瀬崎祐の本棚

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詩集「秋の日記」  ルイ・マクニース  (2013/03)  思潮社

2013-04-10 22:03:25 | 詩集
 辻昌宏、道家英穂、高岸冬詩の訳により、番号だけがふられた24編が収められている。
 1907年に北アイルランドに生まれたルイ・マークスは、この書によってはじめて知った。W.H.オーデンと親しい関係があったとのこと。巻頭の「はしがき」で作者は「この詩は叙情詩とメッセージ詩の中間を行くものである」と述べている。
 作品は実に生活に密着したところから生まれている。生活の中での思索があり、それが言葉であらわされ、触れることのできる確かなもの、見えるものになって生活を支えるものになっているようだ。ここでいう生活とは、即ち生きていくことにほかならないわけだが、社会情勢に対する思索があり、女性に対する思慕があり、日常の中での哲学的な瞑想もある。

   僕は意志と良心の根幹を捨ててしまった。
    今その両方を探さなくてはならない。
   もうクッションに身を横たえながら
    瀕死のガリア人を気どるのはやめよう。
   遅かれ早かれ自己憐憫の喜びには飽きるに違いない、
    僕たちが生まれたこの悪い世の中を
   祝うことの楽しさや
    皮肉な態度で挫折を認めることにも
                            (第23節より)

 こうして真剣に自分と向き合って書いていくことには、どれだけの困難と勇気が必要かを改めて知らされる。でも、そうやって書いていかなければならないのだな。
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