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村上春樹氏の語る<現在>:(下)グローバリズムと地域主義 歴史から学び両者の調和を

2008-05-21 21:58:51 | 多文化共生
(以下、毎日新聞から転載)
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村上春樹氏の語る<現在>:(下)グローバリズムと地域主義 歴史から学び両者の調和を

 今回のインタビューで作家、村上春樹さんは、自らの創作とのかかわりで東西冷戦後の世界の状況についても、さまざまな角度から語ってくれた。

 多くの文学作品を翻訳・紹介し、長く生活したこともあるアメリカには、いうまでもなく深い関心を寄せてきた。この国は01年の「9・11」テロ事件以来、大きく変わったと村上さんはいう。

 「あの時からアメリカは体が縮こまっている、硬直しているという印象を強く受けましたね。本当はもっと柔らかく筋肉が動く国なのに、一時期は冗談も言えないような状況で息苦しかった。今も硬直はまだ残っているけど、少しずつほぐれてはきています」。また、今年の大統領選に関して聞くと、「(次期大統領が)誰であるにせよ、今までの対決のフェーズ(様相)から、むしろ和解のフェーズに入っていくんじゃないか」と話した。

 一方、翻訳に関連して「言語の交換性」への関心を語った。「インターネットの時代で文化の交換性、互換性が高まってくると、現状から見て、英語が中立的な公用語としての役割を果たす機会が結果的に多くなってくるだろう」。そのうえで、「でも、それに対する反発も強くなり、その結果、地域主義(リージョナリズム)みたいなものが台頭してくるだろう」と見る。

 これは、インターネット言語としての英語に象徴されるアメリカの覇権が時として国際的な反発を呼び起こす、その文化的な背景に横たわる問題だ。こうした対立を乗り越える方途についても、作家の立場から話した。

 「僕らの生活のいろんな面において、グローバリズムと地域主義の二つの方向性をうまく調和させていく必要がある。どう調和させるかとなると、僕の場合は物語を書くことしかない。物語というのは世界共通のものではあるけど、それを組み立てる要素は僕の場合なら日本人で、日本語でものを書くというリージョナルなものだから」

 そして、両者を調和させる鍵になるのは「歴史から物事を学び、広い意味での常識を働かせ、自らをより深く知りつつ、他者をも理解しようとする態度」だと考える。その態度は「ディーセンシー(節度、上品さ)という言葉で表されるかもしれない」と村上さんは語った。

 「僕が書きたいのは、ディーセンシーを掬(すく)い上げていく物語だという気がする。どんなに暗い、絶望的な状況の中にあっても、ある種のディーセンシーは光を届ける、何かを救ってくれるということ」。この話は、歴史の闇とそこからの再生を描いた長編『ねじまき鳥クロニクル』(94、95年)や『海辺のカフカ』(02年)を想起させる。

 さらにインタビューでは、長編小説の執筆における「村上春樹的方法」の一端も披露してくれた。「(長編小説は)いつも書けるというわけでない。書くべき時が来れば書けるんだけど、時が来なければどうやっても書けない。自分の中に力がたまるのを待たなくちゃならないんです、満ちてくるのを」

 驚いたことに、書き始めた時にはその作品が「どのぐらい長くなるかが前もってわかる」という。「いっぱいになると、(原稿用紙)何枚分たまっているかってわかる(笑い)。この力を使って書けば、例えば2000枚になるだろうとか予測はつくんですよ」

 つまり、今、執筆中の大長編も、『海辺のカフカ』以来の6年間に蓄積されたものの集大成ということになりそうだ。その新作については、「書いている時は、ただ森の中にいて道をたどって行くだけで、周りに何があるか、その森がどういう全体像なのかもわからない」と話す。「ただ不思議なもので、正しい道を自分が進んでいるという確信はあるんですよ。書き上げたものは、ある程度確かなものになっているはずだという確信ですよね」

 日本中の、いや世界の各地で新作の完成を待ちわびる読者にとって、これ以上、心強いメッセージはないのではないだろうか。【大井浩一】

岩田放課後子ども教室始まる

2008-05-21 21:57:44 | 多文化共生
(以下、東日新聞から転載)
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岩田放課後子ども教室始まる


東日新聞
スタートした岩田放課後子ども教室
 日系ブラジル人を中心に、外国籍市民が多く住む豊橋市岩田小学校(彦坂久伸校長)で19日、外国籍児童を対象にした「岩田放課後子ども教室」がスタートした。これまでに25人が登録し、元教師、保育士、塾講師、アフタースクール関係者ら有償ボランティアから日本語の読み書きなどを習った。

 共働きや少子化対策の一環として、文部科学省が全校児童を対象に放課後子ども教室推進事業、厚生労働省が留守家庭児童を対象に、放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)を推進。これを受けて豊橋市は、放課後子どもプラン推進委員会を設けて、同プランを策定し、今年度からつつじが丘校区、嵩山校区とともに岩田校区で事業化に踏み切った。

 特に岩田校区は外国籍児童が多く、全校935人中131人を占める。外国籍児童を対象にした同教室は全国的にも珍しいという。

 これまでの説明会などを通じ、1年生から6年生までの25人が登録した。国籍別ではブラジル21人、ペルー2人、フィリピン2人。

 月曜日から金曜日まで毎日、同校の視聴覚教室を使って行われる。授業後の午後2時、または3時から始め、5時30分まで。

 有償ボランティア(時給1000円程度)スタッフ18人が、代わる代わる対応する。低学年対象の絵本の読み聞かせから、授業の補習、宿題の学習支援ほか日本や母国に親しむ催しも行う。

 スタートのこの日は、午後3時に低学年10人ほどが集まり、楽しそうに絵本の読み聞かせを受けていた。

通訳とブラジル人世帯巡回 浜松東署

2008-05-21 21:56:44 | 多文化共生
(以下、静岡新聞から転載)
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通訳とブラジル人世帯巡回 浜松東署
2008/05/20
 浜松東署は19日、ブラジル人世帯の多い遠州浜団地(浜松市南区遠州浜)で、民間通訳を同行したブラジル人世帯の巡回連絡を行った。市内では初めての試み。
 巡回連絡は、交番・駐在所勤務の署員が担当地域の家庭などを訪問し、管内での犯罪発生状況や注意してほしい事などを伝えたり、住民の要望を聞いたりする活動。
 この日は、同署遠州浜駐在所の署員が通訳の大段登美子さん(同市北区)と10世帯を回った。家族構成や緊急連絡先などを聞いたほか、駐車場のトラブルなどに注意するよう伝えた。


学生寮 交流のススメ

2008-05-21 21:55:42 | 多文化共生
(以下、朝日新聞から転載)
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学生寮 交流のススメ

2008年05月19日

 地方出身の学生を経済的に支えるというイメージが強かった、大学の学生寮の役割が見直されている。留学生増を打ち出す大学では、受け皿にするとともに、日本人学生との国際交流の拠点にすることを目指す。人格形成のため全寮制を敷くなど、「教育」の場として位置づける大学も増えている。

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トランプをしてくつろぐ日本人学生と留学生=横浜市港北区の慶応大学下田国際学生寮
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寮の2人部屋ではおしゃべりが弾む=千葉県八千代市の秀明大学生会館

◆留学生と映画や料理

 慶応大の下田国際学生寮(横浜市)は06年に設立された。留学生約120人と体育会の日本人学生約200人が住む。留学生と日本人の棟は別だが、年に7回程度、大規模な交流会を開いている。

 留学生の支援役を担う修士2年、関谷進吾さんは「いろいろな国の人と出会える。英語を使う機会も多い」と寮の魅力を語る。フランスからの留学生エドミー・アムストゥッツさん(23)は「昨夏の交流会は、地域の人たちの盆踊りが素晴らしかった」と話す。最近は日本人学生にクレープの作り方を教えたという。

 一方、体育会棟に住む3年の小野加寿也さんは、毎日のように留学生棟のラウンジに出向いている。「一緒に映画を見たり、中国からの留学生と北京五輪について話したり。キャンパスでは接する機会がないので、貴重な場所です」

 ただ、小野さんのように日常的に交流している学生はそれほど多くない。関谷さんは「お互いにもっと交流したいという思いはある。今年は月1、2回映画会を開きたい」と言う。

 留学生増加への対応策は、どの大学も力を入れている。慶大の留学生は現在、約870人。15年度には全体の5%にあたる1500人にするのが目標という。下田寮も対策の一つとして体育会の合宿所を建て替える際に造られ、地域住民も含めた国際交流の場として期待されている。坂本達哉常任理事は「学生たちの交流の意思を尊重し、サポートしたい」と話す。

 慶大はこのほか、民間業者と提携して百数十人規模の寮を造り、入居者の3人に1人は留学生にすることも検討している。湘南藤沢キャンパスでは11年をめどに寮を建設し、日本人学生と留学生、教員らが一定期間、共同生活を送る計画もある。

◆居間共有 助け合い

 早稲田大は来年、日本人学生と留学生が一緒に住む900人規模の寮を東京・中野に着工予定だ。5年以内に留学生を8千人に増やす目標を掲げているが、現在の寮は1500人分しかないからだ。

 この寮は単なる留学生の受け皿にとどまらない。留学生を含む4人が1組で、寝室は個室だが居間などは4人共同。学生同士が助け合い、引きこもりを防ぐとともに、異文化交流を進めるのが目的だ。入寮は原則的に2年生までとし、自立を促す。

 大学側は計画にあたって、スタンフォード大など米国の6大学の寮を見学した。島田陽一学生部長は「今までの寮は部屋を割り当てて住むだけだった。これからは住まいを超えた教育の場にする」と意気込む。

 留学生と日本人学生の交流を目的とする寮は、南山大(名古屋市)が先駆けだ。99年から留学生3人と日本人1人が4LDKで共同生活を送るタイプの寮を開いている。面接で選考しなければいけないほど入居希望者が多いという。

◆全寮制で人間性養う

 寮生活を学生の人格形成に役立てようとする取り組みもある。

 秀明大(千葉県八千代市)は今年開設した学校教師学部を全寮制にした。嘉部好修(かべ・よしのぶ)学部長は「かつての師範学校も全寮制だった。昨今は教員の不祥事が問題になっており、対人関係能力や自分を律する力を身につけさせたい」と話す。後発大学として、力のある学生に育て、教員採用試験で結果を出したいという思いが背景にある。

 現在、今春の新入生約70人が2人ずつ同室で暮らす。朝は7時に起床し全員でウオーキング、月~木曜は夜も1日3時間の勉強が課せられるなど、寮生活はたやすくはない。だが、1年の沢畠由香さんは「意外と楽しい。4年間は長いけど、教員になるという目標があるので耐えられる」と前向きだ。同室の永山渚(なぎさ)さんも「入学してまだ1カ月だけど、半年くらいたったような人間関係ができた。普通の大学ならこうはいかないと思う」と強調する。

 新入生に一定期間の寮生活を課す大学もある。医系4学部からなる昭和大(東京)の1年生は全員、山梨県の富士吉田キャンパスで、各学部1人ずつ4人が同室の寮生活を送る。医療に携わるにあたって必要な協調性や思いやりを培うのが目的という。

 東京理科大の基礎工学部は、1年次に北海道長万部キャンパスで全寮制の「全人教養教育」をしている。豊田工業大(名古屋市)も1年男子は全寮制。やはり人間性やコミュニケーション能力を養うのがねらいだ。(葉山梢)