指針に従い、事業者及び関係機関と緊密な連携を保ち、支援体制の総合的な調整を行わなければならない。
第23条(成年後見制度等の利用の支援等)
市は、後見的支援を要する障害者が地域の中で安心して生活を営むことができるようにするため、成年後見制度及び社会福祉法第2条第3項第12号に規定する福祉サービス利用援助事業に基づくサービスの円滑な利用のために必要な支援を行わなければならない。
2 市は、成年後見制度及び前項の福祉サービス利用援助事業を担う人材の育成を行わなければならない。
第24条(障害者の居住場所の確保等)
市は、障害者が自ら選択した地域で生活を営むことができるようにするため、障害者の居住する場所の確保及び居住の継続のために必要な施策を講じなければならない。
2 事業者は、障害者又は障害者と同居する者と不動産の取引を行う場合において、市及び相談支援事業者と連携し、障害者が地域の中で安心して自立した生活を営む上で必要な居住する場所の提供に努めなければならない。
第25条(意思疎通等が困難な障害者に対する施策等)
4 市は、災害発生時その他の緊急時に障害者と速やかに連絡が取れるようにするための調査を行い、それぞれの障害の特性を理解し、災害発生時その他の緊急時にその特性に応じた支援を行わなければならない。
~以下略~
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成23年4月1日から施行する。ただし、第10条から第14条までの規定は、平成24年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 第10条の規定の施行の日前に行われた差別については、同条の規定は、適用しない。
(検討)
3 市長は、この条例の施行後5年を目途として、障害者に係る法制度の動向を勘案し、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じるものとする。
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ノーマライゼーション(normalization)は1960年代に北欧諸国から始まった社会福祉をめぐる社会理念の一つ。障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方。またそれに向けた運動や施策なども含まれる。
(出典Wikipedia)
教育関係の法文、条例は読み慣れているが、福祉関係はそうでもない。だから、この条例の書き方、内容が、県内市町村の同様のものと比べてどうなのかはコメントできない。でも、かなり総合的・網羅的に思える内容だと思う。
この、通称ノーマライゼーション条例だが、本文にはその定義はない。全体を通して、ノーマライゼーションとはどんなことなのか、定義しているように読めた。
ノーマライゼーションという単語は、日本語として、定着している用語とは言えない。概念としてもまだまだ新顔である。国立国語研究所の外来語言い換え提案は、「等生化」「等しく生きる社会の実現」である。本当に世の中を変えることをめざすのならば、地味なことだけど、なんだかわからない、定着していないカタカナ語の通称よりも、正式名称のさいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例、(面倒くさくても)と書くほうがいい。へたにカタカナ語で定着すると、中身が伝わらないことだってある。
『ノーマライゼーション?
『なにそれ。(興味をもってもらえるだけましかもしれない)
『わかんな~い。
わかってもらえないもの、こと、考えは、定着しないのだ。結果的に、さいたま市という地域社会を、条例前文でめざす社会に近づけることに役立たない、役立てないことになるかもしれない。
通称を変えてはどうだろうか。一言加え、ノーマライゼーション(等生化をめざす)条例なんてどうだろう。