多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

増える外国人児童 届かぬ日本語教育

2011-01-24 17:45:39 | 多文化共生
(以下、朝日新聞【神奈川】から転載)
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増える外国人児童 届かぬ日本語教育

2011年01月23日
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放課後、中国から来た児童らは中国語と日本語で勉強している。先生はボランティア=横浜市南区の南吉田小学校
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信愛塾でボランティアとして後輩の面倒をみる中国人の生徒(右)=横浜市南区中村町1丁目

 県内で増え続ける外国人の住民。その子どもたちは地域の学校で日本語で教育を受ける。しかし、現場での対応が追いつかず、日本語能力が備わらないまま卒業する子が多いのが実情だ。教育現場を追った。

(北崎礼子)

 にほんごがわからないよ――。横浜市南区にある市立南吉田小学校の6年生の教室。社会科の授業で先生が話している最中、中国福建省から来た男の子(12)はうつむいたままだった。鉛筆は進まず、ノートは白紙。先生に指されても教科書のどこを見ていいのかわからない。両親と来日してから3年、ずっとこんな状態が続く。

 休み時間になると、男の子は中国人仲間の輪にいた。どうしても言葉の分かる者同士で固まってしまう。教室は児童が話す中国語や韓国語、タイ語でにぎやかだ。

 南吉田小ではここ5~6年で外国籍の子や片親が外国籍の児童が急増。全校児童600人のうち、その数約200人で13カ国にまたがる。3人に1人が外国籍関係で、50人は日本語が全く分からない。
 同校では日本語が分からない子のために国際教室を設けて日本語指導をするが、基準は児童20人に対し先生2人。教員は増員されず需要に追いつかない。授業が一番多い児童でも週に3コマだ。通訳できるボランティアを学校が探すが、多くは定着しない。

 藤田耕平校長(53)は「日常会話はできても、ものを考える基礎になる学習言語を学ぶには時間がかかる。学習する権利が十分に満たされていない」と危機感を募らせる。

 日本語が中途半端なまま孤立感を抱え、社会から疎外されていく子も少なくない。
 狭い道路に面した12畳程度の1室で、外国の子どもの勉強を教えたり相談にのったりする支援を32年続けるNPO法人「信愛塾」(同区)。理事の竹川真理子さん(60)はそんな子を大勢見てきた。

 今月、塾に姿を見せたという日本生まれのフィリピン国籍の青年(21)もその一人。「竹ちゃん、体に気をつけろよ」と、かつての教え子は竹川さんに笑った。高校は中退、少年院にも入った。今は全身に昇り竜の入れ墨。「外人の『外』は害虫の『害』と言われてきた。これで日本人と線を引く」。青年は入れ墨を指して言ったという。

 竹川さんはその姿を思い出すと悲しくなる。「あまりにも小中学校で放っておかれたまま成長した。言葉の壁が越えられないと、心の壁も越えられない。彼は言葉で将来を考え、心の奥底を表現する力がつかないままだった」

 「輝く前途」。青年が中学生の時に書いた習字が、塾の壁にはまだ張ってある。

 ●文化認め自信に

 言葉ができず、孤立感を抱えた子にどう向き合うか。

 1月半ば、竹川さんは、2年半前に中国から来た中学3年の少年(14)と、公立高校の面接準備をしていた。
 「僕は中国から来て言葉で苦労したから……、今小さい子どもたちに通訳したり勉強を教えたりしていて……、その長所を伸ばしたいです」。一つ一つ言葉を絞り出す。
 「あなたはこれだけ短期で日本語ができたのだから、自信を持って」。竹川さんは終始、少年を励ました。

 中2の夏、少年は塾に来た当初、ずっと下を向いていた。「学校で周りが話すことが全然分からなかった。どうしようって、ずっと緊張していた」と少年は振り返る。

 竹川さんは最初の2カ月間は子どもの母国語で指導する。1対1で分からないところを教えてもらい、少年は安心できた。様々な国の子どもたちが自由に学び、中国人である自分を隠すこともなく、ありのままでいられた。

 2週間後、少年の顔がぱっと上がるようになった。中学の修学旅行でも班を積極的にまとめ、「わからない」という言葉を秋ごろから言わなくなった。少年は今、塾で、新しく来たかつての自分のような子どもの面倒をみている。

 藤田校長も「言葉だけ教えればいい、日本になじめ、というだけでは子どもたちはストレスを起こす」と言う。

 南吉田小は昨年9月から、母国の文化や習慣に誇りを持たせようと、その国の楽器を演奏したり遊びをしたりする「国際の時間」を設けた。無口な韓国人児童が真剣に楽器を弾き、別の一角では中国児童がコマ回しに熱中した。

 母国の文化や習慣を認められているという感覚。「アイデンティティーが大事にされていると思えば自信がつく。外国人でも日本人でも、隣の人のことを考え、お互いを認めあう子が必ず出てくる」

 行政もようやく一歩を踏み出した。市は、日本語が話せない住民や親子のために2月末から初の日本語教室を無料で開く。国際政策課は「行政が遅れていた。外国人も根ざした地域づくりの必要がある」と話している。

 ■外国人登録者の多い県内自治体
市    外国人登録者数(人) 外国人比率
横浜市  78889      2.15%
川崎市  31468      2.23%
相模原市 11011      1.55%
大和市   6201      2.75%
藤沢市   6115      1.50%
 (外国人登録者数は法務省発表。外国人比率は2009年10月1日現在)

運転免許試験 中国・ポルトガル語可能に

2011-01-24 17:45:13 | 多文化共生
(以下、読売新聞【北陸とやま】から転載)
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運転免許試験 中国・ポルトガル語可能に
外国人増加 学科での導入検討

 運転免許を取得する外国人の増加に対応するため、県警が、中国語とポルトガル語でも学科試験を受けられるよう検討していることが21日、わかった。2011年度中の導入を目指し、県警などは現在、協議を進めている。
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図=県内の外国人登録者の状況(国籍別)

  県警によると、県内在住外国人で中国人とブラジル人が1、2位を占めていることを受け、学科試験に中国語と、ブラジルの公用語・ポルトガル語を導入する方向で検討している。問題の翻訳作業などについても、準備を進めているという。

  県内では、05年に運転免許を保有する外国人は4558人だったが、09年には5694人と2割超増えた。外国語での試験を受けられるようにしてほしいとの要望が増えたため、県警では昨年4月に英語での学科試験を導入したが、その後も受験可能な外国語を増やせないか検討を続けてきた。

  運転免許の学科試験を巡っては、47都道府県で英語で受験できるほか、宮城県や京都府などでは中国語でも受けられるなど、全国で外国語での試験を解禁する動きが広がっている。

  県国際・日本海政策課によると、09年末現在、県内の外国人登録者数は1万4237人で、うち中国人が5891人(41・4%)、ブラジル人が3247人(22・8%)と合わせて全体の6割超を占めている。
(2011年1月22日 読売新聞)

外国人の市住入居 「日常会話」で制限賛否

2011-01-24 17:43:53 | 多文化共生
(以下、読売新聞【福井】から転載)
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外国人の市住入居 「日常会話」で制限賛否
福井市長撤廃に難色
福井市の市営住宅で、外国人世帯が最も多い東安居団地。ゴミ捨ての案内表示は、日本語のみだ

 福井市が昨年春、日常会話が不十分な外国人の市営住宅入居を拒否する内規を設けたことを巡り、外国人の差別解消などに取り組む二つの市民グループから内規撤廃を求める声が上がる一方、「意思疎通ができない外国人に囲まれた住民は不安だ」などと内規を支持する声も市に数多く寄せられているという。市はどう対応すべきなのか、課題を探った。(久米浩之)

 市は昨年4月に「市営住宅入居事務取扱要綱」をつくり、外国人の入居条件をまとめた。永住者、特別永住者、3年以上日本に居住できると市長が認めた者を対象とし、「隣人とのコミュニケーションがとれる程度の日常会話ができる」ことを要求。いずれも、市の担当窓口がこれまで入居審査で適用してきた内容を明文化したという。

 これに対して、先月27日と今月19日に、市民グループが「外国人も同じ住民として対応して」などとする要望書を提出。東村新一市長は先月28日の会見で「外国で生活しようと考えるなら、ある程度の日常会話ができるのが本来だ」と撤廃に難色を示した。市には先月中旬以降、52件の電子メールが寄せられ、「『言葉すら通じない』では(住民との)軋轢(あつれき)が生じざるを得ない」など約9割が内規を認める内容だという。

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 市によると、市営住宅は計1957戸で、外国人世帯の入居は75戸(昨年4月1日現在)。今月20日、県内最多となる外国人世帯32戸が入居する東安居団地(333戸)を訪ねた。

 ある無職男性(71)は「ゴミ捨ての分別をやってくれない」と話し、ある主婦(29)は「夜中に騒ぐ人がいるが、あまり言葉が通じず注意できなくて困っている」と漏らす。外国人入居者の多くは中国人。コミュニケーション不足や文化の違いなどでしばしばトラブルになるようだ。

 こうした住民からの苦情も、市が内規を策定した要因といい、市によれば、昨年6月、市営住宅入居を希望して中国籍とみられる男女1組が訪れたが、通訳を通じて内規の説明を聞いて断念したという。

 内規の条件にある「3年以上日本に居住できる」に該当する外国人は、外交官や大学教授、調理人など就労ビザのある人か、中国残留孤児の家族や日系ブラジル人ら。これまで門前払いとなったケースについて、市は「どんな経緯で訪れた外国人だったのかは詳しく把握していない」という。

 外国人問題に詳しい田中宏・一橋大名誉教授(日本アジア関係史)は「言語能力を問題にするのではなく、サポート体制の充実に力を注ぐべきだ」とし、市営住宅などでは「全国的に(ゴミ出しなど住宅での)多言語表示が進められており、外国語の表示などは簡単にできるはず」と指摘する。

 福井市の市営住宅には外国語表示もなく、トラブルがあっても基本的に住民同士の解決に委ねているのが現状だ。市には、内規撤廃論議を契機として、すぐに取り組める問題と中長期的な課題を整理し、〈外国人との共生〉に向けた対応が望まれる。
(2011年1月23日 読売新聞)