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ギガノトサウルス1

 ギガノトサウルスは、白亜紀前期末から後期初め(オーブ期~セノマン期)にアルゼンチンのパタゴニア(ネウケン州)に生息したカルカロドントサウルス科の巨大カルノサウルス類で、1995年に記載された。
 頭骨は長く、相対的に丈が低い。眼窩の上の涙骨と後眼窩骨の結合部が広く、下顎の歯骨の先端が上下に拡張して角張った形になっている(カルカロドントサウルス科に共通)。方形骨は長く、内側に2つの孔がある。涙骨の突起lachrymal hornは後方が尖っているが長い稜状ともみえる。歯は薄く鋭い。脊椎骨は太く頑丈にできている。全体にティラノサウルスよりもがっしりした、重量級の体型である。3本指の前肢はティラノサウルスよりも大きいが、肩帯は小さめであるという。
 1998年に国立科学博物館の「大恐竜展:失われた大陸ゴンドワナの支配者」で初めてギガノトサウルスの全身復元骨格を見た時は、確かに巨大ではあるが、ティラノサウルスほどの美しさがないと感じた。また、ギガノトサウルスといえば金子隆一氏の「最新恐竜学レポート」(2002年)にある「ギガノトサウルス水増し疑惑」を思い出してしまう。ギガノトサウルスの復元頭骨は、テタヌラ類にしては妙に後頭部のライン(鱗状骨、方形骨の角度)が斜めになっており、側頭窓が大きくなっているが、ティラノサウルスよりも大きい世界最大の肉食恐竜ということで、長さを増す方向に手心が加わったのではないか、ということである。この件はその後、どうなったのだろうか。この点を踏まえて、あえて後頭部を短く修正した復元図もみかける。一方、BBCの「ウォーキング・ウィズ・ダイナソー:タイムスリップ恐竜時代」では後頭部の長さがやや強調されているようにみえる。

 ギガノトサウルスの頭骨は、私にはどことなく「悲しげな目つき」をしているようにみえるが(般若のような憤怒の表情にもみえる)、先に述べた眼窩の上の特徴のためである。涙骨と後眼窩骨の結合部と書いたが、眼窩の上にひさし状の骨があり、supraorbital shelfと称される。ギガノトサウルスではsupraorbital shelfは主にpalpebral (まぶた骨)という独立した骨からなり、これが後に後眼窩骨と癒合するようである。最近記載された近縁のマプサウルス(ギガノトサウルス亜科)にも同様にpalpebralからなるsupraorbital shelfがあるので、同じような「目つき」をしていたはずである。palpebralは、カルカロドントサウルス類の他にアベリサウルスにもみられる。
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