彦四郎の中国生活

中国滞在記

そして、中国は今—それはもう、空恐ろしく徹底したコロナ防疫を世界に誇る―印・日・台の防疫に対しては‥

2021-05-05 13:34:57 | 滞在記

 中国でのコロナワクチン接種の総回数は4月上旬には1億2000万回を超し、4月20日頃には2億回に迫り、4月下旬にはアメリカと肩を並べる2億3000万回に、そしてこの5月上旬には2億5000万回を優に超えているかと推定される。4月上旬の頃、中国の国営中央テレビ(CCTV)の報道番組では、女性アナウンサーが"ワクチン接種を促進する"一環として、ワクチン促進ソング♪♪を歌っていた。その歌詞は、「我们一起打疫苗一起苗苗苗苗~(私たちはみんな一緒にコロナワクチンを打ちましょう ワクチン・ワクチン・ワクチン‥‥」というもの。聞いてみるとなかなか覚えやすいリズムと歌詞だ。

    まあ、あの手この手でワクチン接種促進の取り組みをしているようで、省や市によっては、ワクチン接種をしたら米5kgや野菜などの景品を付けるなど、中国で32余りある各省では、ワクチン接種率を競う様相もあるようだ。(※中央政府からの評価につながる)

 日本のテレビでこの中国のコロナワクチン接種に関する報道で、接種を受けた人に対してのインタビューに、「ワクチンを接種すること国民の義務だ」の声も伝えていた。そして、北京のある団地の警備員は、「接種していなければ団地に入れません。接種や監視カメラで記録も残ります」「持病などのため接種を受けられない人は証明書が必要」などの報道もされていた。北京の団地によっては4月6日からワクチン未接種者は団地の出入り禁止も。中国の政治行政では、中央政府—省政府—市政府—区(県)政府となっているが、区(県)政府でもワクチン接種率を競うため、市政府内でも区(県)政府の対応は違ってくることも多い。

 広東省では「接種をしない人はブラックリストに載せる。その人は学校や仕事に悪影響が出るだろう」との通知が出された。これらもワクチン接種率を上げて、「私のところではこれだけ頑張っていますよ」と中央政府からの評価を高めるための忖度(そんたく)だ。さすがにこれに対しては、国営・新華社通信は3月31日付で「接種を進めるために行政が権力を使って介入している」との批判記事を掲載した。

 それはそうだろう、この3月31日時点で、中国全土の接種数は1億2000万回(※ほぼ1回目の接種数)で、全人口の11人に1人、約10%の1回目接種率だったのだから。

 3月10日頃のことだが、香港で中国製ワクチン「シノバック」を接種した人が6人、接種後に死亡したとの報道がされた。接種による副反応によるものとみられている。このこともあり、香港では林鄭月娥香港行政長官自らワクチン接種を行い、「ワクチン接種のメリットはリスクを上回っている」とコメント。しかし、「シノバックのワクチン接種会場に現れず キャンセル 3割に達する日も」の報道がされていた。

 香港に隣接する広東省、ワクチン接種をキャンセルすることに危機感を覚えたのか、前出の「ブラックリストに載せる」通知の顛末となったのかとも推測する。

 中国では昨年の12月から2月上旬にかけて、河北省や北京市、東北三省(遼寧省・吉林省・黒竜江省)で数百人規模の感染のクラスター拡大が広がった。都市封鎖・省封鎖・大規模なPCR検査などの実施により、ほぼ2月上旬までにこの感染拡大は抑止されたが、2月12日前後から始まった中国の春節(旧正月)の2週間余りの祝祭日期間は、帰省や旅行は強力な自粛が求められ、人々の移動は特別な許可などがない限り制限された。その後、ほぼ新たな感染は報告されなかったが、中国西南部の雲南省の街で3月下旬ころから4月にかけて約40人の感染者が報告された。この街はミャンマーとの国境の街。30万全市民はPCR検査を受け、1週間の自宅待機となり、感染拡大をくい止めた。

 そして、コロナ新規感染者がほぼなくなっていた4月3・4・5日の3連休(「清明節」日本のお盆のような祝祭日)には、約1億人が旅行や帰省のための移動した。

 4月20日頃には2億回を超えた中国のワクチン接種数だが、SNSで「ワクチンを打った人が亡くなった」と投稿した女性が拘束された。南京市のサイバー警察は4月20日、「新型コロナワクチンを接種した人が亡くなった」とSNSに書き込んだ女性について、「デマを流した」として拘束したと発表。サイバー警察により公開された女性のSNSの実際の投稿を見ると、「不能打我们程桥一个人好好的就打死了」(ワクチンを打ってはいけない。健康な人が接種した後に亡くなった)と書かれている。警察は「女性がワクチンは問題がないと分かりながらも人々の関心を引くために故意に書き込んだ」と供述したと述べ、今後もこうした事案については厳しく対処すると警告した。

 中国ではワクチンを接種した人に向けたスマートフォン用の証明書、いわゆる国内版の「ワクチンパスポート」が登場している。証明書には「ワクチン接種完了」と書かれていて、次のように2回の接種の日付とワクチンの種類が記されている。これから中国で生活するためには、2〜3カ月後にはこの国内版ワクチンパスポートの提示は必須となっていくだろう。(疫苗接種完成—疫苗名称・科興中維 新冠疫苗—第一次2021・3・2  第二次2021・3・23)

    このような国内版ワクチンパスポートは、中国だけの話ではない。アメリカのニューヨーク州などでも州独自のワクチンパスポートを3月26日から実施している。コンサート会場やイベント会場などへの入場に際して、PCR陰性証明やワクチン接種完了証明の提示を義務化してきている。これらの国内向けワクチンパスポートの実施を世界に先駆ける形で実施したのはイスラエルだった。EU諸国では、今年の夏までにこのワクチンパスポートの導入を計画している。

 中国政府外交部は3月20日、新型コロナウイルスの中国製ワクチンを接種した場合、中国への入国に必要なビザ発給を容易にするとの新たな方針を発表した。ただ、接種を終えて中国入りした渡航者の2〜3週間の隔離(隔離用ホテル2週間・自宅1週間の厳重な隔離)の措置については変更はない。3月20日時点でもWHOは中国製ワクチンを一切承認していない。また、中国は最終治験の結果を全面的に開示しておらず、安全性にも疑念が生じている。既に公開されているデータによると、中国製ワクチンは欧米などのワクチンと比べ効果が少ない可能性が示唆されてもいる。

 中国政府のビザ発給に絡む便宣供与については、WHOが承認しより高い有効性をもつとされるワクチンより、自国製を優先的に扱うことへの懸念が出ている。他国に中国製ワクチンを強要する手段との批判だ。「実質的に中国を訪れたかったら中国のワクチン接種を」要求しているのと同然で、「問題あるワクチン外交」との受け止め方もある。また、今回打ち出した措置については、対中牽制の色彩が強い日米印豪の枠組み「グアッド」が3月中旬に宣言したインド太平洋地域でのワクチン配布計画を意識したものとの見方もある。ブリンケン米国務長官は中国製ワクチンは「ひも付き」とも酷評していた。

 3月20日時点で、中国製ワクチン(シノバックやシノファーム)の対外援助先は発展途上国を中心に計80か国と3国際組織に上っているとし、「建国以来初の大規模なワクチン提供だ」と強調した。援助先はアジア26カ国、アフリカ34か国などのほか、アフリカ連合(AU)といった国際組織。「世界にワクチンが不足し、豊かな先進国での接種が先行する中で、貧しい国家は無力だ」と指摘、「途上国がより多くの庶民の命を救うことを支援するのが中国の目標だ」と語った。

 日本の河野ワクチン担当相は、「ワクチンパスポート」の国内向け版についての導入は今のところ考えていない(慎重な姿勢)が、海外渡航者向けのワクチンパスポートの導入の検討を進めていることを4月28日に発表した。

 このようなコロナワクチンを巡る中国の状況だが、中国疾病対策センター(CCDC)トップの高福センター長が、4月10日の記者会見で、「外国での臨床試験では、中国製ワクチンの効果は50%程度しかないとする結果も出ている」「予防できる確率はあまり高くない」として、中国製ワクチンの効果の問題に言及した。この効果の低さを改善するために、いつくかのワクチン種を混合させることも検討しているとも述べた。

 しかし、この発言を中国政府は問題視し、その後 高福氏は、自らの発言を軌道修正し、「世界のすべてのワクチンが、予防効果の高い時もあれば低い時もある」と述べ、「どのように効果を高めるかという問いは、世界の科学者が考えなくてはならない」、また、中国製のワクチンの予防効果が低いとした発言については「完全な誤解だ」とした。この4月10日からの一連の高福氏の会見に関する報道は、中国ではほぼ報道されていない(報道規制)ようだ。

 中国製のワクチンのブラジルにおける臨床試験の結果は、有効性は50.4%と報告されている。WHOがワクチン上人の条件とされる50%をわずかに上回るものだ。一方、ドイツのビオンテックとアメリカのファイザーが共同開発したものや、アメリカのモデルナ、イギリスのアストラゼネカなど欧米のワクチンは全て、90%前後がそれ以上の効果が示されている。

 ―中国のワクチンと欧米のワクチンの大きな違い―

 中国製のものは「不活性ワクチン」と呼ばれる。病原体(毒素) を完全に消滅させた、重症化リスクのないウイルスを免疫システムに植え付けるもので、より伝統的な方法を採用している。これに対し、欧米のワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれる。新型コロナウイルスの遺伝子コードの一部を人体に接種し、免疫システムの対応力を鍛える方法をとっている。(米国のモデルナやファイザーなど)   ただ、英国のアストラゼネカは、これらのものとは少し異なる。チンパンジーから採取した風邪ウイルスに、新型コロナウイルスの遺伝物質を混入させいいている。このワクチンを接種することで、実際の新型コロナウイルスとの闘い方を、免疫システムに学ばせるという仕組み。

 中国製ワクチンの大きな強みの1つは、摂氏2〜8度の一般的な冷蔵庫で保管できる点だ。モデルナ制はマイナス20度、ファイザー製はマイナス70度での保管が必要だ。だが、中国政府は今後、欧米の「mRNA」型の開発を急いでいるとの報道もある。製造している現行ワクチンの有効性の低さを中国自身が問題視していることの現れとも見られている。

 この5月1日(土)から5日(水)までの5日間、中国は大型連休となった。このような措置は、私の8年間の中国滞在の中でも初めてのことだ。例年、5月1日は労働節(メーデー)のため祝日とはなっていた。また、大学などでは5月3日の午後は「青年節」のため授業は休講措置だった。それだけだったのだが、今年は、5日間もの大型連休となったのだ。これは、今年の春節時期の移動制限で大きく急ブレーキをかけたことへの、国民に対するお返し的な意味をもつものかと思われる。ちょうど季節もよく、また、土日とも重なったことにもよるかと思うが。

 このため、5月3日(月)は労働節(土)の振替休日となり、4日(火)の仕事や授業は4月25日(日)に出勤や授業を振替実施した。私も、この4月25日には振替授業を行った。5月5日(水)は政府からのおまけ(プレゼント)の休日かと思われる。日本のテレビ報道で、中国ではこの大型連休期間中に2億6500万人の人が旅行や帰省などで移動したと報じられた。上海などのホテルの予約数は、去年2020年の同じ時期の12倍、感染拡大前の2019年の同じ時期の1.2倍に上ったとの報道も。万里の長城も前に進めないほどの人の大混雑。観光に来ていた人へのインタビューでは、「(旅行は)1年ぶりです。コロナが落ち着いたから」「多くの人がワクチンを接種していて安心ですよ」の声など‥。

 対中牽制の米日印豪のクアッドに参加しているインドが1日新規感染者40万人超、1日の死者3000人超の状況下に陥っているこの4月~5月の爆発的感染拡大の悲劇。中国でも連日この状況について報道がされている。こんな中、最悪のコロナ感染拡大中のインドに対して、中国外交部の汪報道官は「インドが(新型コロナ)管理下に置くために必要な支援を行う準備ができている」と、中国製ワクチンの提供に名乗りを挙げた。

 だが、インド政府は国境問題などでの外交関係での難しさや対立を抱える中国からのワクチン支援よりも、ロシア政府からのワクチン支援の方を選択しているようだ。世界に先駆けてロシアは昨年の11月には治験を終了したとして、国産ワクチン「スプートニクV」の接種を開始。現在はすでに世界50カ国以上で承認されている。ロシアのワクチンについては、「アメリカ製ワクチン―接種後、"自由"や"正義"が口癖になる」「ロシア製ワクチン―接種後、オリンピックで金メダルが取れるようになる」と揶揄されてもいるものだが‥。しかし、国内感染の爆発によって、インド政府はこのロシアからのワクチン支援を実現するために、4月20日頃に、「ロシア製ワクチンの承認」を行った。5月1日からインドは、ロシアからの1億回数分のワクチン支援を順次輸送受け取ることとなっている。

 全世界的なコロナパンデミックの原因をつくったとされる中国が、感染症の爆発的拡散により困難に直面しているインドをあざける掲示物をあげたことにも物議を呼んでいる。5月2日、中国版ツィツター"微博(ウェイボー)に、中国のロケット発射の場面とインドの死者の火葬の場面を比較する超上から目線のあざけり写真が投稿されていたのだ。この投稿は、中国で最高の公安組織「中央政法委員会」が運営するアカウントに掲載されたもので、またたくまに拡散。

 中国は新型コロナウイルスの世界的パンデミックの責任をとるべきだとの世界各国の批判がある状況下‥。ロケットの発射場面は、先月 中国が独自の宇宙ステーションのための「天河」を発射する場面の写真。この投稿には
「中国で火をつける時と、インドで火をつける時」という露骨な優越感のメッセージが記されていた。この投稿は、国内外の批判を意識してかまもなく掲載を削除されたようだ。

 中国政府はすでに、来年の2022北京冬季オリンピック開催に向けて、IOCに対して「大会関係者や選手などへの中国製ワクチンの無償提供」を申し出て、IOCバッハ会長は歓迎の意向をコメントしている。また、中国政府は東京五輪開催に向けての日本へのワクチン供与についても言及してきている。

 日本の第4波感染拡大や緊急事態宣言の発令の報道も中国ではよくされてきているが、4月中旬に米国バイデン大統領と日本の管首相との首脳会談で台湾の防衛に関して「台湾」を共同宣言で明記したことの影響もあるのか、菅政権に対しての批判を少し強めているようだ。菅政権のコロナ対策についても厳しい論調が増えてきているし、東京五輪開催に関しても「全面的な支持」から一転して、「開催を危ぶむ」論調へと変化してきている。

 台湾ではこの4月下旬から5月上旬にかけて、チャイナエアライン(中華航空)の乗組員の宿泊を受け入れていた北部・桃園市のホテルで感染者が出て、4月20日から約2週間で計24人のクラスター感染が確認された。感染者の中には首都の台北などへの行動歴を持つ人もおり、市中感染の拡大が懸念されている。蔡総統は、国内感染者増加により、多くの人々への影響は免れないとしつつ、「団結して取り組めば、台湾のコロナ防衛線は守り続けることができる」との声明。

 この台湾のコロナ感染に関しては、中国でのマスメディアの報道は、対コロナ防疫の指揮をとる陳時国氏らの困り顔の写真を大きく掲載するなど、かなり、「それみたことか‥」的な揶揄(やゆ)報道が大勢を占めている。まあ、「中国は世界で一番に優れた防疫体制をもつ国だ」との上から目線と台湾蔡政権憎しの報道だ。

◆中国でのワクチン接種は、来年2月開催予定の北京冬季オリンピックに向けて急速に進められている。この5月上旬には2億5000万人が第一回目の接種を完了していると思われる。だが、まだ全人口の20%。しかし、おそらくこの6月末までにはさらに接種回数は急速に進み40%に至る(中国政府の目標)かと思われる。だが、中国国民にとって接種を希望する人は日本に比べてかなり低いと推測されている。中国の人がワクチンを打ちたくない理由とは?

  日本では、3月末に中央調査社が実施したアンケートでは、ワクチン接種を希望する人は全体の8割に上っている。中国では日本のようなアンケートは実施されていないので接種希望の割合はわからないが、日本よりかなり低いのではないかと推測されてもいる。ワクチンを接種したくない理由として、「①コロナはほとんど沈静化しており、今更、ワクチンを打つ必要性を感じにくいから。②中国製ワクチンの治験データーが開示されておらず、なんとなく怖いから。③ワクチンの有効性がよくわからないから。」が挙げられる。

 しかし、国内ワクチンパスポートが生活のいたるところに広がり強制力をもつこととなれば、生活の為にはワクチン接種が半ば義務付けられることとなるので、その意味で、ワクチン接種を希望する人の割合は増加せざるをえなくなるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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