武産通信

東山三十六峰 月を賞で 雪を楽しみ 花に酔う

日本庭園の美

2012年04月22日 | Weblog
 日本庭園は1300年にもわたる長い時間つくり続けられている。その作庭における中心は、美しい自然風景に思いを馳せながらつくることであった。さらに理想郷としての世界を目指して様々な工夫を凝らしてきた。そして、そこには「見立て」という考え方が用いられた。池を海に、石を山岳などに、日本独自の美意識の心によって創作されてきた。その構成や、観賞方法とは。

 庭園という言葉は明治時代になってつくられた造語である。古くは「山水」や水を使わない「枯山水」、豊な自然観がある「林泉」、作庭記前裁秘抄にみられるように「前裁(せんざい)」などといわれた。「庭」は広場などの空間を、「園」は見て楽しむ観賞を意味する。観賞本位の空間であることが庭園の位置づけとなる。

 日本庭園には池泉、枯山水、露地という三つの様式がある。池泉と枯山水は自然風景の縮景であり、露地は等身大の自然風景をつくり出す。飛石、燈籠の見立て設置、蹲(つくばい)などが露地としての機能を付加する。基本は自然風景の美しさに思いを馳せながらつくることである。

 自然風景の縮景には、島、出島、荒磯(あらそ)であらわす海洋風景。築山、石組、滝石組や遣水(やりみず)、曲水の流れであらわす山水風景がある。

 宗教観を盛り込む禅宗の庭。理想郷としての鶴亀表現、蓬莱島表現など不老不死の蓬莱神仙思想。また極楽浄土をつくり出すために、阿弥陀堂を中心として構成する浄土式庭園など。

 庭に背景を取り込む「借景」。東京の旧浜離宮や芝離宮は海を、和歌山県の養翠園は海と山を、京都の円通寺や正伝寺は山を借景としている。

 樹木や石を用いて遠近感を表現する。京都の龍安寺、真珠庵、円通時は石を、無鄰庵は樹木を中心として表現している。

 庭園は四季折々や気候の変化を感じながら見ていくことが重要である。 (日本庭園研究家・京都工芸繊維大学講師 重森千青講義録)

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