昔に出会う旅

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イタリア旅行No.35 ヴァチカン市国「ピーニャの中庭」

2011年04月17日 | 海外旅行
【東北地方太平洋沖地震で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。】


11/15 イタリア旅行7日目、ヴァチカン市国の「ピーニャの中庭」の観光です。



「ピーニャの中庭」の入口から入ろうとしているところです。

前回掲載した「サン・ピエトロ大聖堂」のクーポラが見える屋上の東隣になります。



向って右が北になっているヴァチカン市国の地図です。

「ピーニャの中庭」は、地図右下辺りに名称を赤枠で囲んだ場所で、庭の右上辺りに入口があります。

南側にも、ルネサンス時代の「べルヴェデーレの中庭」、その南に「システィーナ礼拝堂」、更に「サン・ピエトロ大聖堂」と続いています。



「ピーニャの中庭」の北側にある巨大な「壁龕[へきがん]」のある建物です。

「壁龕」の中央に置かれたブロンズ製の大きな松ボックリから庭の名称「ピーニャ(松ボックリ)」と名付けられました。

「壁龕」を「ニッチ(niche)」と呼び、小さなスペースのイメージがありますが、これは度肝を抜く大きさです。



ブロンズ製の松ボックリ(Pigna bronzea colossale)が壁龕の中央にそびえていました。

1~2世紀頃に鋳造されてカンポ・マルツィオ地区に置かれていたもので、かつては鱗片の穴から水が噴き出す噴水設備だったようです。

8世紀の終りに旧サン・ビエトロ大聖堂の玄関前の中庭に移設、現在の場所に移設されたのは1608年と、驚くような長い歴史を持っていました。

松ボックリの下の石の台座は、資料に「競技者や審判者などが彫られている」とされるアレクサンデル・セウェルス帝(在位222~235年)の浴場の柱頭だったものです。

台座に設置したのはローマ教皇クレメンス11世(在位1700~1721年)の時代だったようです。

ブロンズ鍍金(メッキ)の二羽の孔雀は、ハドリアヌス帝(在位117~138年)が139年に建設した霊廟「サン・タンジェロ城」にあったもので、宇宙の不滅の象徴とされています。

様々な遺跡からの寄せ集め品のようですが、不思議に調和のある芸術的なモニュメントになっています。



松ボックリの下の壁に大きな顔の噴水がありました。

写真の左上に顔の拡大写真を載せましたが、資料を調べても記載がなく、これも古代遺跡の遺物だったのかもしれません。

又、松ボックリの両脇の階段を設計したのはミケランジェロとのことで、ミケランジェロの作品とも考えられますが・・・。



松ボックリの下の両脇にライオン像がありました。

一見、ブロンズ像にも見えますが、花崗岩製だそうです。

ローマ、カンポ・マルツィオ地区にあった「イシスとセラピスの神殿」から発掘された像で、古代エジプト第30王朝の王「ネクタネボ1世」(在位前308~前362年)時代の作品とされています。

ピーニャの中庭の主役、「松ぼっくり」よりも更に数百年古く、風格を感じます。

発掘された「イシスとセラピスの神殿」は、古代ローマで古代エジプトの神「イシス」「セラピス」への信仰が流行し、エジプト産の建材で建てられたエジプト風の神殿だったとされています。

日本の神社によくある狛犬の原型は、紀元前のエジプトにあったようです。



ピーニャの中庭の入口付近にあったスフィンクスの像です。

写真左上の像は、松ボックリの後方の壁に数体並べられていたもので、これらも古代エジプト文化の遺物と思われます。

スフィンクスは、エジプトでライオンの体にファラオの頭が付いた聖なる動物で、頭巾(ネメス)と、顎鬚[あごひげ]を付けているとされています。

このスフィンクスには顎鬚がないようです。



「ピーニャの中庭」中央付近の風景です。

長方形の「ピーニャの中庭」には芝生に「田」の字の形の通路が作られ、この球体のオブジェは通路が交差した中央に置かれています。

向こうに見える建物は、「ピーニャの中庭」の東側で、大きな顔の像が立っています。



「ピーニャの中庭」の中央に置かれたオブジェ「球体のある球体(Sfera con sfera)」です。

直径4mのブロンズ製の球体のオブジェは、イタリア生まれのアルナルド・ポモドーロ(Arnaldo POMODORO)の作品で、1990年にヴァチカン美術館のために制作されたそうです。

球体の中に小さな球体が衝突してめり込み、地球の未来を暗示するような衝撃的な作品です。

ノストラダムスの大予言で、「空から恐怖の大王が来て人類が滅亡する」とした1999年7月より9年前の作品であることを考えると、予言を意識した作品だったのでしょうか。

同作家のこれに似た作品が地元「ふくやま美術館」のロビーにも置かれていました。

「ふくやま美術館」のサイトに写真と下記の解説がありました。
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アルナルド・ポモドーロ 1926-
《球体》は主要なテーマのひとつで、地球のような球が中央部で裂け、メカニックな部品のような要素がそこにのぞく。優美と優美ならざるものとの出会いが新鮮なショックを与える作品である。
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東側の壁の中央付近に置かれた「アウグストゥスの巨大な頭部(Tessta colossale di Augusto)」です。

ヴァチカン市国の南東、テヴェレ川東岸の「アヴェンティーノの丘」で発見された大理石の像で、巨大な像の一部と考えられているものです。

「アウグストゥス」は、初代ローマ皇帝(在位紀元前27年~14年)と思われ、皇帝の偉業を讃えて造られた像だったのかも知れません。



「ピーニャの中庭」の南側の風景です。

中央に古代の神殿のような建物が見え、その上に「サン・ピエトロ大聖堂」のクーポラが少しのぞいています。



「ピーニャの中庭」の南側の神殿の風景です。

大理石の太い柱が並び、その間に人物の石像が立っています。

この神殿の情報は、資料に見当たりませんが、古代の遺跡から移設されたものと思われます。

カトリックの総本山とも言えるヴァチカンには遺跡から発掘された古代の宗教(異教)的施設の遺物が蒐集・展示されています。

中庭の名称となった大きな松ボックリに代表されるように、様々な遺物を組み合わせて新たな芸術的価値を創造しており、キリスト教の成立や、変遷の過程にも通じているようです。



参考文献
「ヴァチカン・ガイド 美術館と市国」石鍋真澄監修
「地球の歩き方 南イタリアとマルタ」地球の歩き方編集室著


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