MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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Mundayの『翻訳研究入門』第2版

2008年08月18日 | 

Jeremy Munday (2008) Introducing Translation Studies: Theories and Applications, 2nd ed. (Routledge)がようやく届いた。Amazon Japanではいまだに10/14発売、予約受付中になっていますが嘘です。急ぐ人はRoutledgeに直接注文のこと。
初版が2001年だから7年ぶりの改訂になるが何が変わったかというと、…あまり変わっていない。強いて言えば最終章にaudiovisual translation, globalization/localization, コーパス研究を入れたこと。もちろん各章で細かい改訂はしている。たとえば認知的翻訳理論、関連性理論、翻訳の歴史と社会学、翻訳とイデオロギーなどのテーマを含めている。(初版ではGuttが本筋では扱われていないのが意外だった。)あとは当然ながら文献などが刷新されている。分量は全体で14ページの増加。もとよりこれだけの分量ですべてを十分に扱うことなどできないから、要はバランスの問題になる。その点では未だに手にしうる最良の翻訳研究入門書という評価は揺るがないだろう。しかし、ここはあえて弱点を指摘しておく。認知的翻訳理論といっても取り上げているのがパリ学派の解釈理論やRoger Bellというのはどういうわけか。こんなものはなくていいから認知言語学的翻訳理論や作動記憶理論をベースにした翻訳理論などを挙げるべきだろう。認知的翻訳理論と言えば当然そうなる。FSPの扱いも小さすぎる。語用論ではRobinsonによる新展開を考慮していない。また総じてそれぞれの理論の説明が浅すぎる。それは入門書には避けられないことかもしれないし、研究の入り口を指し示せばそれでよいという考え方もあるだろうが、
もう少しつっこんだ議論が欲しい。否定的なことばかり言ったようだが、先にも述べてあるように、これ一冊でTranslation Studiesの基本的な領域をほぼ鳥瞰できるという意味では、今のところこれ以上のものはない。