2022年10月、第20回中国共産党大会にて、(2018年に憲法を改正し)異例の第3期目の中国(国家主席・共産党総書記・共産党軍事委員会主席)の最高権力者に就任した習近平氏。2018年頃より、香港問題への対応や外交では「戦狼外交」など、国内外に強硬な政治姿勢を取り続けてきていた習近平氏だったが、新型コロナウイルス感染パンデミックへの、あの世界的にも例を見なかった「ゼロコロナ政策」の突然の廃止を22年12月に発表。
対日政策では、23年8・9月に福島第一原発処理水の海洋放出を巡っての日本産海産物の全面禁輸を発表。しかし、その1年後の24年9月には、その禁輸措置緩和を発表した。同年11月、APEC首脳会議の期間中に、日本の石破首相との初会談を行った。その後の11月下旬、日本人に対する短期訪中渡航でのビザなし渡航(30日間)の再開を発表した。
これらの一連の、中国共産党の対日政策の変化は、第二次米国トランプ政権(トランプ2.0)誕生という政治情勢の変化に対し、「米国と日本の間に楔(くさび)を打つ」ために日本との融和政策を進めるためのものと解釈されてきていたが、どうもそれだけではなく、中国の権力構造(習近平氏の個人権力集中)に、大きな変化が実は進行し始めていたためではないかと現在は推測もされ始めている。そしてそれは、あの2022年10月の第20回中国共産党大会で、前総書記の胡錦濤氏が会場から強制退場させられた出来事が大きな変化が起きることとなった始まりだったとも‥。そしてそれはさらに、23年10月の前中国共産党国務院首相の李克強氏の突然の死去事件により、中国の政権内部中枢で、その大きな変化の流れが加速し始めたとも最近は伝えられもしている‥。
中国の人々も世界の人々も中国の国内政治の突然の大変化に驚いた出来事が2025年の「春節」の後の2月17日にあった。それは、北京の人民大会堂にて、「中国の民間大企業代表者31人を招いての懇談会」を習近平氏らチャイナセブンらも参加して開催されたことだった。日本のテレビ報道では、「習近平氏 民間企業の支援方針を強調—アリババや新興企業"Deep Seek"の創設者など、中国の民間企業(31社)のトップらが出席」と題されて報道された。中国国内のネットニュースなどでは、アリババの創業者・馬雲氏(ジャック・マー)の中国帰国に関して、「馬雲回国(帰国)!」「馬雲回復(復権)!」などと報じられてもいた。2020年以降、中国のIT関連民間大企業などに対して大きな規制や圧力をかけ続けてきた習政権だったのだが‥。
このような政策の大変化は、中国での経済問題での大不況の長期化に対応するためとされていたが、どうもそれだけではなく、権力構造に大変化が起きているためとの推測も現在され始めている。はたして、中国の権力構造(政権)に何が起きているのだろうか。いろいろな憶測が広がっている2025年7月現在‥。
7月12日付朝日新聞には、「日中思惑一致 進む関係改善 牛肉輸出再開へ—日本政府 参院選追い風期待、中国政府 日米間くさび狙う—トランプ関税"貿易戦"背景」の見出し記事。
12日付同紙の社説には、「弁護士弾圧10年 中国の深刻な人権無視」の見出し社説記事。17日付同紙には、「"スパイ活動"拘束3年6月 中国判決 アステラス社員(60代男性)に」「"スパイ行為"不透明な中国—アステラス駐在員に拘束刑判決 不安広がる日系企業 対応手探り」「判決時期配慮か 駐在員希望減る」「"居住監視"刑務所より辛い—中国に6年間拘束された男性(鈴木英司さん)語る、部屋に男2人と 会話できず 読み書き許されず 時計なし」などの見出し記事。そして「中国の邦人有罪 透明な不当判決」と題された社説記事などが掲載されていた。
このアステラス社員に対する判決に関して、日本のBS報道番組「インサイドOUT」にコメンテーターとして出演していたジャーナリスト(中国社会・政治経済の専門家)の近藤大介氏は、「これまでの日本人に対するスパイ容疑での判決は、6年~12年が多かっただけに、今回の3年6月というのは、かなり短い判決となっている。逮捕されたのが一昨年だったので、すでに2年半あまり刑務所に収監されているので、刑期はあと1年間余りとなる」と説明していた。(※この60代のアステラス社員は、中国に3万社余りある日系企業の商工会の副会長でもあった。)
このように、中国政府のこの10カ月間余りの国内・国外、そして対日政策はかなり融和的なものとなってきている。これはいったいなぜなのか!?中国で10年が経過した300人超の弁護士への弾圧事件だが、これまでは絶対許されなかった日本の報道機関の弁護士たちへの取材が一部許可されていて、それが、最近日本で報道されてもいた。
はたしてこの政治的政策の変化は、いったい中国で何が起きているからなのだろうか‥?なぞは深まるばかりだが、その「何かが起きている」ことについては、日本の報道番組で、これまで一切報道されてこなかった。だが、ようやく今年の7月に入り特集的に報道がされ始めた。(➀TBS、BS報道番組「報道1930」、➁ABC「大下容子のワイドスクランブル」、③BS報道番組「インサイドOUT」などで)
さて、昨日20日(日)に投開票となった日本の参議院議員選挙。本日21日付朝日新聞には、「自公大敗 議席大幅減—石破首相、続投意向を表明」「立憲横ばい 国民・参政大幅増、政権 不安定化は不可避」「立憲 揺らぐ"盟主"の座、公明 厳しい戦い 責任論にも、国民民主 衆参で増す存在感、維新遠い"全国化"、共産 退潮浮き彫り、参政 無党派層を取り込む、比例で伸び欠き れいわに埋没感、参院でも議席 保守党が獲得、社民 政党要件崖っぷち」などの、参院選挙結果についての見出し記事。そして、「自公大幅減と進む多極化 戦後政治の大きな転換点」と題された社説記事。
中国政府としては、石破政権を評価している(石破首相の続投を望んでいる)だけに、今回の参議院選挙の結果、今後、日本の政治状況がどうなっていくのか‥。気になるところであるだろう。日本も欧米のような、社会や政治にたいする国民の不満や不安感を利用して、過激に国民を扇動するポピュリズム政党が存在感をもってきた時代に入ったようだ。民主主義政治の困難さというもののの一面を改めて思う。そして、偽情報なども使いながら国民を扇動する政党の増長を防ぎ、民主主義が正しく作用するための社会的な重要さも‥。
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