瀬崎祐の本棚

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詩集「繭玉の中で息をつめて」  佐伯圭子  (2013/03)  思潮社

2013-04-07 19:20:16 | 詩集
 14年ぶりの第3詩集。110頁に26編を収め、たかとう匡子の栞が付く。
 巻頭に置かれた比較的長い作品「石は」は、とても堅い意識がこちらに向かってくるように感じた。緩むところが生じることを自らに許さないような、そんな張り詰めたものがそこにはある。
 それに比して、柔らかい意識が自らの内側に深く降りていくような作品もある。「細い岬」では、不安定なのだが大切にしなければならない場面に直面しているようだ。そこでは説明や理屈を排して、ひたすらに生まれてくる言葉をそのままに拾い上げている。

   まるい空に微粒子となって高く
   流れていく
   切り取って紡いでいた半身は
   風にとけ透明な波となって
   置かれる場所を持たない
                (最初部分)

   胸底で吃りつづける 幼い夢を
   かたい殻が抱いている
   うぶ声は腹筋のうしろに
   閉じ込められているその明かし得ない謎
   西の空の茜色に
   重ねあわせて待ちつづける
                (最終連)

 タイトルの”細い岬”が何の謂であるのかも説明はされないままで、そのイメージの形成は読む者に任されている。それがかえって謎めいた作品の魅力ともなっている。
 また「橋のたもと」では、茜色の空の下で「ぐらりと大きく橋が揺れ/体が傾き/川底が見え」、溺死体が「とても長い両の手を」振っているのである。遭遇した他に変えることのできない刻を、鮮やかに捉えている。
コメント
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