(以下、毎日新聞【奈良】から転載)
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newsそれから:夜間中学の補助削減 /奈良
学齢期に学校に通えなかった人たちを主な対象にした夜間中学(中学校夜間学級)について、御所市教委は08年4月、補助してきた補食費(給食費)などの自己負担や修業年限の短縮などの方針を打ち出した。夜間中学は必要なのか、という根本的な問題が問われている。県立奈良高校長などを歴任した御所市教委の上田貞夫教育長と、元県立高教諭で橿原市立畝傍中学校夜間学級の支援活動を続けている市民団体「橿原市に夜間中学をつくり育てる会」の米田哲夫代表に、考えを聞いた。【山成孝治】
◇金出すのは筋違い--御所市教委教育長・上田貞夫さん
--なぜ、補助を削減したのか。
上田 昼に通う子どもが給食代や遠足代を自己負担しているのに、働いている大人が払うのは当然だ、ということだ。
--義務教育なのに、居住地によって負担に差が出るのはよくないのではないか。
上田 それなら、皆さんが御所市の方式に合わせればいいのではないか。生活保護を受けている人は支援している。何ら問題ないと思う。
--財政的にできなくなったので、やめようということなのか。
上田 そうではなく、筋違いということ。なぜそんなところに金を払うのか、という素朴な疑問だ。私は、夜間中学の役割はほとんど終わっているのではないかと考えている。
--なぜ、そう思うのか。
上田 夜間中学は学齢期に行けなかった人が行く学校。しかし、御所市の場合、ここ30年、そんな子は一人もいない。学校に来ない子がいれば、呼びに行く。放っておくような市町村は、日本中探してもどこにもない。
--夜間中学の将来像をどう考えているのか。在籍年数は、内規で最長4年にしているが。
上田 規定では在籍は3年。留年する場合には、事前にこちらに相談してもらう。(現状の夜間中学について)率直に言えば、今、サロンになっている。
--どういうことか。
上田 交通費も出してくれ、食事も出て、遊んでくれる。これは学校ではない。
--それでは、夜間中学はどういうものにすればいいのか。
上田 中学の勉強がしたいというのなら、県教委に提出している教育課程表の通りに授業すればいい。
--英語や数学をきちんと履修せよということか。
上田 しかし、現状では、日本語教育ばかりだ。例えば、中国残留孤児なら、いろいろな事情で日本国籍を失っているかもしれないが全力で面倒を見る。しかし、中国で大学を出ているのに、日本語を勉強しに夜間中学に通っている人もいる。夜間中学は日本語を教える場所ではない。
◇実態、理解してない--橿原市に夜間中学をつくり育てる会代表・米田哲夫さん
--子どもが金を払っているのに、大人が負担するのは当然、という考え方がある。
米田 仕事を終えて直接、学校に来る人が、何も食べずに勉強するのは、健康上、よくないので、パンと牛乳の「補食」を出している。また、交通費を補助しているのは、夜間中学が県内に3校しかなく、徒歩や自転車での通学が困難な場合が多いため。義務教育なのだから、必要な補助をするのは当たり前ではないだろうか。
--夜間中学に通っている人の多くが外国人だ、という考えもあるようだ。
米田 「外国人」と言われているのは、日本人と結婚して日本に来た人、日本が進めたブラジルやペルーなどへの移民の2世、「中国残留孤児」の関係者という三つのパターン。こんな表現は使いたくないが、ある意味では、ほとんどが近代日本の「負の遺産」ではないか。外国人が日本に勝手に来て、日本語を覚えるために夜間中学に来ている、というのは、夜間中学生の実態を理解していない人が言うことだと思う。
--では、今回は何が一番の問題なのか。
米田 4年という在籍年数。学ぶ側にはきつい。
--「きつい」とはどういうことか。
米田 読み書きだけでも、3年や5年で学び切れるものではない。小学校もまったく不就学という人が来ることも想定しなければならない。
--金を出す側からすれば、役立つかどうか分からないものに金は使えないと考える。
米田 教育はある意味で投資だから、外国人やお年寄り、障害者といった人たちへの教育は「経済効率がよくない」と考えられるかもしれない。しかし、「人権の時代」と言われている今、夜間中学はまさに「宝の山」ではないか。昼の中学生が見学に来て、70歳のお年寄りが一生懸命勉強している姿を見て、感動して帰る。米国のハーバード大学でハイチの人たちへの識字教育を実施しているグループも何度も交流に来ている。夜間中学に通う人たちの姿から、学ぶことの普遍的な意味が理解できる。
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newsそれから:夜間中学の補助削減 /奈良
学齢期に学校に通えなかった人たちを主な対象にした夜間中学(中学校夜間学級)について、御所市教委は08年4月、補助してきた補食費(給食費)などの自己負担や修業年限の短縮などの方針を打ち出した。夜間中学は必要なのか、という根本的な問題が問われている。県立奈良高校長などを歴任した御所市教委の上田貞夫教育長と、元県立高教諭で橿原市立畝傍中学校夜間学級の支援活動を続けている市民団体「橿原市に夜間中学をつくり育てる会」の米田哲夫代表に、考えを聞いた。【山成孝治】
◇金出すのは筋違い--御所市教委教育長・上田貞夫さん
--なぜ、補助を削減したのか。
上田 昼に通う子どもが給食代や遠足代を自己負担しているのに、働いている大人が払うのは当然だ、ということだ。
--義務教育なのに、居住地によって負担に差が出るのはよくないのではないか。
上田 それなら、皆さんが御所市の方式に合わせればいいのではないか。生活保護を受けている人は支援している。何ら問題ないと思う。
--財政的にできなくなったので、やめようということなのか。
上田 そうではなく、筋違いということ。なぜそんなところに金を払うのか、という素朴な疑問だ。私は、夜間中学の役割はほとんど終わっているのではないかと考えている。
--なぜ、そう思うのか。
上田 夜間中学は学齢期に行けなかった人が行く学校。しかし、御所市の場合、ここ30年、そんな子は一人もいない。学校に来ない子がいれば、呼びに行く。放っておくような市町村は、日本中探してもどこにもない。
--夜間中学の将来像をどう考えているのか。在籍年数は、内規で最長4年にしているが。
上田 規定では在籍は3年。留年する場合には、事前にこちらに相談してもらう。(現状の夜間中学について)率直に言えば、今、サロンになっている。
--どういうことか。
上田 交通費も出してくれ、食事も出て、遊んでくれる。これは学校ではない。
--それでは、夜間中学はどういうものにすればいいのか。
上田 中学の勉強がしたいというのなら、県教委に提出している教育課程表の通りに授業すればいい。
--英語や数学をきちんと履修せよということか。
上田 しかし、現状では、日本語教育ばかりだ。例えば、中国残留孤児なら、いろいろな事情で日本国籍を失っているかもしれないが全力で面倒を見る。しかし、中国で大学を出ているのに、日本語を勉強しに夜間中学に通っている人もいる。夜間中学は日本語を教える場所ではない。
◇実態、理解してない--橿原市に夜間中学をつくり育てる会代表・米田哲夫さん
--子どもが金を払っているのに、大人が負担するのは当然、という考え方がある。
米田 仕事を終えて直接、学校に来る人が、何も食べずに勉強するのは、健康上、よくないので、パンと牛乳の「補食」を出している。また、交通費を補助しているのは、夜間中学が県内に3校しかなく、徒歩や自転車での通学が困難な場合が多いため。義務教育なのだから、必要な補助をするのは当たり前ではないだろうか。
--夜間中学に通っている人の多くが外国人だ、という考えもあるようだ。
米田 「外国人」と言われているのは、日本人と結婚して日本に来た人、日本が進めたブラジルやペルーなどへの移民の2世、「中国残留孤児」の関係者という三つのパターン。こんな表現は使いたくないが、ある意味では、ほとんどが近代日本の「負の遺産」ではないか。外国人が日本に勝手に来て、日本語を覚えるために夜間中学に来ている、というのは、夜間中学生の実態を理解していない人が言うことだと思う。
--では、今回は何が一番の問題なのか。
米田 4年という在籍年数。学ぶ側にはきつい。
--「きつい」とはどういうことか。
米田 読み書きだけでも、3年や5年で学び切れるものではない。小学校もまったく不就学という人が来ることも想定しなければならない。
--金を出す側からすれば、役立つかどうか分からないものに金は使えないと考える。
米田 教育はある意味で投資だから、外国人やお年寄り、障害者といった人たちへの教育は「経済効率がよくない」と考えられるかもしれない。しかし、「人権の時代」と言われている今、夜間中学はまさに「宝の山」ではないか。昼の中学生が見学に来て、70歳のお年寄りが一生懸命勉強している姿を見て、感動して帰る。米国のハーバード大学でハイチの人たちへの識字教育を実施しているグループも何度も交流に来ている。夜間中学に通う人たちの姿から、学ぶことの普遍的な意味が理解できる。
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